まるで姉妹!椎名林檎と宇多田ヒカルの『蜜月』を追う

椎名林檎と宇多田ヒカル。日本のミュージックシーンを約20年の長きに渡り席巻してきたにも関わらず、一向に色褪せることなく進化し続ける二人。音楽家としての遍歴にも共通点の多い二人はいつもお互いを素晴らしい親友としてリスペクトしてきました。今回はそんな椎名林檎と宇多田ヒカルの歩みを辿っていきます。

同期デビューだった3人のカリスマ



椎名林檎宇多田ヒカル。あまりの個性の違いから二人は双極に存在していると思われがちです。しかし、実際はデビューした年もレコードレーベルも同じ「同期」という共通点もあり、二人の親交もとても深いのです。

椎名林檎、デビューまでの軌跡



椎名林檎は1978年埼玉県生まれの福岡育ち。高校時代からバンド活動や個人での楽曲制作を始め、1998年5月東芝EMIからシングル「幸福論」でデビューしました。

当時、彼女の楽曲のあまりの激烈さにディレクターからは大きな軌道修正を強いられましたが、それを断固拒否。これは逆に大化けするのではないかとの意見も出てきて、結果的には椎名自身に自由にすべて委ねる方向に

そしてデビューにあたってベーシストの亀田誠治をブレーンとして迎え、作業はすべて二人での自由な方針に任せることとなりました。

椎名林檎と亀田誠治のタッグはドンピシャで、現在に至るまで二人の協力関係は続くことになります。

衝撃的だった15歳の天才、宇多田ヒカルのデビュー

一方の宇多田ヒカルは、1983年ニューヨークで誕生。母は「圭子の夢は夜ひらく」の大ヒットで有名な藤圭子。父は音楽プロデューサー。そんな両親とともに家族3人ユニット「U3」を1990年に結成。

日本でのソロデビュー以前からアメリカやヨーローッパで作品を発表していましたが、ある日同じレコーディングスタジオに居合わせた東芝EMIのディレクターから「日本語でやってみない?」という誘いがあり、1998年12月に宇多田ヒカルとして「Automatic / time will tell」でデビュー

わずか15歳の少女がR&B調の曲を自ら作詞作曲してデビューしたことは、世間をあっと言わせました。稲妻のような宇多田のデビューの衝撃は今でも忘れられません。しかもあの藤圭子の娘ということで、サラブレッドだと騒がれたもです。

椎名林檎と宇多田ヒカルは1998年、しかも同じレーベルからデビューした同期だったのです。泥臭いデビューだった椎名とに較べると、宇多田のデビューは実に鮮やか。そんな違いからもこの二人の印象が対照的に感じられるのかもしれません。

豊作だった1998年!浜崎あゆみも歌手デビュー

1998年は浜崎あゆみも「poker face」でデビューを果たしています。2ndシングル「YOU」それに続く1stアルバム「A Song for ××」で大ブレイク。一躍女子高生のカリスマとなりました。

同年にはaikoMISIAもデビューしています。今でも第一線で活躍しているのは、みなさんもご存知の通りです。

椎名林檎、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、aiko、MISIAなど、今でもJ-POP界に君臨する5人もの歌手が一斉にデビューした1998年。今考えるとすごい年ですね。

一夜限定ユニット!伝説の『東芝EMIガールズ』

同じ東芝EMIからデビューした椎名と宇多田。二人はデビュー翌年に開催された東芝EMIの新人お披露目イベントに一夜限定ユニット『東芝EMIガールズ』として飛び入り出演しています。

二人でカーペンターズの「I Won’t Last A Day Without You」を披露し、そしてお互いの楽曲を歌い合ったとか!この出来事は今では伝説となっています。

林檎節で本家を越える!カバーアルバム「唄ひ手冥利〜其ノ壱〜」

椎名は2枚目のアルバム「勝訴ストリップ」を発売したのち、妊娠・出産による活動休止期間に入りました。そして約2年2ヶ月ぶりに発表したのが2枚組のカバーアルバム「唄ひ手冥利〜其ノ壱〜」です。

このカバーアルバムは楽曲制作を亀田誠治森俊之にすべて任せ、椎名は「唄ひ手」に徹しています。その中で宇多田とのデュエットが実現しました。

その曲こそ『東芝EMIガールズ』として歌った思い出のカーペンターズの「I Won’t Last A Day Without You」です。



原曲ではカレン・カーペンターがストリングスのアレンジに合わせて、華やかに歌い上げています。デビュー当時の『東芝EMIガールズ』がどのように歌ったのかは不明ですが、飛び入り参加したイベントと言うことは、賑やかし的な要素があったのではないでしょうか?

しかし「唄ひ手冥利〜其ノ壱〜」では、極力装飾的な要素を省き打ち込み中心のシンプルなアレンジで、淡々とした仕上がりになっています。

「華のある宇多田とはあえてより日常的に」という椎名の希望だったそうです。この曲の歌詞の内容に注目していただきたい。

Touch me and I end up singing

出典:http://j-lyric.net

あなたが私に触れていてくれるから、歌い続けられる……〕そんな歌詞が二人の関係を象徴しているようにも感じられます。

カバーアルバムで、あえてデュエットの相手に宇多田を指名し、再びこの曲をレコーディングしたのには、きっとそれなりの思いがあったからでしょう。

「宇多田ヒカルのうた」に13人のアーティスト集結!



宇多田ヒカルの楽曲に惚れ込んだアーティストたち13人が結集たソングカバー・アルバム「宇多田ヒカルのうた」。もちろん椎名林檎もそのひとりとして参加しています。椎名が歌った楽曲は「Letters」です。

https://www.youtube.com/watch?v=G_ci9_LMRKs

椎名はこの曲が制作されたころのことを回想して「宇多田ひかるのうた」公式サイトに、次のような言葉を寄せています。

当時彼女が、録り終えたばかりの「Letters」を、文化村スタジオの卓から直接聴かせてくれました。わたしはすぐに「もう一回聴かせて」と、せがんだものです。(中略)つまり、わたしは彼女のオリジナルテイクがだいすきなのです。だから、ほんとうはこんなこと、やりたくなかったのです。

出典:http://www.utadahikaru.jp

この「もう一回聴かせて」椎名が宇多田にせがんでいる様子を思うとと、とてもほほえましいですよね。まるで子供部屋でレコードプレーヤーを前にして戯れている姉妹のようではありませんか。

そして「こんなこと、やりたくなかった」とだだをこねるような言いぶり。椎名の宇多田のオリジナルへの強い愛情を感じます。そう言わせるほどの宇多田の原曲には魅力があるのです。しかし椎名は「彼女への愛を共有してもらいたい」と、締めくくります。

またこのアルバムには、浜崎あゆみも「Movin’ on without you」で参加しています。こちらは “ the ayu ” な雰囲気がバリバリに伝わってきます。浜崎は以下のようにコメントしています。

私的にヒカルちゃんとのリリースタイミングが近かったり等の理由で当時よく耳にしていた、思い出のある「Movin’ on without you」をチョイスさせて頂きました。今でもこの曲を聴くと、あの頃の日々が鮮明に蘇ります。

出典:http://www.utadahikaru.jp

このアルバムは2014年にリリースされたのですが、この年はちょうど98年組のデビューから15周年イヤーでした。月日を重ね再び3人のカリスマが出会った、そんな同窓会的なアルバムでもあります。

【Fantôme】紆余曲折の末の再会…「二時間だけのバカンス」

ソロからバンド東京事変へのシフト変更

椎名は2003年に3rdアルバム「加爾基 精液 栗ノ花」を発表、この年はライブも多くこなしますが、シングル「りんごのうた」を最後に、活動をソロから、バンド・東京事変へとシフトしてゆきます。

(東京事変での活動についても書きたいところですが、それははまたの機会に譲ることにしましょう…)

椎名林檎としては2009年に久しぶりのオリジナルアルバム「三文ゴシップ」をリリースしますが、作品の内容からすると、まだまだ完全復帰という感じはしませんでした

2011年にはNHKの朝ドラの主題歌「カーネーション」をリリースし。しかし「林檎節が帰ってきた!」としみじみ感じたのは何と言っても2014年のアルバム「日出処」です。ファンは実に10年も焦らされたのです

宇多田ヒカルの “ 人間活動 ” 宣言

一方の宇多田は2010年に「いったん止まろう」と “人間活動” 宣言をし、音楽活動を休止します。その間は「桜流し」の配信やラジオ番組を持ったりもしましたが、本当に音楽からは距離を取り“人間活動” に専念していたようです。

“人間活動” 中には哀しいことも幸せなこともいろいろとありました。そんな悲喜交々の “人間活動” の末、2016年にNHKの朝ドラの主題歌を「花束を君に」をリリース。

9月には実に8年ぶりとなるオリジナルアルバム「Fantôme」を発表し、宇多田は本格的に音楽シーンに帰ってきてくれました。
https://www.youtube.com/watch?v=sQcKRrkAYL8
そして更にファンを喜ばせたのが「二時間だけのバカンス」での椎名林檎とのデュエットです!スターウォーズの世界を連想させる風景と、お揃いのおかっぱの髪型で抱き合う二人の姿が実に美しい。福眼にもほどがあります!!

宇多田は東芝EMIからレーベルを移していましたが、ファンはみな『東芝EMIガールズ』の大復活!と歓喜に沸きました。

椎名林檎と宇多田ヒカルはこれからもランデブーし続ける

1998年にデビューし、同様に音楽活動を休止した時期があった二人。椎名は「カーネーション」、宇多田は「花束を君に」で同じくNHKの朝ドラの主題歌を担当するなど、実にこの二人は共通点が多いこともわかりましたね。

椎名林檎は宇多田ヒカルより5歳年上。「二時間だけのバカンス」のMVでも本当のお姉さん、そしてまるで恋人のように宇多田を愛撫するシーンがあります。

二人はいつも付かず離れず、そして敬愛し合って成長してきました。同じ惑星の軌道を巡る双子の衛星がランデブーするように……。きっと、これからも二人の蜜月は長く長く続くことでしょう!

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