【SHIROBAKO】日本が認めた傑作お仕事群像劇の4つの魅力とは?

P.A.WORKSの働く女の子シリーズ第2弾、SHIROBAKO。アニメーション制作業界の現実を描くアニメというある種のメタ性を持った本作。この記事では、SHIROBAKOの魅力に関して、キャラクターや物語の観点からお伝えする。

アニメ業界のお仕事群像劇 SHIROBAKO

出典:http://shirobako-anime.com

2014年の秋に放映されたアニメ、SHIROBAKO。P.A.WORKSの「働く女の子シリーズ」の1作品である本作。このシリーズでは、仕事や働くことを重要なテーマとして物語が展開される

SHIROBAKOは、制作進行、アニメーターなどといったアニメーション制作を取り巻く様々な人たちの視点から、業界のお仕事の現実をコミカルに描写する、群像劇スタイルのアニメである。アニメーション制作業界を描くアニメというメタ性において、今までにはない面白さが感じられるアニメである。

また、本作のタイトルは映像制作業界の用語である「白箱」から来ており、映像作品が完成した際の確認用のVHSが白いケースに入っていたことに由来する。本記事では、そんなSHIROBAKOの魅力に関して、物語や登場人物の視点から紹介していく

SHIROBAKOのあらすじ



SHIROBAKOの物語は、 アニメ制作業界で働く5人の女の子、宮森あおい(制作進行)安原絵麻(アニメーター)坂木しずか(声優)藤堂美沙(3DCG)今井みどり(学生、のちに脚本家)を中心としながら展開される。

彼女たちは元々、同じ高校のアニメーション同好会に所属していた。そしてアニメーション制作業界でいつか共に商業用アニメーションを作ることを約束したいわば、同志なのである。その際、「どんどんドーナツ、どーんと行こう!」とドーナツに誓い合うのであった。

なぜドーナツ…?という疑問は置いておいて、この約束は劇中やファンの間では「ドーナツの誓い」と呼ばれる。数年後、彼女たちはそれぞれの役割や仕事を持って、アニメーション制作の現場へと身を投じることとなる



憧れのアニメーション制作業界で働き始め、様々な形でアニメーション制作に携わる彼女たち。しかし、憧れていた業界の現実はハードなものであり、その現実に翻弄されながら働くこととなる

切迫するスケジュール、描いても描いても上がらない原画、努力してもなかなか認めてもらえない状況、自分が考えていた仕事と違うという違和感…実際にアニメーション制作の現場に関わることで、その業界の厳しい現実を知る彼女たち

そんな彼女たちを中心に、アニメーション制作業界現実やそれらに携わる人々の仕事ぶりや葛藤を、コミカルに描く物語。それがSHIROBAKOである。

SHIROBAKOの魅力① 個性的なキャラクターたち


SHIROBAKOの物語を彩るキャラクターたち。そのキャラクターたちは強烈な個性を隠しきれていない者たちが多い。アニメーション制作現場では、こんなにぶっ飛んだ人が多いのか!?と思うほどに、いわゆるキャラの濃いキャラクターたち

その中でも、筆者が気になったキャラクターが3人いる。物語に一味加える個性を持ったキャラクター。その3人をピックアップしていこう。

ドーナツ依存の顔芸主人公?宮森あおい


まず忘れてはいけないのは、SHIROBAKOの主人公のひとり、宮森あおい。通称みゃーもり。武蔵野アニメーションの制作進行として、切迫するスケジュールに追い立てられながらも作品完成のために奔走する彼女。

制作進行は作品全体のスケジュール管理を行う重要な役割。しかし、アニメーション制作業界では予定されたスケジュール通りにコトが進まないなんてことは日常茶飯事だったりする

その時の、追い詰められたみゃーもりの様子には強烈な個性が表れる。本人は必死であり、面白がってはいけないのかもしれないが、やはり面白い。その様子を見てみよう。

まずみゃーもりの個性といったら、追い詰められた時に見せてくれる顔芸であろう。制作進行は、アニメーション制作全体を管理する役割といっても過言ではない。そのため、全体把握や臨機応変が非常に求められる

人間、予定通りに上手くいかない状態が連鎖すると、やはり心も切羽詰まってしまい、それが表情に表れる。みゃーもりもその例に漏れず、切羽詰まった状態では、コミカルな表情を様々見せてくれる。

アニメーション制作全体のスケジュール管理をするみゃーもりだって、やはり超人でもなんでもなく、ひとりの人間なのである。顔芸なんて揶揄される表情だって、みゃーもりの人間らしさや働くことの大変さが出ている表情であると筆者は思うのである。

そして、みゃーもりが究極に追い詰められた時には、なんと幻覚を見始めるのだ。それは、彼女が持つクマのぬいぐるみのロロとファッションドールのミムジーが会話をするというものである。

現在みゃーもりの心の中にある疑問や不満をミムジーが代弁し、それに対してロロが諦観したように諭すという会話が繰り広げられる。みゃーもりはドーナツが大好きであるが、ドーナツの食べ過ぎ故に見えてくる幻覚などとも揶揄される。

しかしこれは、みゃーもりが自分が置かれた状況に関して、極限状態ながらも冷静を保とうとする心理状態を表した表現であると筆者は思う。仕事において不平不満を漏らせない状況で自分に様々言い聞かせて仕事を進めた経験は皆さんにもあるのではなかろうか?

困った大人代表?木下誠一(監督)



続いて、木下誠一。SHIROBAKO劇中のアニメ作品、『えくそだすっ!』や『第三飛行少女隊』で監督を務める。唐揚げが大好物で、それがメタボ体型に表れている男性。

アニメ制作への情熱は熱く、自分が作品にかける思いをスタッフに熱弁する場面がよく見られる。そして、監督としての実力はあるはずの人であり、過去においては原作付きの作品のアニメ化を担当し、その作品で受賞歴を持つほどである。

しかし、初のオリジナル作品『ぷるんぷるん天国』では、制作スケジュールの破綻のために伝説級にクオリティの低い作品を世に出してしまい、ネット上で酷評され、業界でも数年ほど干されていた経歴を持つ。この木下監督がなかなかの困った大人なのである。

この木下監督、作品に情熱があるのは良いのだが、それゆえに周りのスタッフを振り回してしまうことも少なくない。例えば、個人的なこだわりを重視してアニメ制作中に設定を変えてしまい、そのせいでスケジュールが切迫することがある

そして、自分の構想がまとまらないうちはエンジンがかからない人間であり、そのため余計にスケジュールが切迫し、周りのスタッフの仕事が大変になることもしばしば。一般企業だったら「困った上司」ポジションなのが木下監督だったりする。

社会に出た人間だったら、「こーゆー上司いるよね…」と思う人もいるかもしれない。だけど相手は上の立場なだけに、強気にも出られないなんて経験がある人もいるのではなかろうか…?自分の上司に重ね合わせて共感を得られる存在。それが木下監督なのだ。

なんだかんだで憎めない新人、高梨太郎

そして、高梨太郎(通称タロー)。みゃーもりのほぼ同期(タローの方がみゃーもりよりもひと月入社が早い)の制作進行であり、「しゃっす!」といった若者的な?返事をするのが特徴

会社のデスクには多くのフィギュアを並べ、声優に関して詳しく熱く語ることができるなど、なかなかミーハーな部分がある。

このタローであるが、ひょうきんでお調子者な新人である。しかし、そのひょうきんさ故に、彼は劇中でトラブルメーカーになってしまうことが多々ある。

仕事においては、「他人の評価と自分の評価がズレている」と言われるほどの根拠のない自信を持ち、やや責任感に欠けることから、悪気はなく、だけど無自覚に周りに迷惑をかけてしまうタイプだったりする。

ひと言で表すならちゃらんぽらんであり、先輩の矢野エリカからはたかれているシーンがよく見られる。そのちゃらんぽらんさゆえに、彼を見ているとイラッとするという視聴者も多い

しかし、イラッとするはずなんだけど、どこか憎めない困った後輩なんだけど、嫌いにはなれない。そんなタイプでもあるタロー。皆さんの職場を思い出してみて欲しい。タローみたいなタイプは、自分の職場に案外いるのではないだろうか?

SHIROBAKOの魅力② 夢と仕事と…骨太な物語



SHIROBAKOの物語の特徴は、何と言っても、仕事の大変さに共感できることにある。例えば、社会での仕事の多くはやはりチームワークであり、多くの人と協力しながら進める必要がある。

先述の木下監督やタローのように、自分の仕事に対して責任を持って全うすることができず、そのために周りが迷惑を被ってしまう…そんな職場の仲間というものには案外そんな人がいたりする。

その大変さや理不尽さはアニメーション制作業界に限ったことではなく、多くの仕事に関して広く当てはまることではないだろうか…?



そして、多くの人たちが、社会に出る際には、何かしらの希望を持って踏み出すことだろう。しかし、いざ働いてみると、自らが抱いていた理想と実際の現実との間にギャップを感じてうんざりした経験を持つ人もいるのではないだろうか…?

職場の人間や理想と現実とのギャップにうんざりしながらも、そんな暇もなく、文句さえ言わず黙々と目の前の仕事をこなさなければいけない…社会に出て仕事をするとは、そういうことであると悟った人は少なくはないだろう…。

SHIROBAKOはアニメーション制作業界を舞台にしているものの、アニメ制作の現場に限らずどのような仕事においても当てはまる普遍的な大変さを描写している物語なのだ。そこに、SHIROBAKOの物語における骨太さがあるのである。

SHIROBAKOの魅力③ 声優さんたちの迫真の演技が光りまくる

SHIROBAKOを語るにあたっては、その物語に花を添えてくれる声優さんの存在は欠かせない。SHIROBAKOの声優さんには新人から有名どころまで幅広くキャスティングされているのが特徴である。

そんな声優さんたちの中から、SHIROBAKOの物語をより面白く、華やかにしてくれていると筆者が感じた声優さんをピックアップしてみたい

一人三役?宮森あおい役、木村珠莉

まずは主人公、宮森あおい役の木村珠莉さん。2013年デビューの駆け出しの声優さんのようだ。木村さんがメインキャラクターを演じるのは、この宮森あおいが初めてである

本作以外では、アイドルマスターシンデレラガールズの相葉夕美役セイレンの桃乃今日子役などで活躍されており、現在まさに新進気鋭の声優さんである。その木村珠莉さんの光る演技とは、どういったものだろうか…?

木村珠莉さんの光る演技…それは、みゃーもり、ロロ、ミムジーの3キャラの演じ分けである。先述したように、ロロとミムジーとは、追い立てられたみゃーもりの幻覚として彼女の心を代弁する人形たちである。

基本的には快活で様々な声の表情を示すみゃーもり落ち着いたような諦めたような声色のロロ不満や心の叫びを吐き出すかのような声色のミムジー。これら3キャラにはそれぞれこのような個性がある。

木村さんはなんと、個性がそれぞれ異なる3つのキャラを3つの声色で演じ分けているのだ!声優としては新人ながらも本作のメインキャラに抜擢されるあたり、木村さんのポテンシャルの高さが窺い知れるが、そのポテンシャルを忌憚なく発揮している演技であるように筆者は思う。

ヘタレな熱血キャラ!木下誠一役、檜山修之さん

続いて、木下監督役の檜山修之さん。この方はベテランであり、名前を見たことがある人、あるいは、声を聞くとピンと来る人も少なくないだろう。

代表作は、言わずと知れた勇者王ガオガイガーの獅子王凱役機動戦士ガンダム第08MS小隊のシロー・アマダ役といった、熱血系キャラクターの演技でよく知られている方である。

そんな熱血でお馴染みの檜山さんであるが、本作の木下監督のようなヘタレなキャラを演じるのはなかなか珍しいように筆者は当初思った。しかし、檜山さんのその熱血演技が光るシーンがある。それがこちら。

それは、木下監督が制作するアニメ、『第三飛行少女隊』の原作者に直談判するため、出版社へ赴くシーン。その際、出版社の人間が妨害に来るのだが、彼らを撃退する際の木下監督の技が思わず笑ってしまうのだ…。

その技とは、「波動腹!」「昇竜腹!」「竜巻旋風腹!」といった、某格闘ゲームで聞いたことがあるような技名を、檜山さんのあの熱血ボイス&熱血演技で叫びながら、前に進んでいくというものである。正直な所、このシーンは爆笑必至である。

物語の本筋ではなく、まさかパロディにおいて檜山さんが本領発揮してくれるとは、筆者も予想外であった…その馬鹿馬鹿しさと檜山さんの無駄遣い感が、SHIROBAKOのコミカルさを更に際立たせてくれている。腹筋を鍛えてから一度観て頂きたい…。

SHIROBAKOの魅力④ 輝かしすぎる受賞歴

出典:http://shirobako-anime.com

本記事で紹介しているSHIROBAKO。本作はアニメーション業界でも広く評価されている作品でもある。毎年アニメーション業界では様々なアワードが行われているが、複数のアワードにおいてSHIROBAKOは受賞を受けているのだ

それらの賞とは、第20回アニメーション神戸の作品賞東京アニメアワードフェスティバルのアニメオブザイヤー(2016)のグランプリSUGOI JAPAN Award2016のアニメ部門第2位の3つの賞である。

これらの賞であるが、審査員はアニメーション制作のプロはもちろんのこと、私たちアニメファンの投票にも基づいて選定されている。つまりSHIROBAKOは、プロとファン、両方の心をわしづかみにしたアニメなのだ!

SHIROBAKOの複数受賞の勝因とは?

このように複数の賞に輝き、アニメーション制作関係者ならびにアニメファンの両方から評価されているSHIROBAKO。その輝かしい功績の要因とはいったい何なのであろうか?筆者なりにまとめると、その「独自性」「時代からの要請」にあるようだ。

「独自性」に関しては、アニメーション制作業界という今までにない舞台もそうであるが、昨今のアイドルアニメなどのように、人気に乗っかって後追い(つまりは真似)の出来ない作品に仕上がっていることが挙げられる。

加えて、今日においてはアニメーション制作業界を夢見る若者たちも少なくない。そういった若者に業界、そして仕事における普遍的な大変さや現実を示しており、その意味では「時代からの要請」にフィットしたためではないかと筆者は予想する。

番外編 SHIROBAKOの聖地はどこ?

P.A.WORKSといえば、実在する場所をアニメにおいて舞台にすることで、地域とのつながりを作っていることに特徴のひとつがある。例えば、true tearsは富山県、花咲くいろはは金沢市、TARI TARIは江ノ島付近が舞台のモデル、つまり聖地となっている。

そのため、実際に聖地とである街や地域を歩いてみると、アニメ内の景色を丸写ししたかのような景色に出会うことがある。そのため、まるで次元を飛び越えて劇中の世界に入ってしまったかのような錯覚をおぼえることだろう。

やはりSHIROBAKOにも、モデルとなった実在する地域が存在する。今度はそんなSHIROBAKOの聖地に関して紹介していく。

SHIROBAKOの聖地、武蔵境。

SHIROBAKO劇中でみゃーもりをはじめとした登場人物が勤めているアニメーション制作会社の名前…それは、武蔵野アニメーションである。そう、名前の通りSHIROBAKOの舞台は東京都武蔵野市であり、主に武蔵境駅付近が聖地となっている

実際、武蔵境駅付近を散策してみると、SHIROBAKO劇中の背景をほぼそのもんま持ってきたのではないかと思うほどに、見たことのある景色を見つけることができる。その一部を紹介していこう。

JR中央線 武蔵境駅北口

まずは武蔵境駅。武蔵野アニメーションの最寄り駅であり、社員であるみゃーもりたちもよく利用する駅である。武蔵境駅は北口と南口があるが、劇中に出てくるのは主に北口の方である

北口から改札を望む景色と武蔵境駅の看板がまさに現実の武蔵境駅を丸写しなのである。SHIROBAKOの聖地巡礼の玄関口となるだけに、まず最初に背景描写の忠実さに息を飲む場所であろう。

ただ、武蔵境駅は路線の高架化の流れでその姿を変えつつある。劇中に少しでも近い景色を見たい人は、出来るだけ早く巡礼することをおすすめする

すきっぷ通り商店街



その武蔵境駅北口の目と鼻の先にあるのが、すきっぷ通り商店街。劇中でよく出てくるあたり、駅から武蔵野アニメーションまでの通り道になっているのだろう。みゃーもりがほろ酔い気分で「アンデスチャッキー」を歌いながら歩いていたのもこちらである。

このすきっぷ通り商店街であるが、かつてはSHIROBAKOとのコラボレーションイベントをやっていたようで、入口にSHIROBAKOの横断幕が掲げられていたり、キャラクターの等身大パネルがあったりしたようである。

SHIROBAKOと地元とのつながり、そして地元住民のSHIROBAKOへの愛が感じられる場所。それこそがすきっぷ通り商店街なのである。

どんどんドーナツどーんと行きたい、SHIROBAKOの世界!



以上のようにSHIROBAKOの魅力に関して紹介してきたが、いかがだっただろうか…?アニメーション制作業界の現実、そして仕事の大変さをしっかりと、だけどコミカルに描いた作品。それがSHIROBAKOの物語であると筆者は考える。

アニメーション制作業界を舞台にしたアニメ。それは今までになく、そしてこれからも出てこないであろう独自性を持っており、それが物語をよりヴィヴィッドで人を惹きつけるものにしているのであろう

そんなシリアスでコミカルなSHIROBAKOの世界に、皆さんもドーナツ片手にどーんと行ってみませんか?

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