【残響のテロル】東京でテロ!評価別れる問題作を5つの観点から紐解く!

新薬による人体実験、小型原子爆弾、続爆破テロ事件など問題提起の物語であるが故に、国によっては規制された「残響のテロル」。だが作品はもちろん、悪事を誘発したり、残酷さを強調したかったわけではない。百聞は一見に如かず。一緒に、この作品を振り返ってみましょう!

ノイタミナ最大の問題作「残響のテロル」とは

https://youtu.be/KDtA8aYjzzMプルトニウムの盗難爆破テロ、国家が隠ぺいした人体実験まで取り入れた、重い内容がテーマとなっている。

主役は17才の高校生2人組だが、彼らは国家の優れた人材育成のために幼児期に頭脳明晰な孤児を集め、個々の能力を高めるために更に新薬を投入された実験体で、その結果、一様に寿命が短い。

新進平和塾という一部の政治家を始めとするエリートによって極秘で進められたアテネ計画は、アメリカの介入もあり、中止された上、関係者は責任の所在の重さや、命の危険を感じ、個々に口を閉ざしている。しかも新進平和塾のメンバーには更に隠したい秘密―――――小型原子爆弾の開発があった。

観点①「残響のテロル」はテロ推奨アニメ?過激すぎるストーリー

日本では、文化庁メディア芸術祭において審査委員会推薦作品に選出され、アメリカのL.A.で開催されたアニメエキスポ、フランスのパリで開催されたジャパンエキスポ、韓国、オーストラリアでも同時上映会が開催され、好評を博した。
しかし、中国ではアニメは子供が観るものという観念も強く、中央国家文化部は「残響のテロル」を、日本アニメの中で規制強化三作品のひとつに列挙した。主人公が爆破テロを起こしたり、原子爆弾を製造する内容が原因である。もとより中国(特に中国共産党)は、三作品の他にも名探偵コナンやワンピースも規制対象にしているので、作品規制が厳しい国と言える。

テロを推奨するなどあってはならないことであり、爆破も現実で起こされてはならないが、一番このアニメの伝えたかった部分は、人体実験、及び貧困国における子供の人身売買、臓器提供なども、暗に訴えかけている部分ではないかと、私は考える。

そして更なる脅威、原子爆弾の所在についても問いかけている。日本のみならず、世界を考えていかなくてはならないこれからの青少年、義務教育を終えた高校生以上になら、ぜひ鑑賞して、考えてみてほしい問題提起の物語として捉えたい。

観点②カウボーイ・ビバップの渡辺信一郎と菅野よう子の最強コンビ

https://youtu.be/LIYmZey_6tI

「カウボーイ・ビバップ」というハードボイルドでありながらスタイリッシュな大人向けアニメで監督を務めた渡辺信一郎、そのアニメに合わせてジャズ調の音楽を担当した菅野よう子が、コンビを組んだ「残響のテロル」。

大人の鑑賞に堪える内容と作画、渡辺氏が音楽好きとあって、物語を知らずに音楽だけ聞いても申し分ない作品である。過去に、「天空のエスカフローネ」というアニメ作品でも菅野氏は音楽、渡辺氏は絵コンテを務めている。

渡辺氏の作品で要チェックなのは、「サムライチャンプルー」での絵コンテ、演出、脚本、「交響詩篇エウレカセブン」での第三期エンディング(「TIP TAPS TIP」歌 – HALCALI )である。音楽の選曲、ファッションスタイルなど、スタイリッシュと言われる所以が存分に表現されている。ご存知ない方は一見の価値あり、なのである。

https://youtu.be/c2k-vFm4-Vw

そしてアニメファンには菅野氏は有名で、クラシックからポップまで音楽の幅が広く、しかも完成度の高い作品ばかりで、天才と言っても過言ではない。今回もBGM集で、ハイティーンの若者のジレンマ、大人のような子供のような不安定な情緒、派手に悪いことをしているにも関わらず、目的達成のための本人達の冷めた世界に対する挑戦、限りある時間(寿命)との戦いなど、表面上に出てこないデリケートな部分を音楽で想像させるかのように、期待以上に作品に寄り添って表現している。

制作スタジオは株式会社MAPPA(マッパ)。設立した丸山正雄氏は、旧虫プロに在籍、マッドハウスの設立に関わり、社長を務めたアニメプロデューサーであり、現在はMAPPAの会長である。2016年、長編アニメーション映画『この世界の片隅に』は、第40回・日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞に選出された。

出典:https://images-na.ssl-images-amazon.com

特筆すべきは主題歌であるオープニング、「Trigger」尾崎雄貴(from Galileo Galilei)。菅野よう子がプロデュースした楽曲に、Galileo Galileiのヴォーカル&ギターの尾崎雄貴が作詞とヴォーカリストで参加した話題作。♪「生まれてから死ぬまでに何をしたい?って聞く―――――君はまるで天使みたいにさ 笑うから」メロディと歌詞の重なり具合が秀逸で、ボーカルの声も作品に似合っている。更にアニメのOP作画の、スピンクスの二人の軌跡がいつか消え入りそうな不安定さとマッチして、魅力を際立てている。

出典:https://images-na.ssl-images-amazon.com

そしてエンディングも女性シンガー・ソングライター、Aimerが菅野よう子作曲の「誰か、海を。」を歌いあげる。オペラとポップスを合わせたような、深い海を思わせる荘厳ながら、デカダンスを匂わせる退廃的な雰囲気に仕上がっている。決して幸せにはなれないテロリストの罪の重さの、物語の結末を連想させる。

観点③謎が多すぎるキャラクターたち

「それは、とても暑い夏の、太陽のような笑顔と、氷のような瞳」―――――学校では数人の女子生徒にいじめられ、家に帰ると母子家庭で、母は三島リサに対して、過干渉ぎみのノイローゼのようになっていた。そんな生活から抜け出したい思いを抱えていた三島リサは、とある夏の日、二人の少年に出会う。この物語の中に於いて、やや気弱なせいか、思春期特有の悩みを多く抱えてはいるが、比較的ふつうの女子高生である。

二人の少年が名前のないナイン(9)、ツエルブ(12)であり、爆破テロリストのスピンクス1号、2号である。高校入学のために九重新、久美冬二という名前はあった。彼らは孤児で実験体で、世界にそのことを知らしめたくて、短かいと予想される寿命をテロに使った。機械の扱いに長けていたり、顔と名前を瞬時に覚えるのが得意だったり、もともと高い知能指数や身体能力のほかに、彼らは薬の影響で、サヴァン症候群にも似た人工的にできあがった能力を持つ。特にナインは、耳鳴りのような頭痛に悩まされる副作用のシーンが何度か再現されている。

ナイン、ツエルブと同じ境遇だった三人目の生き残りのハイヴ(5)はアメリカで原子力科学者になり、FBIと共に小型原子爆弾の奪取のために、アメリカ政府より日本に派遣される。彼女もまた、偏頭痛などの副作用に悩まされ、自分の寿命を感じていたようだ。ナインを追いかけることで、まるでゲームを楽しむように、生き甲斐を燃やし続けた。



そして結果的に彼らをただのテロリストとして終わらせなかった、スピンクスの謎解きにつきあうオイディプスの役割を果たすのが、警視庁の柴崎刑事である。左遷されて冴えない窓際族の生活を送っていたが、テロリストの出現により、捜査一課に戻り、過去の「カミソリの柴崎」の異名通り、鋭い勘と知識を巡らせ、物事を正面から切り裂き、真相に迫る。圧力がかかったにも関わらず、忘れ去られようとしている過去のアテネ計画の少ない関係者を辿り、永田町の怪物と言われる大物政治家、間宮俊三にたどり着く



謎が多いキャラクターというより、出生を隠された子供たちの生き残り、その最果ての話で、テロは良くないが、なんとも全編を通して、もの哀しさが残る。「生き急ぐ」という言葉は、彼らの代名詞かもしれない。

観点④刑事VS主人公テロリストコンビの頭脳戦は必見!


爆破の場所をなぞなぞで告知するスピンクスと、謎を解くオイディプスの鬼ごっこのような展開は、視聴者も引きつけられる。しかも二度目は六本木警察署を爆破、捜査資料をハッキングして外部に漏らすなど、警察への挑戦と取られるのも当然である。二人が爆破していたのは、アテネ計画の関係者のビルや建物であることは、一連の事件から後に浮かび上がってくる。ただ彼らはいつも、怪我人や死者を出さないところまで計算して、テロを仕掛ける。知能の高さがうかがえる。できるだけたくさんの人を事件に故意に関わらせ、巻き込むことにより、新進平和塾のメンバーがその罪から逃げられないように、隠すことができないようになるまで、追いつめて行ったのだ。

スピンクスとオイディプスはギリシア神話であり、多くの芸術作品に記されている。諸説があるが、スピンクスはオイディプスに謎を解かれて、死に至る記述が多くを占めている。彼らは自分たちの目的のために、登場人物を探していた。自分たちを探して、生い立ちを調べ、公表してくれる誰かを。そして最後に捕まえてくれる誰かを。そのためには事件を大きく、世界を揺り動かす必要があり、そこまでしなければ、アテネ計画やその計画を立てた中心人物である間宮俊造が、更に隠したかった小型原子爆弾のことが、表面化することはないと読んでいた。

観点⑤舞台化も!メディアミックスで展開!

出典:https://images-na.ssl-images-amazon.com

アニメ・漫画を舞台化した世界を「2.5次元」と呼ぶ。代表作といえば、「テニミュ」こと「テニスの王子様」だが、2016年3月に『PREMIUM 3D STAGE 残響のテロル』が、Zeppブルーシアター六本木で上演された。ナイン役は松村龍之介、ツエルブ役は石渡真修、ほか。大好きな二次元キャラが、舞台で人間になって、まるで本物のように動き出す。見逃した方にはDVDも発売されているので、チェックしてみてほしい。

衝撃の結末をぜひその目で…



作中で、アテネ計画の非人道性に関して罪悪感を全く感じていない間宮俊造という政治家が描かれたが、人体実験が行われることが皆無だと、言い切れない現実がある。新薬の服用など、知らずに治験者にされているかもしれない。実験は静かに、人々が気づかないうちに、行われているものなのかもしれない。そして原子力爆弾の材料も、秘かに持ち込まれ、使ってはならないというのに、使う日を想定して用意されているのかもしれない。国家間の力のバランスを保つためなのか、それとも、一部の莫大なお金を稼ぎたい人々の、エゴのためなのか。

https://youtu.be/DQlQicCB4jQ

ナインがいつもイヤホンをして聴いていた「寒い国」の曲とは、アイスランドの音楽である。プルトニウムを盗むときに床に書いたり、爆弾に書いた文字、「VON」はアイスランドの言葉で「希望」を意味する。ラストは語るに及ばない。全11話で、そう長くはないアニメーションである。世界の最果てに立たされたような、幼児期に無抵抗に追いつめられた少年たちの心の傷と、静かな怒りを、ラストまでぜひ全話視聴して、見届けてほしい。