【乙嫁語り】今最も読むべき「美しすぎるマンガ」を語り尽くす

原作者「森薫」よる草原を舞台とした遊牧民の物語。自然や動物のまるで生きているような表現や、刺繍や編み込みの細かく美しい描画など、まるで絵画の様な漫画の魅力を紹介します。

今最も注目すべきマンガ・乙嫁語りとは?

森薫による世界感


原作者「森薫」による、19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の地域を舞台とした架空の部族の物語。草原に住む部族は自然の壮大さや厳しさ、動物の表情やしぐさ、部族同士の争いなど、まるで絵画や映画の様な美しくまるで生きていると思わせる漫画になります。

乙嫁とは何か?

乙嫁とは、「弟の嫁」「年少の嫁」を意味する古語です。主人公「カルルク」には姉がおり、立場的に弟になります。そのため、乙嫁とはカルルクのお嫁さん「アミル」のことを指しています

つまりは、弟夫婦「カルルク」と「アミル」の仲睦ましく、愛情たっぷりの話(のろけ話?)と言うわけです。

ちなみに、出版もとである「エンターブレイン」のサイトでは乙嫁とは「美しいお嫁さん」と言っており、どちらにせよアミルの事であることには変わらない内容になります。

乙嫁語りのあらすじ

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乙嫁「アミル」の物語


19世紀後半の中央アジアの街に住む「エイホン家」の「カルルク」のもとに、北方の移牧民「ハルガル家」から「アミル」が嫁いできた

二人はそれぞれ12歳と20歳の年の差があり、他の夫婦の様にはいかなかった。さらに狩猟民族であるハンガル家で育ったアミルは、エイホン家とは違うことが多く戸惑うことも少なくなかった。

それでも二人は互いを尊重し大切にして夫婦の絆を深めていき、周りも二人の絆を大切にしていった。

政治に巻き込まれるアミル

アミルがエイホン家に嫁いでしばらくしたころ、アミルの実家ハルガル家が住む北方では、ロシアの南下による侵攻により緊張状態にあった。アミルの叔父たちは、有力部族の力を借りる為に誰かを嫁がせようと考える。しかし、手ごろな娘が居らず、仕方なくすでに嫁いだアミルを連れ戻し新たに嫁がせることに決定し行動を開始する。

叔父の命令により、アミルの兄アゼルと従兄弟たちは、エンホン家に向かいアミルに帰ってくるように言い放つ。非常識な要求を突き付けられるエンホン家は、当然拒絶を決めつけ抵抗する。

無事に追い返すことはできたが、今度は叔父自らが出向きアミルを攫おうとしてくる。危うく攫われそうになるアミルだったが、街に偶然いた英国人旅行家の「スミス」の機転に救われ難を逃れることができた。

部族間の衝突

先の騒動からエイホン家はハルガル家との縁切りを宣言する。時期を同じくしてハルガル家は、アミルを攫うためエイホン家がある町へ「バタン」の部族とともに襲撃にやってくる。

しかし、アゼル率いる若者たちは襲撃を良く思っておらず、襲撃には参加しなかった。そんな中バタンがハルガルを裏切る話を知ることになり、阻止するためにアゼルは町へ向かう。

襲撃による戦いは町にまで及び、街の住民は混乱の広がる中、町とアミルを守るために必死に抵抗を行った。そんな中、カルルクはアミルの父「ベルクワト」に襲われてしまう

カルルクの境地をアミルが放った矢によって救われるが、アミルは完全にハンガルの敵となり、ベルクワトと対立することになってしまった。

緊張の中、バタンが裏切りを開始しハンガルを亡き者にしようと動き出す。しかし、アゼルの活躍によりバタンは打ち取られ統率が乱れ始める。そこへ襲撃を聞きつけたロシアの兵が現れ、戦いは終結した。

襲撃の終わりに

多くの襲撃者はロシア兵と町の住民によって捕縛された。しかし、アミルの父ベルクワトは捕まらず逃亡されてしまう

襲撃を否定しバタンを始末したアゼル達も捕まってしまい、襲撃に参加していたとみなされ罪を受けることになってしまう。しかし、アミルとカルルクがアゼル達は関係ないと証言したことと、町の住人が助けられていたことから釈放されることになる。アゼル達は残されたハンガル族を立て直すために北方に帰っていくことになる。

ひそかに逃げたベルクワトは、屈辱を晴らすため再度襲撃を計画しながら逃亡をしていた。しかし、無事に逃げきれたと思っていたベルクワトは、ひそかに追っていたカルルクの祖母「バルキルシュ」が放った矢により絶命される。こうして首謀者はいなくなり、騒動は完全に終結した。

乙嫁たちとその物語がどれも魅力的

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第二の嫁「タラス」

エイホン家にお世話になっていた「スミス」はアンカラへ向かう途中、カラザの町で「タラス」と出会う

タラスは馬を盗まれ困っているところをスミスに助けられ、感謝の為に家に招待した。二人は一緒にいるうちに惹かれ合うが、スミスは旅の途中の為、気持ちを告げずに過ごしてた。

そんな中、スミスはスパイ容疑で捕まってしまう。タラスはじっとしていられずにスミスを救いに向かう。救いに駆け付けたことで互いに意識し抑えられなくなり、互いに愛情を確認し婚約を約束する

しかし折悪く、義母がスミスは旅人の為いつか居なくなり、に自分が死んだ後にタラスが一人になってしまうと考え義叔父と結婚をしてしまい、義父となったことからスミスを否定し婚約を認めなかった

スミスは納得がいかなかったが引き下がるしかなく、タラスとの縁は叶わなくなりカラザを去ることになる

思い合うけど叶わない甘く切ない恋物語になります。

第三の嫁「ライラとレイリ」


アラル海沿岸の村に暮らす双子の姉妹。素潜り漁を生業とする、元気あふれる仲の良い姉妹になる。

二人は玉の輿を夢見ていたが、父親同士の話し合いの末、幼馴染のサマーンとファルサーミの双子の兄弟とそれぞれ結婚することになる

互いに知り尽くしているため、喜びは薄いものの互いに嫌いではなく、改めて話すことで新たな魅力を知り結婚することになる。

サマーンとファルサーミの兄弟の姉弟は、子供っぽくも明るく元気が魅力のライラとレイリに振り回されながら、四人仲良く生活していくことになる

本当の幸せは身近にあり、気付くことで幸せは何倍にもなる、平凡だけど暖かく幸せな物語になります。

第四の嫁「アニス」


ペルシアの富豪の妻でほっそりと優雅な美女であり、ハサンという息子がいる。

「アニス」は裕福な家、優しい夫、立派な跡取り息子と不自由のない生活を送っていた。しかし、女性は家族以外の男性の前に姿を現さない風習と、控えめな性格から家に居ることが多く、夫と家政婦「マーフ」以外では動物くらいしか話し相手がいなく、孤独感が付きまとっていた

見かねたマーフは気分転換に風呂屋を紹介する。そこでアニスは既婚者である「シーリーン」と出会い、一目惚れしてしまう。アニスは生涯にわたる友情を誓い合う「姉妹妻になりたいと考えシーリーンに願い出る。結果シーリーンは承諾し二人は姉妹妻になった

そんな時、シーリーンの夫が亡くなってしまう。シーリーンは残された子供と義父母を抱えて途方に暮れることになる。アニスは何とか助けようと考え、夫にシーリーンを第二夫人として迎え入れることを願い出る。夫はアニスの決意を知り、シーリーンを迎え入れ生活の保護を約束する。

こうしてアニスとシーリーンは同じ男性の妻であり、姉妹妻として仲睦まじく暮らしていくことになる。

女性同士の友情?と愛情による物語になります。

第五の嫁「パリヤ」


パリヤには「ウマル」と言う縁談相手がいたが、パリヤは女性らしくないことから自身に自信がなかった

そんな中ハルガルたちの襲撃により家を失ったパリヤの一家は、再建までエイホン家に居候することになる。また、家財の他にパリヤが仕立て上げていた花嫁道具も失ってしまい、結婚の先延ばしになってしまう。

パリヤはこの先結婚できないのではないかと嘆き、自信のないまま失った花嫁道具を作り直すことになるが、刺繍が上手ではないため悪戦苦闘することになる。そこへ「バルキルシュ」から「誰かを想って縫う」というアドバイスによって少しづつ上達しパリヤの父母も見直す出来栄えになる。

一方ウマルは、家を失ったパリヤの一家の為に父親と共に手伝いに町へやって来た。パリヤは自身の女性らしくない部分を見られたくない為に、距離を開けた対応をしてしまい自己嫌悪を繰り返す毎日を送っていた。

ウマルは何度も町に手伝いに来るうちに、パリヤの見られたくない部分をウマルは目撃するようになる。パリヤは嫌われると思ったが、逆に明るく元気なところが好きと言われてしまう。

パリヤは、そのままの姿を見ても好きという事から自信を持つようになり、いつか花嫁道具を完成させるから結婚を待っててほしいと告白する

素直になれなず空回りする女性の、甘く微笑ましい青春物語。

衣装や装飾品の描き込みが超繊細

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丁寧に模様を描く美しき刺繍


本作の衣装や小物など多くの布にキメ細やかな美しい刺繍が施されています。物語に登場する女性は、小さいころからコツコツと時間をかけて小物などを作り刺繍を施していきます。これは、結婚する際に花嫁道具として持っていく為のもので、より綺麗にたくさん作れることが良いお嫁さんの一つの条件になっています。

森薫が描く刺繍はどれも繊細で美しく丁寧に描かれており、まるで、刺繍を施した女性がコツコツと花嫁道具の為に気合をいれて作って来た努力の結果をそのまま表現しているかのような描写になります。

乙女たちの努力の結晶で繊細で美しい刺繍は、美しさで魅了する乙嫁語りの魅力の一つと言えるでしょう。

入れる絵柄に決まりはない?


入れる刺繍は人それぞれの様で、「アミル」は鹿など動物を入れることを好み、「パリヤ」は鷹などの鳥を刺繍していました。パリヤが鷹などを刺繍したことから、花などのおしとやかな物を刺繍した方が良いと母親から嘆かれましたが、本人や家族が使う物の為好きなものを入れることが良いそうです。

ちなみに使う相手の事を思い作ることが上達の近道だそうです。

様々な賞を受賞!

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日本の漫画界が決める二つの賞


乙嫁語りは、様々なところから高い評価を受けています。

日本の書店員が決める「全国書店員が選んだおすすめコミック」で2010年に2位を獲得し、星の数ほどある本を販売する専門家がおすすめするランキングに名を残しました。一年間に数多く本が販売されるため、その年に販売される本以外の本は基本的に埋もれていきます。しかし、乙嫁語りは翌年2011年に「15位」、翌々年2012に「11位」と埋もれることなくランキングに連なる作品になっています。

また、普段からマンガの現場でマンガに接している専門家が認定する、「マンガ大賞」で2011年と2013年に共に2位、そして2014年にはついに大賞を受賞するほどに認められている作品でもありあります。

どちらも漫画界の賞の為一般的に有名ではないかもしれませんが、漫画界の人が複数年に続いて評価し続けるほど印象深く、面白い作品だと証明される賞になります。

日本だけでは留まらず海外をも魅了する

評価される場所は日本だけでは留まらない。

フランスでは、フランスで最も古い漫画関連のイベントであり、漫画における「カンヌ」とも言われている「アングレーム国際漫画祭」で2012年に「世代間賞」を受賞しています。賞は違いますが、「ゲゲゲの鬼太郎」の「水木しげる」や、「20世紀少年」の「浦沢直樹」らの巨匠たちが過去に賞をもらっているほどの大きなイベントで、乙嫁語りの「森薫」も巨匠に並ぶと評価された賞になっています。

また、アメリカでは全米図書館協会が主催する、「10代向けグラフィックノベル・ベスト10」に選ばれることになります。これは日本の「マンガ大賞」と似たようなもので、「日本」と「アメリカ」、作風が違う二つの国の漫画界から多くの人に読んでほしいと評価される内容だと言うことです。

恋する乙女は終わらない


第一の乙嫁「アミル」を筆頭に、第二の嫁「タラス」、第三の嫁「ライラとレイリ」、第四の嫁「アニス」、第五の嫁「パリヤ」と順調に結ばれており、今後も新しく恋する女性が現れるごとに第六の嫁と増え続けていくでしょう。

また、結婚は終わりではなく始まりであり、其々の夫婦の物語はまだまだ続いていきます。アンカラに向かったスミスや、北方のロシアとの国境近くの土地に移り住んだアゼルなど、魅力的なキャラクターも含めて今後どのように新しい物語が増えていくのか気になるところです。