【最後から二番目の恋】極上の中年恋愛ドラマを六つの魅力で語る

鎌倉を舞台に“オトナの恋愛”を丁寧に描いた『最後から二番目の恋』(2012年、フジテレビ)。独身の中年男女が織り成すドタバタとペーソスに、リアルではない世代も共感必至です。このミドル世代の恋愛模様・魅力を六つのポイントから観てみましょう!

大人の恋愛ドラマ『最後から二番目の恋』とは?

恋愛ドラマなのに、ホームドラマの安心感も

『最後から二番目の恋』(2012年、フジテレビ)は、大人の恋愛ドラマです。鎌倉(神奈川県)に住む市役所観光推進課勤務の長倉和平(中井貴一)と、その隣に引っ越してきたテレビ局のドラマ・プロデューサーの吉野千明(小泉今日子)が織り成すラブ・ロマンスと言ってもいいでしょう。

この二人がお互いに認め合い、結ばれて行くストーリーなのですが、その“回り道”が現代においてはハンパなく長いのが特徴です。何せ、この正編だけでは二人は結ばれず、スペシャルの『最後から二番目の恋2012 秋』(2012年)を経て、『続・最後から二番目の恋』(2014年)で、やっと二人の恋は成就するのですから。

設定年齢が50歳と45歳からスタートして、結ばれた時の年齢を足すと100歳です。身につまされながら観ていた男女は多かったと思います。

魅力① ロケ地・鎌倉の落ち着いたトーンが『最後から二番目の恋』にフィット

観光だけではない「住処」としての鎌倉もgoodです

関東の保養地や観光地としても有名な鎌倉が『最後から二番目の恋』の舞台になっています。夏場は湘南海岸が賑わいますが、その季節以外は風光明媚という言葉がピッタリな静かで落ち着いた街です(そのギャップもまた、楽しいのですが)。

和平と千明の住居が鎌倉なために、実在する場所が随所に出てきます。最寄駅の「極楽寺駅」(江ノ島電鉄。通称「江ノ電」。写真・上)は、市民の生活の足として普通に利用しています。和平と千明が帰宅の際に同じ電車に乗り合わせて、勤め先から帰ってくるあたりは恋愛ドラマの典型です。その後、よく二人で飲みに行っていました。

ただ、普通の恋愛ドラマと違うのは、よく議論をしては千明が飲み過ぎてしまうという事ですかね。その度に和平が千明を背負って帰宅するあたりは、ほのぼのとしてイイ感じです。

鎌倉といえば寺社仏閣が有名です。ドラマ内でも御霊神社の階段や境内が、頻繁に使われていました。関東の古都なだけあって、画面に重みが出ていいですよね。筆者もあの辺りを盛んに歩いていた時期がありました。遠い昔の話しですけど(笑)。

そして、鎌倉でロケするなら外せないのが、“海”です。江ノ電の線路を超えると、そこはもう由比ケ浜です。和平が毎朝、海岸の掃除と「貝殻拾い」をしている海岸です。当然、千明と散歩をしたりしています。また、そこで、真平(和平の弟。坂口憲二)が夜中に海を眺めて、何か想いを巡らせたりもしていました。

筆者にとっては、「バックに海があると、こんなにも映像は映えるのか」と、考えを新たにさせてくれた作品でもあります。海のない県で生れ育ったので、特にそう思うのかもしれません。

魅力② 脚本が織り成すミドル世代への“淡く熱い”メッセージ

熟練した筆技が、中年恋愛モノでも冴え渡る!

この作品が、特に中高年にウケた理由を挙げるとするならば「キャリア然とした千明が、実は弱気だったり乙女チックな面を持っている」ギャップが共感を得たのかも知れません。イケイケなオンナは、いくつになったって鎌倉の古民家を「終の棲家」にしようなどとは考えないと思うんですよね。

その辺りのツボを、脚本を担当した岡田惠和にはよ~く分かっていたのではないかと思います。冒険していそうで、実は日常は坦々としている。そんな毎日でありながら、周囲は常に誰かしら問題を抱えてやって来て、ガチャガチャとかき回していく。

まるで骨格は、昭和のホームドラマみたいなのですが、そこに熟練された“テク”を加えて、現代版のドラマを作り上げてしまうとは“まさに神業”としか言いようがないです。

脚本家・岡田惠和の名前を、筆者が意識してテレビで観るようになったのは『ビーチボーイズ』(1997年、フジテレビ)からです。それまでも話題作を多数書いていたのですが、嗜好と合わずに観ていませんでした。『ビーチ~』も流行りものとしてしか観てなかったのですが、今、観返してみると結構面白い事に気づきます。

そして、岡田氏のファンになったのは『ちゅらさん』(2001年、NHK)からです。沖縄が好きなので、なおさらハマりました。田村正和・松 たか子の『おやじの背中-「圭さんと瞳子さん」』(2014年、TBS)も、親娘の愛情を静かに描いていて良かったですね。そして、現在は朝ドラ『ひょっとこ』(NHK)を毎朝観ています。

岡田氏は、どれだけの引き出しを持っているのでしょうか?この人の書く脚本(ホン)には、はずれがないような気がします。

魅力③ 『最後から二番目の恋』メイン・キャストの「大人の掛け合い」に注目

イメージ通りの役作りに、「プロ」を見た!



このドラマの主演の二人は、共に25年以上(放映時)のキャリアを持つ芸達者です。中井貴一は二枚目俳優の父を持つサラブレッドとしてデビューして以来、時代劇や青春モノ、シリアスな役どころ等を多数こなしてきた歴戦の強者です。若い頃は、レコード(死語)も出していました。

一方、小泉今日子もアイドルとしてデビューして以来、女優としても活躍。映画『毎日かあさん』(2011年)や朝ドラ『あまちゃん』(2013年、NHK)では、役の幅を広げる事にも成功しています。蛇足ですが、『讀賣新聞』の日曜日の書評欄でも枠を持っていました2005年~2014年)。こちらも、読んでみると彼女の奥深さの一端が分かると思います。

この二人の言い争う様が面白くないわけはないですよね。絶妙の“間”と、そこに生じる表情はまさに一級品、「大人ドラマ」ならではの味わいがあります。

例えば、帰りに立ち寄る飲み屋のシーン。始めは子供のケンカみたいな体を見せるのですが、飲む程に千明の態度が変わっていきます。『続』でのひとコマですが「長倉さんって、モテますよねぇ?」と千明が真顔(でも目は座る寸前)で尋ねると、和平は「モテないですよ。モテるわけがない」。

千明はさらに、「モテますよぉ、長倉さんは!」と口撃を緩めません。ここでは「長倉さん」と呼んでいるのが分かります。いつもは「長倉和平!」とフルネームで呼んでいるのに……。

こうした男女の微妙な空気を演じられるのも、二人の演技力あってのものです。ミドル超の世代にウケる鍵は、こうした細かい所にもあるんですね。

魅力④ 『最後から二番目の恋』彩りを添える味のある共演者達

脇を固める豪華な共演陣!

中井貴一や小泉今日子だけではなく、若い頃に“ちょっとは鳴らした”俳優陣が共演しているのも、このドラマのイイところです。長女にはグラビア界でブイブイ言わせていた飯島直子、元モデルで癒し系イケメンの坂口憲二と美少女アイドルだった内田有紀の双子の兄妹と、長倉家のキャスティングは豪華かつ懐かしい顔が揃っています。

ほかにも、ピンク映画『ピンクのカーテン』で男性を虜にした美保 純が花を添え、浅野和之や続編では鎌倉市長役で柴田理恵が登場して、渋い演技でストーリーに厚みをもたらせてもいます。このドラマが凄いのは、柴田理恵を除けば(もちろん、小泉今日子も)全て親戚関係にある事です。

恋愛ドラマなのですが、家族ドラマみたいな「レトロなノリ」も、ちょっっとイイ感じです。



ストーリーの本筋とは、あまり関係ないのですが千明のキャリア・ウーマン友達(写真・下)も美味しい所を持っていっています。筆者らは密かに「トリオ・ザ・アラフィフ」と命名しているのですが、いい味を出してるんですよ。

メンバーの森口博子は出版業界系、渡辺真起子は音楽業界系で“いかにも風”なのがキマっています。当然ですが、未婚です。この三人がちょっと高級そうな店に集まっては、ワインを飲みつつ仕事やオトコの悪口を言い合っている姿は、フィクションとは言い難いリアルさがあって面白い!

でも、この二人に千明の心情を代弁させているセリフもあったりして、物語の役回りとしては結構、重要な存在なのかも知れません。筆者は小心者なので、このテの女性には怖くて近寄れないですけど。

魅力⑤ 「片想い」こそ最高の恋の形

片想いは素敵です!

『続』での和平は秘書課も兼任しています。そちらの主な業務は、市長(柴田理恵)のスケジュール管理ですが、色々と振り回されて相変わらず大変な様子です。市長に嫌われていた和平も、責任感のある仕事ぶりと誠実な人柄から次第に好意をもたれ始めていきます。

そんなある日、長倉家で千明の番組のロケが行われます。市長はそこに表敬訪問するのですが、和平への想いが高まって「片想いには二種類あるんですよ、長倉さん。~(中略)~人生最後になるかも知れない片想い、結果のない片想いをさせてください」と、千明や万里子のいる前で口走ってしまいました。

自分が好きなら、勝手に終わりなく想っていられるという、市長の“片想い”論に拍手です。年をとってくると、ジーンとくるセリフです。この場面、(「WAHAHA本舗」以外では)柴田理恵一世一代の名シーンだと思います。

魅力⑥ しっとり歌いあげる主題曲も『最後から二番目の恋』の魅力!

“大人”に合った、スローなラブソング


ドラマのエンディングには、「how beautiful you are」(浜崎あゆみ)の曲に乗せて、それぞれの回のオフ・ショットが紹介されます。その写真がモノクロームなのですが、これが浜崎あゆみのスローな歌声に合っているんですよね。

しっとりとした歌声は、ドラマの内容をスポイルせずに流れて行きます。「今週の話しも良かったなぁ」と、余韻を持たせる事に成功しています。


しっとりとした曲調とは程遠いですが、『続・最後から二番目の恋』の劇中歌として中井・小泉コンビがデュエットしているのが「T字路」(動画・下)です。こちらはCKBの横山 剣の作った曲に二人の軽回なステップを合わせたレトロなんだけどポップな仕上がりになっています。

レコーディング自体が約20年ぶりという中井が楽しんで歌っているのが微笑ましい作品。カバーはイラストレーターのわたせせいぞうです。

続編のラスト・シーンこそ至上の中年恋愛!【ネタバレ注意】

ベッド・シーンはないけども…

『最後から二番目の恋』は、今時にしては不思議なドラマです。好きあっている大人の男女同士のラブ・シーンがないのです。それどころか千明は真平と付き合ったり、年下の元カレが登場したりしています。和平はといえば、秀子(美保 純)親娘をはじめ作家(萬田久子)、薫子(娘のボーイフレンドの母)、市長らに迫られていました。

そこに安易になびかない和平を、千明は好きになっていきます。和平もまっすぐな千明を好ましく思っていますが、なかなか気持ちを伝えられません。そんな折りに、長倉家でホームパーティがありました。そこで和平は皆に向けて静かに語り出します。

「まだ、両親が健在の頃~(中略)~朝、早起きしてみると後片付けにつかれた両親が二人で寄り添ってソファで寝ていたんです。こんな夫婦になれたら、いいなぁとボクは思ったものでした」。



その宴は終わり、皆はそれぞれ帰って行きました。ただし、まだ二人は飲み続けていて、いつもの調子で酔払って“やりあって”います。

そして、朝。飲み疲れ・喋り疲れた二人はソファで寄り添って眠っています(写真・下)。まるで、パーティで和平が言っていた“仲が良くて、いいなぁと思った夫婦の姿”のようにです。ここで(『続』も含む)全ての物語は終わっていますが、筆者には今までのシーンの全てが、このラストを撮るための伏線だったような気がします。

それにしても素敵なラスト・シーン、素晴らしいドラマです。“恋を忘れた方々”にも、オススメな一作です。