【ヴィンランド・サガ】真の戦士の物語を6つのポイントで紹介する

アフタヌーンで連載されている大人気ヴァイキングの物語「ヴィンランド・サガ」の物語の魅力を6つの視点からご紹介していきます!

ヴァイキングの血を引くトルフィンの物語『ヴィンランド・サガ』のあらすじ

ヴィンランド・サガは9世紀から11世紀にかけて北欧からイギリスにかけて西ヨーロッパ沿岸部の諸国を侵略したヴァイキングをモチーフにしたお話です。
主人公「トルフィン」は幼児のころまではアイスランドで平和に暮らす普通の少年でした。ある日、父「トールズ」の元にヴァイキングの船団が表れます。実はトールズはヴァイキングのヨーム戦士団で最強と謳われた大隊長「戦鬼(トロル)のトールズ」だったのです。
トールズは村の人を巻き込まないためにヴァイキングの要請に応じて海に出ます。トルフィンは父親に付いていきたいがために船に潜り込んでしまうのですが、これが彼の人生を大きく変えてしまうことになるのです。

仕方なくトールズはトルフィンと一緒に海に出ますが、結局これは罠で、トールズはアシェラッド率いる船団に襲われてしまいます。最強の戦士であるトールズはこれを難なく撃破していくのですが、最後にトルフィンを人質に取られ、命を落とします
これがきっかけでトルフィンは、父親の仇であるアシェラッドを殺すため彼の船団の一員になって戦いの日々に身を投じて行くのです。

幾度となく死線をくぐり抜けながら成長したトルフィンの実力はアシェラッドの船団でもトップクラスになっていきます。しかし、相変わらず父の仇であるアシェラッドは倒せません。アシェラッドもトルフィンを使えるコマとして良いように利用するのですが、どことなく彼を見守っているような、育てているような顔を時折見せます。
そんな中、ある転機が訪れます。

デンマークの王であるスヴェンの息子クヌート王子が敵に捕らえられてしまったという情報を聞きつけたアシェラッドは、クヌート王子の救出を考えます。目的は王子を救出し恩を売ること。
さらに、スヴェン王の第二子であるクヌートを跡目争いに参加させ、うまくデンマーク王に仕立て上げること。上手くいけば王家直属の部隊になれると目論んだアシェラッドは敵であるトルケルの部隊とぶつかることになります。

見事クヌートを奪還したアシェラッド軍は王子を連れながらトルケル軍から逃げることになります。しかし、せっかく助け出したクヌートは、跡目争いをするにはあまりにも軟弱な王子でした。
それでもアシェラッドは王子の気質を変えようと、彼の教育係を殺してみたり、年の近いトルフィンを側近にしてみたり、いろいろ策を講じるのですが、とくに効果も出ません。

しかし、度重なる戦いの中で、クヌートはあることに興味を持ちます。一緒に捉えられていたキリスト教の牧師の話に耳を傾けるクヌート王子。最終的に彼は「神が助けてくれないのであれば自分がこの世に楽園を作る」という結論に至るのです。ここからの変貌っぷりに注目です。ついに王子覚醒!

スヴェン王から王位を奪うことにしたクヌートは、アシェラッドとトルフィンを側近にしてスヴェン王の本陣に戻ることになります。さまざまな策謀が張り巡らされ、両者の緊張は続いていきますが、とあることで打つ手がなくなったアシェラッドは自らスヴェン王を殺害してしまいます。
逆賊を演じることで、クヌートに討たれ、王位をクヌートに継がせるというアシェラッドのの作戦は見事に上手くいきますが、長年の父の仇を討たれてしまったトルフィンは失意のまま捕らえられ、奴隷になってしまうのです。

ここからは新章に突入、クヌートは王として、トルフィンは奴隷として話は進んでいきます。トルフィンは奴隷の身になりながら生きる目的も持てずに、悪夢にうなされつ続けます。これまで略奪して殺した村人、敵の戦士などが夢に出てきてトルフィンを苦しめます。
トルフィンはどうすれば許されるのか分からぬまま、奴隷として扱われることの理不尽さと戦っていきますが、次第に亡き父トールズの言葉を理解していき、ついに自分の目的に目覚めるのです!それが、この世に誰もが幸せに暮らせる国「ヴィンランド」を建国することだったのです。ようやくタイトル回収ですね!

こうしてトルフィンは「本当の戦士とは何か」という問いを抱え、人を傷つけること無く新しい国を作るというとてつもなく難しい旅に出ることになります。しかし、元々戦士として超が付くほど有名だったトルフィンには否応なく争いに巻き込まれていってしまいます。
果たしてトルフィンの行く先はどんな困難が待ち受けているのか、無事ヴィンランドを作ることができるのか、今後も目が離せません!

ヴィンランド・サガの魅力① 実在する人物がモデル

トルフィン

ソルフィン・カルルセフニ・ソルザルソン(侠気(おとこぎ)のソルフィン)は、10世紀に実在したアイスランドの冒険家です。新大陸ヴィンランドへ移民を連れて新たな居住地を作ろうとした人物として知られています。

出典:https://ja.wikipedia.org

アシェラッド

あだ名はアシェラッドですが、本名は「ルキウス・アルトリウス・カストゥス」、あの有名なアーサー王のモデルとなったケルトの将軍です。

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スヴェン王

“双叉髭王”(そうさひげおう)、“八字髭”(はちのじひげ)と呼ばれたデンマークの国王です。ノルウェーの国王も兼任したとされています。クヌートは史実でも実の子供という記録があります。

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クヌート王

「大王」と呼ばれたクヌート王は、イングランド、ノルウェー、デンマークの王を兼任し、北海帝国を築き上げました。本編でも理想の国を建国するために暴力をもって国を作り上げていくところは史実に沿っていますね。

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のっぽのトルケル

本編では、ヨーム戦士団のシグヴァルディの弟、トールズと並ぶ戦士団長という設定ですが、シグヴァルディもトルケルも実在の人物です。こんなでかい人がバトルアックスぶん回してたら戦うのも嫌ですね。

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レイフ

ヨーロッパ人として初めて北米に到達した人物として知られています。実際に見つけたのは、北米大陸のニューファンドランド島北西部と考えられています。
しかし、動力もないただの細長い船で何日もかけてグリーンランドからアメリカ大陸に到達するというのは現在の我々では想像もつかない困難と恐怖に立ち向かわなければいけない、まさに偉業と呼べるでしょう。

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ヴィンランド・サガの魅力② アニメ化が期待されるほどの壮大なストーリー

作者である幸村誠先生の作品は前作「プラネテス」も同様、非常に深いテーマを取り扱うため、その人気にもかかわらずなかなかアニメ化されづらい部分があるようです。しかし、アニメすれば間違いなく人気になることは間違いないでしょう。
もしアニメ化されるのであれば、本編も結構な巻数が出ていますし、少しずつで良いので丁寧に描いてほしいものですね。

ヴィンランド・サガの魅力③ ヴァイキングの生活と宗教観

ヴァイキングの生活

普段のヴァイキングは普通の農民であったと言われています。夏になると船に乗って遠征を繰り返し、略奪から戻ってきたら定住地で冬を越して雪解けを待ったそうです。

奴隷制度

ヨーロッパでは古代ギリシャの時代から奴隷制度が一般的でした。ヴァイキングにもその文化は根付いています。彼らは侵略した村や国の人々を「戦利品」として持ち帰り、自分の家で使役するか、奴隷商人に売り飛ばしていました。
奴隷を奴隷市場に売り出すときは見栄えを良くするために、川で体を洗い、女性は化粧をし、食事を取らせ、少量のお酒を飲ませるという描写もされていてとても興味深いです。

ヴァイキングの死生観

ヴァイキングの戦士にとって、最高の栄誉とは戦って死ぬことであったと言われています。彼らは戦って死ぬことでヴァルキリーによってオーディンの宮殿である「ヴァルハラ」に迎え入れられ、昼夜を問わず戦と饗宴が催されます。
最高の死後の世界に行くことを目指し、ヴァイキングは日々戦いに明け暮れたのです。死を恐れない彼らを周辺祖国の人々は恐れたと言われています。

北欧神話とキリスト教

本編で遠征先のイングランドやフランスなどで信仰されているキリスト教徒を馬鹿にする描写がある通り、北欧神話を信じるヴァイキングはまったく別の価値観、行動理念で動いています。
しかし、クヌートだけはその考え方に興味を示し、少しずつ理解するにつれて、自分だけの考えにたどり着くことになります。そして、自ら「地上に楽園を作る」という目的を持つようになります。

ヴィンランド・サガの魅力④ 作中は名言だらけ!

カネの奴隷がムチ持ってカネで買った奴隷に主人ヅラしてやがんの 自覚がないだけなのさ。 人間はみんな何かの奴隷だ。

頭の良いアシェラッドならではの言葉ですね。「人はみんな何かに依存して支配されている。でないと生きていけないのが人間だ」。アシェラッドは普段ヘラヘラしているだけですが、何気なく言われた本質をついた言葉にドキッとしてしまいますね。

お前に敵などいない。誰にも敵などいないんだ

父トールズの教えでもあり、この物語で非常に重要なテーマでもあります。誰が敵なのか、誰が敵じゃないのか、そもそも敵なんか初めから誰もいない。理解し合うのに必要なのは暴力ではなく対話である、そう意味なのでしょうね。

こんな剣に頼らざるを得んのはオレが未熟だからだ。本当の戦士には剣など要らぬ

こちらも重要なテーマとなるセリフで「お前に敵などいない。誰にも敵などいないんだ」につながる言葉です。「本当の戦士になれば戦う必要がない」深いセリフです。いくつもの戦いを乗り越えてきたトールズだから響く言葉でもあります。

ヴィンランド・サガの魅力⑤ [ネタバレ注意]トルフィンの人生を変えていく二人の死

トルフィンの物語は大きく二つに分けることができます。そして、その分岐点には二人の人物の死が大きく関わってくるのです。

まずは、トルフィンの父であるトールズの死。
彼の死によってトルフィンは「アシェラッドを討つ」という復讐を果たすためにヴァイキングの一員になります。
偉大な父の影を追いながらも、戦いの日々に明け暮れることになるトルフィンは、「誰にも敵など居ない」という父の教えとは真逆の道に進んでいくことになるのですが、怒りと憎しみに駆られた彼の頭では、なかなかその言葉を理解することは難しかったのでしょう。

続いて、父の仇であるアシェラッドの死。彼を倒すことだけを人生の目的にしていたトルフィンにとって、アシェラッドの死はとても大きなものでした。また、初めの内は「憎き仇」だったアシェラッドも、徐々にトルフィンにとって乗り越えたい大きな存在になっていったのではないかと思います。
アシェラッドも、トルフィンを気にかけてやるようなセリフが多く、父の命を奪うことになったトルフィンの父親代わりのような役割になっていきます。
そんなアシェラッドを失ったことにより生きる目的を失ったトルフィンが、「理想の国」ヴィンランドを建国するために立ち上がっていくのす。

決意が漢たちの人生を変えていく……

トルフィンとクヌート、2人が目指す「理想の国の建国」という考えに至る過程・方法はまったく異なります。しかし、2人の決意がヴァイキングや周辺諸国を巻き込んでいく新章は戦いばかりの前章とまったく違うテイストの物語になっています。
果たしてヴィンランドを作ることはできるのか、今後も目が離せませんね!