【007 私を愛したスパイ】あらすじ&ネタバレ紹介!シリーズ最高のコミカル&アクションが炸裂!

オリジナルストーリーへの移行やR.ムーアの魅力開花など、シリーズを通して見た場合の『007 私を愛したスパイ』の持つ意味は大きいです。悪役・ジョーズの出現、新ボンド・カーの登場など見所が満載の同作品。見直すには、いい機会だと思いますよ!

ソ連スパイと共同戦線!パートナーはトリプルX

消えた原潜を追って英ソはそれぞれのエースを投入!



核ミサイルを搭載したソ連の原潜「ポチョムキン」同英国の原潜「レンジャー」が、それぞれ行方不明になりました。犯人(組織)の目星は皆目見当がつかず、要求すらない状態です。また事件の狙いが掴めないので、英ソともに対策すら立てられない状態でした。

両国ともに事の真相を掴むとともに、原潜を取り戻すために投入したのがMI6(英国)ではコードネーム「007」ことジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)、ソ連情報部ではコードネーム「トリプルX」ことアニヤ・アマソワ少佐(バーバラ・バック)でした。ここに東西の壁を乗り越えた最強の布陣で諜報活動を繰り広げる事となったのです。

(ここに米合衆国が直接的に加わらなかったのは、政治的配慮と思われます)

このような壮大かつ奇抜なアイデアの中、『007 私を愛したスパイ』(1977年)の物語は展開して行きます。

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今作のオープニングストーリーはアニヤとボンドが緊急の呼び出しを、それぞれ受ける事から始まっています。アニヤは恋人でもある同僚の諜報部員から「今度はオーストリアだ」と言われて、それぞれの任務に就く事になります。

呼び出しを受けた本部で、「ポロソノスがオーストリアで任務中に死んだ」とアニヤは告げられました。その任務こそが、休暇中にオーストリアに訪れていたボンドの暗殺だったのです。その雪山(写真・下、イメージ)での危機を、ボンドはスキーで切り抜けます(ボンドは呼び出しを山荘で受けて、スキーで下山する途中に襲われました)。

最後は断崖から谷底へダイブ、そこで開いたのがユニオンジャックのパラシュートでした。映画史上に残る有名なスキー・シーンです。この作品への“気合いの入れ方”が伺えるいいシーンだったと思います。

【007 私を愛したスパイ】ジョーズも初お目見え!魅せるキャストが勢ぞろい!

シリーズ中、突出した悪役・ジョーズ登場!

M役のバーナード・リー、Qのデスモンド・リュウェリン、マニー・ペニーのロイス・マクスウェル、ソ連のゴゴール将軍のウォルター・ゴテルのレギュラーメンバーは、今作でも健在です。ここでのQは新ボンド・カーを届けに、エジプトまで出張しています。

ボンド・ガールはバーバラ・バックで、エキゾチックでクールな女スパイを見事に演じています。後に彼女は『おかしなおかしな石器人』(1981年)で共演した、元ビートルズのリンゴ・スターと結婚しています。

敵役・ストロンバーグ(ケルト・ユルゲンス)秘書役のナオミ(写真・上)を演じたキャロライン・マンローもイイですね。ヘリコプターを扱ってボンドを襲撃するも、ボンド・カーが放った対空ミサイルの餌食となり、出番は少ないですが、その野性味と美貌のアンバランスさが印象的でした。



そして、何と言っても今キャスティングの一番の収穫は、ジョーズ役のリチャード・キール(写真・下)を得た事ではないでしょうか。“何でも食いちぎる鋼鉄の歯”を持つ巨人なのですが、非常さに徹するわけではなくて、愛嬌ある仕草を垣間見せたりしてくれます。

その行動は次作の『ムーンレイカー』になると、もっと分かりやすい姿を見せてくれるので要注目です。筆者の中では、このジョーズと『ゴールドフィンガー』のオッドジョブ役のハロルド坂田が、シリーズベスト悪役(用心棒役!?)の両巨頭です。

【007 私を愛したスパイ】消えた原潜の謎を追い、ボンドはカイロへ!

遺跡をバックにしたアクションシーンは秀逸!



ボンドはエジプト・カイロへ飛び、そこで事件のあらましを聞き、ソ連と合同で調査することを知らされました。アニヤも同様です。事件のキーマンとクラブで待ち合わせて情報を入手、エジプトの遺跡を背景にした銃撃・アクションがスクリーンに広がります。

どうやら巨大海運会社を擁するストロンバーグが怪しいようです。新造船「リバラス号」の船首部分の形状がおかしいのです。原潜3隻は有に入れられるだけの広さがあるので、船首から原潜を丸ごと飲み込んでしまう事も可能なのです。

まずはボンドとアニヤは身分を偽り、ストロンバーグと彼の洋上(潜行可能)の要塞「アトランティス」で面会を果たしました。そこで、ストロンバーグの“海からの世界制覇”構想を聞きます。狂気じみたストロンバーグを演じた、クルト・ユルゲンスの力量が光りました。

【007 私を愛したスパイ】ジョーズの活躍!新ボンド・カーも大爆走!

英国車の威信をかけて「ロータス・エスプリ」は突っ走る!



ボンドとアニヤが要塞・アトランティスからの帰り際に、ストロンバーグは「殺せ!」と指示を出しました。ボンドらは陸揚げされたばかりの新ボンド・カーに乗り込み、後は新車で逃走です。

このボンド・カー、元々がロータス・エスプリですから、性能はピカイチです。1977年のロータス車(英国)といえば、まだバリバリにF1を走っていた頃ですから、ジョーズが追いかけて、拳銃で狙いをを着けても(写真上・右)思うようにいくわけはありません。

今でこそ、タイアップの関係他でボンド・カー=英国車という図式は成り立ちませんが、この頃はまだ装備品その他には、できるだけ英国製を使っていました。スーツ、帽子等々。クルマに関していえば、性能面でも抜きん出ていたので、“英国情報部”が使うアイテムとしては、至極当然な流れではありました。

ジョーズを中心とした路上での追っ手に対しては、絶大な優位性を見せていたロータス・エスプリですがナオミがヘリを操って上空に現れた時は「ボンド、危うし!」な場面に急展開です。いくら最新装備を随所に装着した新兵器でも、空からの機銃掃射には分が悪すぎます。

しかし、ボンドは慌てません。アニヤに「泳ぎは、できる?」と聞くと、クルマごと海中へダイブしました。ナント、この新ボンドカーは“水陸両用”だったのでした。そして、潜行するだけではなく、モニターでナオミのヘリをサイト・インしています。

そうです、対空ミサイルも装備していたのです。その発射ボタンを押したのは、アニヤでした。「二年前に設計図を盗みだしたのは、私よ」だそうです。

キャスト紹介でも記した通りに、ナオミのヘリが撃退されました。ボンドは「潜ったついでに、ストロンバーグの要塞を見て行こう」と海中から偵察(写真・中)をします。

ジョーズ、ナオミと子飼いの部下を使って自分達を抹殺しようとした事で、ストロンバーグは自分の正体を明かしたようなものです。「新しい秩序ある世界を創る」だとかキレイ事を並べても、「海からの世界制覇」を真剣に狙っているのが浮き彫りにされたわけです。

筆者は、「スペクター以外にも、凄い奴がいるものだなぁ」と、ロードショー公開時には思ったものです。

※なお、ロータス・エスプリが陸に上がる時に、ボンドは窓から魚(種類は不明)を砂浜へ落として行きます(写真・下)。このような、ユーモラスなシーンが登場したのは今作からだと記憶しています。

巨大タンカーから脱出!アニヤ救出へボンド奔走!

核ミサイルでの同時テロをボンドの機転で阻止!



英ソの原潜を核ミサイルごと強奪したのがストロンバーグだと分かった以上、手をこまねいて見ているわけにはいきません。ボンドとアニヤは、アメリカ海軍の原潜に乗り込んで、自国の原潜を取り返すためにストロンバーグの巨大タンカーに接近して行くのでした。

しかし、このタンカーの予想外の機動性に幻惑され、米原潜もレンジャー、ポチョムキンと同様に拿捕されてしまいます。これで、タンカー内には米英ソの3隻の原潜が並ぶ事になりました。蛇足ですが、このシーンの撮影のために、特別の専用スタジオを新たに造ったとか。

ドック内での撮影シーンには、あまりにも空間が広いために照明には苦労した事でしょう。ここでも、並々ならぬ新ボンド作品(これまでのイメージを払拭した)への覚悟・姿勢を感じてしまいます。

ストロンバーグの要求は、彼に対する“全面降伏”です。それに従わない場合はニューヨークとモスクワ、同時に核ミサイルを発射すると脅し、実行してしまいました。英ソの原潜に自前のクルーを配備して、別々の場所へ移動、それぞれからミサイルを発射させたのです。

このピンチを救ったのは、ボンドです。それぞれの着弾地点のプログラムを変更して、各原潜を標的にして(相撃ちにする形で)難を逃れたのでした。残された3カ国のクルーを米の「リペラス」に収容して、今度はこちらからタンカーを攻撃(写真・中)して破壊に成功します。

残された任務は、アニヤを連れ去り、要塞アトランティスに逃げたストロンバーグの処分です。当然、要塞ごと撃沈すれば作戦終了となりますが、そこでボンドから「アニヤを助けてくるから、攻撃を待ってくれ」と“待った”がかかりました。



ボンドは「軍法会議ものだぞ!」と言われながらも60分の猶予をもらい、アニヤを救いに単身でアトランティスに向かいます。そこでボンドは、ストロンバーグと1対1で対峙します。恋人を殺されたアニヤも、ボンドの仕事ぶりを見て、気持ちが揺らいでいくのを感じはじめています。

その結果は、長いテーブル(写真・下)に仕込まれた特殊銃で撃たれましたが、その一弾をかわしてボンドは自分のワルサーで決着をつけました。ここに狂信的海運王・ストロンバーグはこの世から消滅しました。

ボンドはアニヤを助け出しますが、ストロンバーグ専用の脱出用カプセルで漂流する事になります。ボンドとアニヤはカプセルの中で愛を確かめ合うのでした……。

※このカプセルは漂流の後に収容されるのですが、覗き込んだ二人の上司があきれながら呟いてユーモラスなエンディングに仕上げています。「007め…」(M)、「トリプルXめ…」(ゴゴール将軍)と…

テーマ曲の大ヒット、OPロールの斬新な色彩感がファンを魅了!

新アレンジの「ジェームズ・ボンド’77」も劇中で流れる

『007 私を愛したスパイ』のテーマ曲はカーリー・サイモンが歌った『Nobody Does It Better』で、全英、全米ともに大ヒットしました。映画のタイトルをそのまま曲名にしていない、数少ない曲としても知られています。筆者個人的には、シーナ・イーストンの時よりも軽やかで良かったと思っています。

加えて、有名な『ジェームズ・ボンドのテーマ』を(公開当時の)現代版にアレンジした、『ジェームズ・ボンド’77』もリリースしています。シリーズ10作記念としての意味あいもありますが、この曲は劇中でも流れていて、“新しい007シリーズ”を印象づける事に成功しています。



同シリーズのファンは、『ゴールドフィンガー』の時からオープニング・ロールを楽しみにしている人も多いです。本編とは違った事件を解決して、「次の指令に取り掛かろうか」というタイミングで流れるOPロール。期待感いっぱいでワクワクしてきますよね。

今作では、ロジャー・ムーアのシルエットが優しく感じました。イメージがソフトなんでしょうね。それと、「濃いのに淡い」「サイケデリック調を意識した色遣い」等、やはり完成度は高いです。OPシーンのみ(ドラマ部分も含む)で構成された、公式スペシャル・バージョンを観たいものです。

手探り状態から新ボンド像を確立した作品

3作目にして「ボンド役」を自分のモノとしたR.ムーア

ロジャー・ムーア“ボンド”の3作目が、この『私を愛したスパイ』でした。ここから、ロジャー・ムーアは自分なりの“英国スパイ”像を確立していったのだと思われる節が多く見られます。ともすればコミカルな印象しか与えない、ロータス・エリートから魚を落とすシーンやラスト・シーンでの“おとぼけ”なポーズ等を堂々と演じ、逆にスマートでお洒落なモノにしていました。

ロータス・エリートでの海中回遊は『サンダーボール作戦』から、冒頭でのスキー・アクションは『女王陛下の007』から。それぞれ美味しいどこ獲りをしつつも、「自分なりのボンドとして昇華」させていった努力には脱帽ものです。

先ごろ、89歳で天寿を全うされたムーア卿。「素晴らしいボンド像」をありがとうございました。ご冥福を祈ります。

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