白黒映画とカラー映画の時代をまたいだ伝説的な日本の映画監督、小津安二郎。戦時中は軍報道部の映画班でハリウッド映画を多数鑑賞したという映画人らしい経歴を持つことでも有名です。日本だけでなく世界でも有名な名監督の作品をおすすめ映画ランキングとしてまとめました。
目次
監督・小津安二郎とは?
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— ぴあ映画生活 (@eiga_pia) 2017年7月13日
小津安二郎監督の作品を知らない人も結構いるのではないでしょうか。ランキングをご紹介する前にまずは小津安二郎監督がどんな人物なのか簡単にご紹介したいと思います。2015年に原節子さんと言う国民的大女優が亡くなったニュースが話題になりましたが、この女優のヒロインの映画をとっていた人です。
小さい頃に「シヴィリゼイション」と言う映画に憧れ映画の道を志し、蒲田の松竹で撮影を始めました。戦時中も映画班として従軍し、多数のハリウッド映画を見たと言います。世界的に有名な東京物語などまだ白黒の映画もたくさんあります。
戦後母と鎌倉と暮らしたエピソードや鎌倉文化人との交流の多さ、カメラを固定しアップもしない「小津調」と呼ばれる撮影技法に象徴されるように、事物よりも人物に注目し、俳優や女優を生かした撮影が得意な監督です。人望厚く国民誰からも愛された小津さんの作品をランキングにしました。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第12位
彼岸花
小津安二郎作品でおなじみ、桜むつ子。『東京物語』『彼岸花』『浮草』。ほか『東京暮色』『お早よう』『秋日和』に出演。 pic.twitter.com/j0Tl4lMLRL
— ジャクジャク:関連 (@jakjakh24) 2017年7月18日
こちらは小津安二郎監督の初めてとったカラー映画です。日本の富士フィルムもカラーフィルムを出していましたが、小津監督は自らドイツ製の赤の発色がいいものを選び、舞台の小道具も赤が多用されていると言うほどこだわり深い作品。
あらすじは主人公平山渉は同僚に娘が家出をして男と暮らし、バーで働いているからさりげなく様子を見に行って欲しいと頼まれる。そんなところ他人事ではなく自分の娘にも縁談の話がくる。戦争が済んでこれから明るい時代がくると同時に、価値観や生き方も新しい時代に入っていく様子を生き生きと描いています。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第11位
大人の見る絵本 生れてはみたけれど
今気付いた。『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』の長男役やった菅原秀雄くんって『東京の合唱』の息子だったのか。WW2突入した後の消息が不明で戦死してしまったという説もあるとか… pic.twitter.com/xuGlHpDHlC
— Yoko (@YokoT_T) 2014年7月31日
この作品はなんとなんと1932年の小津安二郎監督映画。監督のサイレンと時代の映画です。昔は白黒以前にサイレンと映画だったんですね。映画ってそもそも白黒以前はストーリーもなく、ただ街の生活の一部を写しただけだったんですね。小津さんの映画はそれからちょっと発達した時代に始まったんです。
いわゆる小津調の基礎となるような撮影方法が始まったのがこの作品で、フェードがなく、カットだけで繋いでいるんです。小津安二郎監督は基本的に時代を描きます。この作品はサラリーマン社会を生きる子供達を描いているわけですが、今見ても少し大げさかもしれないけれどほとんど一緒だとわかります。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第10位
浮草
DVD「 浮草 」 小津安二郎 若尾文子 https://t.co/CIXAbJkjzf pic.twitter.com/OVsWxbMr2V
— murasakiimo8 (@murasakiimo8) 2017年7月3日
こう見ると今も昔も日本映画のパッケージってあまり変わらないんですね。構図や人物配置、全てがこの時代の技術を踏襲しているので味の出し方や描写が似ています。こちらは小津安二郎監督が松竹で作っていた浮草物語をリメイクした作品です。
小津監督の故郷三重県で撮影したたった一つの映画であることからもファンが多いです。旅回りの駒一郎が毎年飯屋のお上との間にできた子供の様子を見にいつもこの港町を訪れていました。旅芸人のやくざ者に子を持つ資格はないと割り切る父と父を知らない子供の話です。親子関係がうまいですね。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第9位
戸田家の兄妹
家族を描くのが上手い小津安二郎監督。また東京を描くのも非常に上手いです。ある家族が一枚の記念写真を取るところから始まるこの作品はそんな小津監督が好きな二つのモチーフを使った作品。実は「この写真、母の還暦の記念写真でした。母親も小津監督の大事なモチーフです。
もちろん映画と言うものは脚本的に物語が半分きたら反転させなければいけません。この物語もこの記念写真を最後にこの微笑ましい家族が波乱に巻き込まれます。記念写真を残してから、実業家の父が死んで莫大な借金を残したことがわかります。母と娘たちは長男の世話になりながら東京で暮らすのですが..。家族の愛や遠慮ぶかさがうまく描かれています。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第8位
お茶漬けの味
白黒の画面だけ見るとなんとなく古臭くて見る気がなくすのですが、見てみるとそれが今でも新しい作品であることがわかります。映画や物語の作り方、人物の描き方、その全てが研究に研究を重ねた現代の作り手よりもはるかに優れているからです。情報のない時代にどうやって身につけてのでしょう。
サラリーマンの田舎から出てきた質素な夫は、上流階級出身の妻が退屈な夫の憂さ晴らしに友達と遊び歩いているのが知りながら触れずにいます。姪っ子がお見合いでやらかしたことをきっかけに喧嘩に、二人は別居するんですね。
そんな時に夫茂吉は海外勤務が決まるのですが、妻は無視。そのまま海外へ行ってしまうという夜。内心夫の帰りを待っていた妻は夜中に突然夫が飛行機のエンジントラブルで帰ってきて喜びます。二人はお茶漬けを食べながらお互いの内心を話し始めるのです。この映画が一番好きだというファンもたくさんいらっしゃいます。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第7位
秋刀魚の味
小津安二郎監督の遺作です。個人的には一番好きな映画で、初めて見た映画でもあります。いつの時代でも父親は娘に優しく、娘は父親を思いますが、父親はいつまでも孤独だという感じです。女優の原節子さんがそうした関係性を全て表現仕切っているので秀抜です。
小津安二郎監督の映画のいいところは無駄に現実をデフォルメしないところです。現実の悲劇は実際にもっと静かで、悪人もそれほど悪人できでない。この時代特有の演技っぽい演技もその点かなりリアリズムに見えてきます。
秋刀魚の味のあらすじは根気が遅れた娘を持つ父親の心境を描いた作品です。秋刀魚の意味はそんな父の分身。高級魚ではないけれど、若い頃は俊敏に泳ぎまわり波を切った輝かしい時代がある。しかし今は腹に苦い部分を持っているという父親の孤独を表現したものです。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第6位
風の中の牝雞
詩のようなタイトルがつけられていることが多く、なかなか小津安二郎監督の作品を読解するのは難しいですね。しかもこの作品は小津監督自らあまりいい作品でないと行っています。ただこの作品は失敗作と呼ばれるだけあって注目度の高い作品です。
失敗と言われて原因は時代に迎合したと言われたから。太平洋戦争直後の東京の下町を舞台にした映画ですが、子供の病気のために一度だけ不貞を犯した妻を巡って夫婦の苦しみを描きます。この作品で脚本家と小津監督が納得いかなかったことがのちの「晩春」につながっているので重要な作品です。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第5位
麦秋
節子さんの当時の出演料は大卒の初任給が6500円の時代に300万越え
しかし「原節子でなければ、この映画麦秋企画自体を没にする!」と小津は激怒しました
これに原節子も応えます。「私は小津先生の映画なら出演料はいくらでも良いですから出たいです」
晩春の紀子役には共感してなかったけど pic.twitter.com/H77Q2mDRWO— ゆきちゃん (@marinamiries) 2017年6月27日
麦秋というタイトルの意味がまたわかりにくいですよね。英訳は「アーリー・サマー」つまり黄色い麦がで始めた夏の終わりということで、秋の始めという意味なんですね。この作品の主演もやはり原節子さんです。海外での評価も非常に高い作品です。
北鎌倉に住む間宮家で婚期を逃している娘に気がかりな家族、そんなところに突然縁談がたくさん入っていく話です。タイトルはそんな娘紀子に遅れてきた春を表現しています。映画も小説も物語はみんな詩だと思いますが、これを理解する楽しみが小津作品にはあるんですね。ぜひ原さんの出てるのは見て欲しいです。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第4位
お早う
小津作品『お早う(’59)』: 佐田啓二は、いま見ても美男子。「雑誌社が潰れてから、ルンペンですからね。何でもやりますよ」ー「助かるなぁ。次々」。華があると〈映画〉も活きてくる。 pic.twitter.com/yeMT7zh0fO
— daisukiなものに触れたい (@shou7874) 2015年12月16日
佐田啓二という役者さんがかっこいいですね。音楽も戦後日本音楽を代表する黛敏郎さんです。東京物語が世界的に成功して紫綬褒章を獲得した後に作った作品でもあります。なので特に注目されましたし、ちょうど50作品目の作品なんですね。
小津映画は芸術映画だから見づらいという方もいると思いますが、実は芸術的な映画を作る人ではなく、ひどく日常的なドラマを職人的に作る人って感じです。この映画もコメディタッチに郊外に住むある家族のありふれた日常を描きます。突飛なものを描くよりこういう些細なことを描く方がはるかに難しいとわかりますよね。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第3位
秋日和
こちらは1960年に公開された小津安二郎監督の作品。だんだん映像が現代に近づいてきました。いわゆる紀子三部作え有名な原節子さんが母親役を演じる作品。3つの作品は紀子という同じヒロインの名前で統一されており、この作品を紀子三部作と言います。
夫の7回忌に集まった夫の友人たちに、未亡人秋子と24歳になった娘が二人きりで暮らしているのを心配して縁談を持ち込む話。娘は自分が結婚すると母が一人になるのが気がかりで結婚に前向きになれません。かつて原節子さんがやっていた役所でしたが、今度は母親役として演じているのが見所です。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第2位
晩春
キネマ旬報で一位を獲得し、批評家が選ぶ史上最高の映画でも15位に入っている日本を代表する名作です。海外でも小津安二郎をあげるならこの映画だという方も多いと思います。なのでランキングには当然2位にしました。
この作品は小津監督が初めて娘を嫁に出す系の映画を撮った作品でヒロインはやはり原節子さん。先ほどの麦秋と東京物語を含んで紀子三部作と言います。この影響で紀子と娘に名前をつけた方も多いのではないでしょうか。
主人公の周吉は大学の教授ですが、娘が婚期をすぎても結婚できていないのが気がかりです。そこで父は娘に心配をかけないように自分も再婚すると娘にいうのですが、これにショックを受けてしまうんですね。結局娘は結婚にいきますが父親の悲しみといったら…。父親ならぜひ見ていただきたい映画です。
小津安二郎監督のおすすめ作品:第1位
東京物語
小津安二郎の映画を見ると、つくづく家族っていいなあ、人間っていいなあと日本昔話的感慨を覚えます。ランキング一位に輝いたのはもちろん東京物語。やっぱり原節子さんがヒロインの映画ですね。尾道に住む老夫婦が東京に住む子供を尋ねる話です。
子供はもう成人して嫁さんもいます。しかし東京に暮らす子供は日々の生活に忙しく、せっかく訪ねた親を持て余してしまうんですね。そんな二人の面倒を見てくれたのが原節子さん、おっと、でなくて未亡人の紀子さん。いやあ、原さん本当にお美しい。
老夫婦はこの後安心したのか帰った後になくなってしまうんですね。よく孫が生まれたり、息子たちの生活が進んだり、家の改築をしたりして若い人が動き出すとお爺さんお婆さんが亡くなるなんて言いますが、こうした二つの世代の橋渡しのような存在の紀子がとても面白い演技をしているんですね。
小津安二郎はここがすごい!
若い時はドーパミン欲しさに華やかな映画を好みますが、社会に出て自信や人間味が出てくるとこうした小津安二郎の作品が面白いと思うようになっていくものなのだと思います。なぜなら黒澤明監督のように男の子の好きそうな、万人の好きそうなテーマを拾わないからです。
映像も地味だし、そもそも動きが少ない。「これ動画だよっ」って言われてもわからないくらい動かない、とは言い過ぎですが。画がとてもシンプルです。しかしそれが一番映画的な撮り方で、必要なものだけ提示して、後は見る人の想像に任せているからです。
ここまで描かなくてもいいんじゃないかという無駄の多い作品は多いですが、それは素人の発想で、上手い人ほど短く的確に作るのが名監督というものです。なので人生経験が増えてくると画以上に見るものが多い。想像で補った映画がそれぞれの小津作品となっていくので、一つ一つが感慨深いかけがえのない作品になるんですね。