「言の葉の庭」をネタバレありで徹底解剖!オススメしたい魅力まとめ

独自の表現力で観るものを魅了する作品を生み出すアニメーション作家・新海誠さんが監督の『言の葉の庭』は、憂い漂う恋の物語です。新緑の季節に相応しく、透明感のあるこの映画の魅力について迫りたいと思います!

異色の恋を描く映画『言の葉の庭』とは?

アニメーション作家・新海誠が描く

「言の葉の庭」は2013年に新海誠監督が発表した、アニメーション映画です。新海誠監督と言えば、「新海ワールド」とも呼ばれる繊細で精彩な描写が有名で、その美しい作風に誰もが目を見張りますよね。「言の葉の庭」にも、その美しいタッチが見事に現れています。
主人公は秋月孝雄(あきづきたかお)【タカオ】と言う名で、靴職人に憧れる15歳の高校一年生です。そしてヒロインは雪野百香里(ゆきのゆかり)【ユキノ】で、27歳の教師です。以前はタカオの通う高校に勤めていたユキノですが、教え子に嫌がらせを受けた結果、退職に追いやられます。
雨の日は授業をサボって庭園で靴のデザインを考えるタカオですが、そこである日に朝っぱらからチョコレートとビールを飲食するユキノに出会います。ここから雨の日限定の二人の逢瀬が始まります。

『言の葉の庭』の登場人物① 男子高校生の秋月孝雄

靴職人を目指す高校一年生

秋月孝雄は本作の主人公です。両親は離婚していて父親はおらず、母親は酒と奔放な愛に溺れているため家庭環境が複雑で、苦労を強いられています。割と早くから将来について真面目に考えており、バイトで学費を稼ぐ好青年です。
空の匂いを運んでくれる“雨”が好きで、雨の日はいつも庭園に行き靴のデザインを描いています。中々に感性が鋭い印象を受けますね。感受性の豊かさが、靴のデザインにも活かされているだろうと思われます。
そんなタカオは、初めて会った時は庭園でチョコを食べビールを飲むユキノを訝しみますが、会う回数を重ねるうちに次第と打ち解けてゆき、ユキノに惹かれていきます。そう、気が付けば雨を祈るほどに・・・。

『言の葉の庭』の登場人物② ヒロイン・雪野百香里

雨の中、庭園で出逢う年上の女性

雪野百香里は本作のヒロインです。初登場シーンが雨の中一人でビールを飲む姿だったので、観ていて衝撃を受けた方も多いはずです。しかし実際はとても優しい心の持ち主で、経緯があって庭園に訪れています。
タカオが通う学校の古典教師なのですが、一部の生徒に酷い嫌がらせを受けて、居場所がなくなってしまいます。そして、学校へ向かうのが怖くなってしまうのです。しまいには味覚障害まで引き起こしてしまいます。それで、唯一味のするビールやチョコを食べていた訳です。
「どうせ人間なんて、皆どっかちょっとずつおかしいんだから」と、少し自暴自棄になっていたユキノですが、タカオと交流する中で心に陽が射し始めます。そして味覚が戻り始めて、タカオが作ったお弁当の味は感じられるようになります。

『言の葉の庭』は「万葉集」がモチーフ

作品に登場する短歌

初めてあった日の別れ際、ユキノは短歌を詠い残し去っていきます。その短歌というのが「鳴る神の少し動(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ」というものであり、これは万葉集に記されている和歌です。
ユキノは短歌を詠むことで、名残惜しさを表すとともに自分が古典教師であることをタカオに気付かせようとしましたが、タカオが気付く事はありませんでした。しかしタカオの古典担当教諭は別人なので、これは仕方ないですね。
少し時が流れ、廊下ですれ違った事で互いの関係に気が付いたタカオは、再び庭園で出会った時に「鳴る神の少し動みて降らずとも我は留らむ妹(いも)し留めば」と返歌するのです。短歌を入れてくるあたりは渋い演出ですね。

『言の葉の庭』の魅力① 繊細で仄かな恋

心の揺れを確かに描く

「言の葉の庭」には絶えず切ない雰囲気が漂っていますが、それは偏(ひとえ)に二人がそれぞれ不安や悩みを抱えており、しかしだからこそ巡り合い始まった恋がまた、教師と生徒という関係性がもたらす見えない壁に阻まれているからだと思います。
返歌をしたその日は土砂降りで、二人はずぶ濡れになってしまいます。急いでユキノのマンションへと避難したタカオとユキノは、部屋で一緒に食卓を囲みます。料理は学費を稼ぐため飲食店でバイトするタカオが作ります。
ここで二人は、温かいご飯を食べるという素朴な行為に幸せを感じて、心までもが温まるのを感じます。そして、「今まで生きてきて今が一番幸せかもしれない」と複雑ながら心を通わせるのです。

『言の葉の庭』の魅力② 色彩豊かな映像美

様々な雨を丁寧に描く

この作品は雨の描写がとても多く、それらが色彩豊かに描かれています。始まりの季節が梅雨であるというのもありますが、夕立、天気雨、雷雨など、そのシチュエーションは様々です。
この雨が「言の葉の庭」において重要な役割を果たしている事は、言わずもがなだと思います。タカオとユキノが関わり合う中で変化する心情を、天候という背景を用いて上手く表現しているからです。丁寧なアニメーションの賜物と言えますね。
地面に打ちつけられる雨粒は活き活きと描かれ、陽射しと共に架かる虹は透明感に溢れています。「言の葉の庭」を観る上では、雨は必ず注目してみてもらいたい大事なポイントです。映像美の素晴らしさに息を飲んで下さい。

『言の葉の庭』の魅力③ 声優と音楽が奏でる音色

言葉とメロディーが心に届く

秋月孝雄の声を入野自由さん、雪野百香里の声を花澤香菜さんが務めています。淀みなく放たれる言葉に声優さんのすごさが知られます。そして作中にはピアノ曲が挿入されていて、その音楽が映像とマッチしています。
感情豊かな言葉の連なりがダイレクトに胸に飛び込んできますので、アニメーションの世界にどっぷり浸れます。そして、流れる「Swan Song」と言う音楽は、KASHIWA Daisukeさんが、作詞・編曲しています。
綺麗な映像に綺麗な音楽、そして綺麗な声と、無駄なものが何もなくて圧巻ですね。新海誠監督の真髄が、この「言の葉の庭」には確(しか)と込められています。ヒットを飛ばしたのも納得ですね。

『言の葉の庭』のエンディングテーマ

「Rain」の魅力

エンディングテーマ「Rain」は作詞・作曲を大江千里さんが行なっており、秦基博(はたもとひろ)さんが歌い上げています。Rain=雨なので、雨の描写の多い「言の葉の庭」とぴったり重なりますね。
曲調はゆったりとしながらも、先を歩むことを急かす様な歌詞になっているので、雨の雰囲気とも相まって、地道に前向きに人生を歩むことの大切さが伝わってきますね。秦基博さんの歌声がとても温かいです。
しかし、こればっかりは自分で聴いた方がどんな説明よりも早いと思いますので、是非聴いてみて下さい。「言の葉の庭」を観た後に聴くと、情景が浮かんでより楽しめると思いますよ!

『言の葉の庭』に主題歌はない?

イメージソングとBGM

単刀直入に言いますと、「言の葉の庭」には主題歌がありません。なので物語の前に歌が流れたりはせず、そのまま始まります。「言ノ葉」と言うイメージソングは存在しますが、これは本編劇中では使用されません。
そしてBGMが「Swan Song」ですね。このBGMの使い方がとても秀逸です。ある場面ですが、BGMと共に時の流れが描かれるんですね。映像にはタカオとユキノが映し出されています。
そこには出会いを重ね徐々に打ち解けていく二人が映し出されていますが、その会話は視聴者には届きません。BGMのみが流れ、二人が談笑したりする映像がスライドショーのごとく映し出される様子は、観ていて新鮮でしたね。

ストーリーの先を読み解く

『言の葉の庭』のその後

「言の葉の庭」は登場人物が少なく、その中でも焦点がほぼタカオとユキノにしかあたらない為、プロフィールを深掘りしたく思う脇役キャラクターが結構いるんですが、そう言う方は小説版を読むと良いと思います。
小説の「言の葉の庭」はサブキャラにも焦点が当たっているからです。さて、含みを持たせたまま終わりを迎えた映画「言の葉の庭」ですが、その後についてのエピソードが小説には描かれています。
時が経ち成長したタカオは、再びユキノに出会うことを叶えるんですね。しかし、関係性においては確たる進展は見られません。それでも、結ばれるかどうかはさて置き、互いに歩みを止め無かったからこその再開な訳で、物語は良い方向へ進んでいると思います。

『言の葉の庭』の評価

話題性やクオリティー

話題性において「言の葉の庭」は上々であると考えられます。公開直後から観客動員数の伸びが勢い良く、初期から評価が高かったこともそうですが、2016年にリバイバル上映されたことにも価値があります。
古いものが見直されて再評価されることはままありますが、「言の葉の庭」もそれに当てはまると思います。テレビ放送も行われましたし、映画館へ足を運んでいなくとも「言の葉の庭」に親しんでいる方は多いのではないでしょうか?
クオリティーに関しては、文句の付けどころが無いでしょう。「新海ワールド」を存分に発揮していますし、揺れ動く心境なども見事に表現されています。新海作品の中でも一番好きなのは「言の葉の庭」と言う人も多いと思います。

是非『言の葉の庭』を観て欲しい!

新時代の映像文学

アニメーションの美しさと内容の素晴らしさ、この二つが融合した「言の葉の庭」はまさに新時代の映像文学と言えるでしょう。私は特に内容に強く惹かれました。ラストの互いに秘めた思いをぶつけ合うシーンは最高です。これが胸熱でした。
教師と生徒という関係性の中にあって、互いに通じ合うものがあるのに一歩踏み出せない煩悶の中、ついにタカオが不満をぶつけるシーンです。吐き出す様にして飛び出した思いがユキノの閉ざした心の殻を一枚破り、本当の気持ちを交わし合うところはとても良かったです。
それは恋の成就でなくとも、二人がより深く通じ合うためには必要なことだったと思います。そして、タカオとユキノは気持ち新たに歩み出します。「言の葉の庭」を観れば、同じ様に自分自身も前に進みたくなるはずです。この素晴らしい作品にぜひ触れてみて下さい。
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