『じゃりン子チエ』は猫漫画の金字塔!猫好きなら読むべき魅力まとめ

『じゃりン子チエ』ははるき悦巳作の、大阪を舞台とした人情漫画である。遊び人で乱暴者の父親・竹本テツ、良妻賢母のヨシ江の間に生まれた元気な小学五年生、チエがダメな父親に代わってホルモン焼き屋を切り盛りする物語だ。

・猫漫画の金字塔「じゃりン子チエ」の魅力!

1978年に連載を開始した本作、1981年にはアニメ化もされ、一時期の関西では再放送が繰り返されていたため、チエちゃん一家は大阪人にとっては『サザエさん』一家よりも『ちびまる子ちゃん』一家よりも『しんちゃん』一家よりもお馴染みの一家なのだ。
さて、しかしそんな『チエ』の真の主役とも言えるのが小鉄アントニオJr.という二匹の猫。テレビアニメではそれぞれを名声優の永井一郎太田淑子(初期は山ノ内真理子)が演じ、それぞれ唸るような名演であった。ここでは、そんな二匹の活躍を中心に、本作を紹介してみよう。

・小鉄とアントニオJr.の微妙な関係とは?

小鉄は竹本家の飼い猫。そしてアントニオJr.はテツの友人であるお好み焼き屋、百合根の飼い猫だ。しかし、この百合根は元はと言えば博打屋を営んでおり、テツはそこの常連客。負けてもカネを払おうとしないテツに、百合根が差し向けたのがJr.の父親、アントニオであった(何せ、この作品世界では猫は人間よりも遙かに強い!)。そこを返り討ちにしたのが竹本家で飼われて日の浅い、小鉄であった。
そこへJr.が、父親の仇である小鉄を狙って現れた。小鉄は愛猫家の百合根の想いを汲み、Jr.に叩きのめされながらも無抵抗で居続ける。百合根は極道ではあるが、同時に妻子に逃げられアントニオに愛情を注ぐ、孤独な中年男でもあったのだ。殺されそうになりながらも反撃しない小鉄に、その覚悟を知ったJr.も怨みを捨て、この時から二匹は親友となったのである。

・襲い来る強敵! 小鉄とアントニオJr.の華麗なる戦歴

二匹は作品世界で人間たちの営みを達観した視線から観察しているが、そんな合間に時おり、この二匹とゲスト猫たちとのドラマが差し挟まれることになる。一番多いパターンは、小鉄の旧敵が小鉄の生命を狙って出現するというもの。
小鉄は若き日には「月の輪の雷蔵」の名で数々の武勇伝を残した伝説の猫。若い頃の活躍を描いた外伝とも言うべき『どらン猫(こ)小鉄』も出版されており、そこでは小鉄が九州の炭鉱町で大阪のヤクザ猫、モヒカン親分と九州のヤクザ猫、西鉄親分との抗争に首を突っ込む姿が描かれている。(ただし、『帰ってきたどらン猫小鉄』では『チエ』連載終了後のエピソードが描かれている)

『チエ』本編の小鉄は既に年齢を重ね、戦いを嫌うようになっているのだが、それでもかつての因縁で、時おりライバル猫が姿を現し、小鉄は若い頃の責任を取る形で、様々な強敵とのバトルを繰り広げるのである。
ちなみに小鉄の必殺技は、(下品でスマンが)相手の金玉をもぎり取る、「必殺タマつぶし」。これは小鉄の三枚目的性格を表すと同時に、戦いを嫌い、若い頃の義侠心を嫌う心理をも表している。つまり、この必殺技は「男性性の否定」そのものでもあるのだ(と同時に、『チエ』全体を貫くテーマもまた、これであると言える)。
さて、そんな強敵たちの中でも最も印象的なのはアニメ第一期の最終エピソードにも登場した、スフィンクスの釜虎だろうか。アントニオの「竹馬の友」と名乗る彼もまたJr.同様にアントニオの復讐のため出現し、知恵の輪を武器に小鉄を狙うが、戦いの末に和解した。

作品後期のロックも印象深い。チエの友人として幾度か登場した米谷里子の飼い猫で、やはり小鉄の旧敵。しかし小鉄がチエを敬愛し、ナイトのように振る舞うのと同じく、常に里子を守ろうとする紳士猫でもあった。
他にも東京のヤクザに飼われていた高級猫のジェラール、巨大猫モービーディックとそれを付け狙うエイハブ、小鉄をリリエンタールと呼び、グライダーで空襲をかけてくるユンカースとその師匠、グラマン元帥、空手家・太郎丸(こっちは人間)の弟子猫・次郎丸、アントニオへの復讐戦を果たすために現れた車椅子の老猫・次郎吉など、印象的な猫は数え上げればキリがない。
そうそう、つけ加えておくとJr.の父親、アントニオもまた若い頃には勇名を轟かせており、ことに女性に対しては見境がなく、世之介と名乗っていたこともあるほどで(余談だが、実は「雷蔵」の由来と思しい市川雷蔵も世之介を演じたことがあった)Jr.も度々その尻ぬぐいに奔走させられるハメに陥るのである。

・二匹の友情は永久に?

ちょっと説明が遅れたが、上のエピソードからもご想像いただけるように、小鉄はある程度の年齢を重ねたオッサン猫。一方、Jr.は名前の通り青年猫といった風。落ち着いた小鉄に比べ、Jr.は春先になると哲学的な思索に耽ってノイローゼとなり、また一方、普段は若さから来るケンカっ早さ、軽率さを持った陽気なキャラとして描かれている。
そんな二匹がお互いをからかい、激しいツッコミの応酬をしつつもつきあい続ける様子が、本作の一番の見どころだ。基本は老成した小鉄には適わず、後塵を拝するJr.という図式ではあるが、時にはJr.の鋭いツッコミに絶句してしまう小鉄、といった一幕も見られ、二匹の丁々発止のやり取りは、見ていて本当に楽しい。
そう、『チエ』は猫をこよなく愛する作者によって描かれた。猫漫画の金字塔なのである。
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