岩井俊二の監督作品おすすめランキングTOP10!

日本映画界で次々と話題作を発表してきた監督・岩井俊二。独特の映像美や新鮮な若者の描き方は、ファンのみならず多くの人々を魅了してきました。そんな岩井俊二監督の代表作を個人的な好みでランキング形式でご紹介します。

多くのファンを魅了する独特の映像美。岩井俊二とは?

その作品に多くの人々が魅了される岩井俊二映画監督でありながら、ときに脚本や音楽まで担当することもある多才な人物として今や日本映画界で確固たる地位を築き上げている。ミュージック・ビデオの制作からキャリアをスタートさせ、その後ドラマや短編映画、長編映画とそのフィールドを広げ、日本以外のアジア圏でも人気のある映画監督として知られている。

岩井俊二の表現する世界の最大の魅力と言えば、「岩井美学」とまで言われる独特の映像美で、繊細で柔らかな色彩光のコントラストは幻想的であり、どこをとっても一枚の絵画のような印象を観る者に与える。そして、特異なカメラワークや独自の編集から生み出される登場人物、特に若者の揺れ動く心象風景や思春期の残酷な感情の表出などの描き方も岩井俊二ならではと言える。
さらには、自らの監督作品で使われる音楽の作詞作曲も担当し、その美しくも優しく切ない旋律は映像とシンクロするように溶け込んでいます。決して後味の良い作品ばかりではないものの、どの作品も観るものに強烈なインパクトを残すことは間違いない。そんな「岩井俊二ワールド」を心行くまで堪能できる作品を以下に紹介する。

岩井俊二監督作品おすすめランキングTOP10

第10位 Fried dragon fish

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データバンク会社のオペレーターとして探偵事務所に派遣されてきたプー(芳本美代子)は、成り行きで「ドラゴン・フィッシュ」という魚の盗難事件に関わることとなる。その魚が時価数千万円する「スーパーレッド」だとにらんだ探偵事務所の相田(酒井敏也)は、そのドラゴンフィッシュを横取りしようと企む。
調査の過程でプーは、ナツロウ(浅野忠信)という多くの熱帯魚を飼育する青年に出会い惹かれ始めるも、ナツロウの本当の正体は世界的テロリストに雇われた殺し屋だった……。そしてナツロウはプーのもとから姿を消す。

一時間弱の短い映画にも関わらず、静かな衝撃を受ける岩井俊二監督の初期の作品の一つ。浅野忠信を筆頭に役者の演技も素晴らしいが、その演技を引き出し、それを絶妙に映像に捉えたのも岩井監督の手腕だろう。
主題歌でもあるCharaの「Break These Chain」が流れるエンディングもまさにこの映画の雰囲気に完璧にマッチしている。ストーリー、映像、音楽が全て自然に融合する素晴らしく印象的な作品。メジャーな作品ではないかもしれないが、コアなファンが絶賛する岩井作品の一つである。

第9位 リップヴァンウィンクルの花嫁

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七海(黒木華)はインターネットであっさりと知り合った男・鶴岡と結婚することとなるが、披露宴に呼ぶ人数が少なく「何でも屋」の安室(綾野剛)に代理出席を依頼する。しかし、その結婚自体も義母の介入などで長くは続かず、離婚した七海は再会した安室の紹介で仕事を引き受け、真白(Cocco)という不思議な女性と出会う。
そして七海と真白の二人の奇妙な生活が始まるが、次第に真白の本当の姿が見えてくると、真白が抱える心の闇にも気づくこととなる。そしてそんな真白に対して七海は……。

三時間という長尺の作品であり、ファンタジーの要素も多いこともあり、岩井作品になじみの薄い層からの作品への評価は賛否が分かれる作品であるともいえる。だが、この作品もまたファンにとっては堪らない岩井ワールドといえる。辛辣でシュールな人間ドラマのようでありながら、不思議な登場人物たちが織り成す虚構の世界と現実の世界が入り混じった不思議な感覚に入り込めれば、より深くこの映画を味わえるはず。
この作品でもやはり役者の作り出すキャラクターが魅力的に映像に描かれ、クラシック音楽とともに流れるストーリーは静かなインパクトを残す。余談ではあるが、安室や登場人物のハンドルネームなど分かる人にだけわかる小ネタを見つけるのもちょっと楽しい。

第8位 ヴァンパイア

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認知症の母と二人で暮らす生物教師サイモンには、誠実な教師としての仮面の裏側に「ヴァンパイア」としての本性があった。「自殺志願者」を見つけ出してはそれをほう助する形で血を抜き取り、飲んでいたのである。ある日、サイモンはまた「自殺志願者」を探したつもりが集団自殺に巻き込まれそうになり、そこで一人の女性と知り合い惹かれる。同時に自らの生徒ミナ(蒼井優)が自殺未遂を起こしていた。
女性と出会い、そして生徒を救うことでサイモンは変わり始めるのだが、サイモンの本性に気づいた警察に追われることとなってしまった。

日本・アメリカ・カナダの合作でもある本作品は、岩井俊二が監督・脚本・音楽・プロデュースなど一人九役を務めたまさに「岩井映画」。この作品も非常に淡々と静かな描写を中心に進むため、「ヴァンパイア」というタイトルで想像しうるイメージとは若干の相違があるかもしれない。
ただ、この作品も異質な存在である人物の苦悩や恐怖からの再生とでもいうべき奥深いテーマが作品を通じて感じられる。作品を全体を包む空気感、少々グロテスクな描写や倫理的な観点から、眉をひそめる人もいるかもしれない。それでも岩井作品を網羅したい人には欠かせない作品の一つ。

第7位 PiCNiC

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両親に見捨てられたココ(Chara)精神病院に入れられてしまい、カラスのように真っ黒な衣装はナースによって白い病衣に着替えさせられるも、気に入らないココは白い病衣を自ら黒く染めてはしゃいでいた。
その病院内でツムジ(浅野忠信)とサトルという少年と出会い意気投合したココは、ある日「もっと遠くへ行ってみよう」と塀つたいに外に出ると、ツムジと二人である教会にたどり着く。教会の牧師から貰った聖書を読みふけるツムジは「やがて世界は終わる」と信じるようになり、ココと世界の終わりを見に行く冒険に出る。

非情に暴力的で残酷なシーンも多くあり、それが苦手な人は中々ストーリーに入れないかもしれないが、描かれる世界は異国のような幻想的な非現実的な独特の空間。強烈なシーンの数々がありながらその映像世界はやはり岩井俊二独特のものを感じられる。
白と黒のコントラストや三人の登場人物それぞれの複雑な心情の表現などはまさにファンが期待するそのものではないだろうか。ラストの羽が舞うシーンは、美しさの中に物語のすべてが凝縮されたような切なさが漂い、何とも言い難い余韻を残す。

第6位 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

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小学六年生の典道と祐介は、大人びた美しい同級生の少女なずな(奥菜恵)恋心を抱いているもののその気持ちは隠していた。なずなは両親の離婚で2学期から転校することになっていたが、プールで競争していた典道と祐介を見て、二人の内勝った方と駆け落ちしようと密かに決めていた。
二人の勝負の後に、それぞれが勝った場合のなずなとのストーリーが、花火大会を通じて展開されていく。当初、テレビドラマとして制作された作品だが、日本映画協会新人賞を受賞した後に再構成され映画として公開された。この作品で岩井俊二は一気に知名度を上げ、映画進出のきっかけとなる作品となった。

この初期の作品でもやはり、岩井の映像へのこだわりが見られ「フィルム効果」と呼ばれる色調の調整などにより懐かしいフィルムように仕上げられている。そんな映像は昔を思い出すような郷愁感が醸し出されている。
そして、圧倒的な存在感のなずな(奥菜恵)の美しさを存分に引き出し、あの年代特有のまだまだ子供の男の子と、大人びた女の子の揺れ動く心の描写が素晴らしい。後にアニメ映画としても公開されるが、原作ファンの反応はイマイチ?か。どちらも比べて観ても面白いのかもしれない。

第5位 四月物語

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大学進学のため上京した卯月(松たか子)は親元を離れ初めての一人暮らしを始めるが、大学で知り合った友人や、隣人との関係など周囲を取り巻く新しい環境にドギマギの連続であった。そんな卯月は実は片想いだった先輩を追って武蔵野大学に入学し、その先輩がアルバイトをしているという本屋に足繁く通うのだった。
遂に先輩と再会するも緊張してうまく話せない卯月。それでも先輩と再会できたのは「愛の奇跡」だと信じていたのだった。

ごくごく平凡な田舎の女の子の片想いのお話は、若き日の松たか子の初主演作品でもあり、松たか子の初々しい新鮮な魅力が溢れる。恋している女の子の繊細な乙女心の動きを感じられ微笑ましくも温かい作品。
ストーリー自体はいたってシンプルで大きな波乱や目まぐるしいような展開はないので、映画としての評価は分かれるところ。しかし大人になって観てみると若者の純粋さや一途な想いが心に染みる。岩井作品としてその映像の美しさを感じるという意味では、桜吹雪や雨、傘といった特別でない風景ですら自然に美しいと感じられ堪能できる。

第4位 リリィ・シュシュのすべて

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中学生の雄一(市原隼人)星野(忍成修吾)アーティストのリリィ・シュシュを通じて仲良くなるが、成績優秀で優等生であったはずの星野は夏休み以降に豹変し、雄一をイジメ始める。そして星野は同級生を脅し援助交際を強要したり、雄一が密かに想いを寄せる女生徒を暴行したりと歯止めの利かない状況になっていく。
しかし雄一には星野を止める術はなかった。そんな中、唯一の心の拠り所であったリリィ・シュシュのライブのチケットを星野に奪われた雄一は、星野を刺してしまう。

イジメ、暴行、援助交際、リンチ、自殺などなど少年と少女のドロドロとした現実が描かれ純粋で後味の良いタイプの青春映画では決してない。しかし、程度の差はあれど、あの頃のナイーブで危うい感覚は観る者に何かを思い出させるかもしれない。
単純にイジメと自殺、いじめと復讐という構図だけでは括れないような含みを持っている作品であり、心の闇を抱える少年と少女が救いを求めているようにも感じられる。そしてこの作品も、若き役者達の才能を存分に引き出している。岩井自ら「遺作を選べるなら、この作品にしたい」とまで言った代表作である。

第3位 スワロウテイル

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「円」を求めて集まった人々が暮らす街「円街(イェンタウン)」では、命よりも何よりも円を稼ぐことが大事とされていた。その街で娼婦をしていたグリコ(CHARA)はある日、一人の少女を救い出し名前のない少女に「アゲハ」という名を付け、一緒に暮らし始める。
しかしある日、アゲハを襲おうとした男を死なせてしまう。そしてその男の体内からは一万円札を偽造するためのデータが見つかる。そのデータを使いイェンタウンの人々は一獲千金のチャンスを手に入れるが、次第にその偽造したお金がもとで不幸が訪れる。イェンタウンの人々とアゲハが選択したことは……。

豪華な出演陣の個性豊かな最高の演技と、劇中に流れる「イェンタウンバンド」の音楽。それらが無国籍のような不思議な世界観に完全にフィットしていてストーリーにどっぷりとハマれる。「汚らしい」美しさとでもいうような、カオスの中にも印象的なシーンが詰まっていて、どのシーンを切り取っても絵になる。
切なさ溢れる中にも、やはりこの作品でも芯のある強さを持った少女が描かれていて、岩井ワールドに酔いしれる素敵な作品。

第2位 花とアリス

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親友のハナ(鈴木杏)アリス(蒼井優)が高校に進学し、ハナは憧れの先輩・宮本のいる落語研究会に入部する。やがて、ある事故で記憶がもうろうとする宮本にハナは、自分が恋人であったと嘘をついてしまう。さらに、嘘がバレそうになるとアリスがかつて宮本の元彼女だと嘘を重ねる。
するとそれを機に宮本とアリスは急接近してしまい、三者三様の想いを秘めた恋の三角関係になってしまうが、やがてそれぞれが自分なりの答えを出そうとする。そしてハナとアリスは友情を再確認する。

中学生から高校生という思春期の恋と友情に揺れ動く心情をリアリティを持って描き、青春時代特有の人間関係が丁寧に綴られた作品。鈴木杏と蒼井優の演技は普通っぽくもありながら、切なさや悲しみなどの心象を上手に表現している。
ストーリーとしては青春時代の恋の三角関係と友情というシンプルなモノでありながら、やはり岩井俊二の演出による映像の美しさは顕在。二人の少女をより美しく、内容をより深く感じさせるものとなっている。個人的には蒼井優のバレエシーンの美しさが圧巻、女優の凄さを感じられる。

第1位 Love Letter

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婚約者の藤井樹が亡くなった博子(中山美穂)は、その三回忌に樹の卒業アルバムから彼が昔住んでいたであろう住所を知り、その住所宛に読まれることのない手紙を送る。しかし、なぜか戻ってくるはずのない返事が返ってくると、お互いを知らない二人の文通が始まる。実は、藤井樹には同姓同名の同級生(女性・中山美穂二役)がおり、その樹宛に手紙を送っていたのだ。
その二人が出会ったときに、博子は死んだ彼から選ばれたのは、彼は初恋の相手でもある同級生だった樹に似ていたからだと嫉妬し、樹(女性)もまた、彼の死を知り昔のことを思い出しながら、かつて彼が自分に抱いていた好意を知ることとなる。

岩井俊二の長編第一作にして、代表作とも言えるこの作品は日本の数々の映画賞を受賞し、国内のみならず韓国などでは大ブームを巻き起こした。舞台となった小樽には韓国人観光客が大勢訪問するまでになった。他の作品同様に、思春期の少年少女の素直になれないもどかしくも微笑ましい描写に、観る者は昔の自分を思い起こすかもしれない。
山に向けて博子が叫ぶ「お元気ですかー」の有名なシーンの他にも、印象的で心に残るシーンがいくつもある。かつて少年・樹が少女・樹に渡した本「失われた時を求めて」にはさまった図書カードに描かれていた少女・樹の絵を見つけた時の感激と寂しさや切なさの入り混じった表情が個人的には忘れられない。個人的には岩井作品の中でも絶対的なナンバー1の作品。

岩井俊二ワールドに酔いしれる

岩井俊二作品に共通している魅力はやはりその映像美だと改めて感じられる。ストーリー自体は決してハッピーエンドとは言えないもの、シンプルで目新しいとも言い難い作品も多くある中でも、映像や音楽でそれぞれの作品独特の世界を作り上げている。
その映像や世界観は観る人によってはストーリーよりも鮮烈に心に残り続けているかもしれない。そして、登場人物、特に思春期の少年や少女の捉え方も、観る者が懐かしさを感じられる演出がやはり多くの人に共感を呼んでいる理由の一つだと言える。

「岩井美学」とまでいわれる作品は、映像だけでも、音楽だけでもアートとしてもしみじみと堪能できるのではないだろうか。また、一度見たことのある作品も、観る者が思春期を過ごし大人になり、そして色々なことを経験することで、また違った印象を与えてくれるのも特徴だ。
ただただ切なかったもの、残酷に感じたものであっても、その中から新たに見えてくるものもあるかもしれない。