『ドラえもん』の怖い回ランキングTOP10! 国民的マンガのヤバすぎる一面

日本人ならば知らない人はいないであろう、故・藤子・F・不二雄原作の国民的コンテンツ『ドラえもん』。
もちろん本作はギャグ漫画なのだが、中には「コワい」話もあって、あの可愛らしいタッチで展開されるそんなストーリーがトラウマになっている人も多い。
ここでは「コワい『ドラえもん』」を十編、ランキング形式でご紹介していくことにしよう。

『ドラえもん』はコワい漫画?

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最近ではCG版の劇場アニメ『STAND BY ME ドラえもん』に「ドラ泣き」とキャッチコピーがつけられたりして「感動」に寄りすぎている感もあるが、『ドラえもん』はあくまでギャグ漫画。抱腹絶倒のギャグを楽しむことこそが正しい本作の楽しみ方なのである……とは言ってみたものの、実のところそのギャグも、感覚的に笑わせる種類のものではなく、巧みなストーリー構成によってもたらされるもの。
藤子・F・不二雄の本質はあくまでストーリーテラーであると言え、そしてそのストーリーテリング能力を「怖さ」の方へと舵を切れば、『ドラえもん』は一転して「コワい漫画」に変わるのである。その証拠ともいえるのが、以下に発表する作品群だ。
ちなみに各話の冒頭に掲載したのはその話が収録されたコミックスの画像。気になるものがあったら是非、コミックスで確かめてみて欲しい。

『ドラえもん』の怖い回:第10位「かげがり」

ぼくがぼくに乗っ取られる!?

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『ドラえもん』も初期作品はドタバタ色が強く、あまり恐い感じの話は少ないのだが、その中で例外といえるのがこれ。パパに言いつけられたお手伝いをやらせるため、自分の影を切り取って労働力に……というお話なのだが、この影は時間が経つにつれ自意識を持つようになり、やがては本物と入れ替わるという性質を持っていた。口を利くようになるなど影がだんだんと本物に近づき、のび太自身が影に近づく(色が黒くなっていく)中、「かげがり」が始まった……。

この自分自身(の分身)が自分自身を裏切るというモチーフ、実は藤子Fの作品には頻繁に顔を出すもの。タイムマシンで過去の自分と会い、ケンカをしてしまう「ドラえもんだらけ」「ぼくを止めるのび太」などもそうだし、また、自分の分身であるはずのロボットが反乱を起こす「ロボッター」や(『ドラえもん』ではなく、藤子不二雄初の単行本である)『UTOPIA 最後の世界大戦』といった作品が描かれているのだ。

『ドラえもん』の怖い回:第9位「悪魔のパスポート」

ママの怖い顔がトラウマに?

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何をやろうともそれを見せれば許される、水戸黄門の印籠以上の威力を持つ究極のアイテム、「悪魔のパスポート」。これさえあれば、小はスカートめくりやカンニングから、大は殺人や世界征服まで! 使用する瞬間、稲光と共に使用者の影が悪魔のシルエットと化すのが衝撃的。そして道具の効力が発動すると、ドラえもんまでが笑顔で悪事を許してしまうのが更にコワい!
『ドラえもん』にはこうした「良心麻痺」系とでも称するべき作品群もいくつかある。「本当に怖いのは、自分自身が良心を失ってしまうことではないか」といった問いを突きつけられているかのようだ。

調子に乗ったのび太は書店で漫画を盗んでしまうが、そこから良心の呵責に苛まれ、結局は自主的に返金することに。しかし、本話で一番コワいのは、冒頭でおこづかいの無断前借りをしようとしたのび太を睨みつける、ママの三角の目ではないだろうか……?

『ドラえもん』の怖い回:第8位「しかしユーレイはでた!」

後期の傑作ホラー回

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『ドラえもん』の中では後期に描かれた作品。山寺に合宿に行ったのび太たちだが、その夜、ジャイアン、スネ夫とメンバーが行方不明になって行き……といったストーリーで、その意味では短編ながら、王道のホラー話でもある。

しかしその謎を解くミステリー要素こそが本話の本質であり、その意味ではFのストーリーテラーとしての巧みさが出た話といえるのだ。だが、何よりも一番コワいのは事件が起きる直前に、
ふしぎなことに………………、ここでのび太の記憶はしばらくとぎれる。
とのナレーション(?)が入るところ。生理的に不安になるこの感覚は、『ドラえもん』では貴重!

『ドラえもん』の怖い回:第7位「無人島へ家出」

十年の孤独!

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ママに怒られたのび太が家出を企て……というお話は何本かあるが、本話ではドラえもんの道具を持ち出して、本当に実行してしまう。そして、無人島にまで行ったはいいが、タケコプターを失い、帰ることができなくなってしまい――十年もの時間がその島で経過してしまう! 何よりもオソろしいのが、その十年を現す1p!
最終的にはドラえもんがこの「大人になったのび太」を助けに現れ、タイムふろしきで子供に戻し、タイムマシンで「家出の当日」に戻すことで何もかも元通り……なのだが、当然、「では以降ののび太は精神的には大人なのか?」「以降ののび太が日常を過ごしている間にも、無人島にはもう一人ののび太がいるのか?」とのツッコミを受けることに。

もちろんその辺りは「ギャグ漫画だから」「設定はお話毎にリセットされてるから」と流すのが賢明なのだが、しかしそんなことを考えつつ別なエピソードを読んでいると、やはりふと、コワさが頭をもたげてくる……!

番外――怖い映画ナンバー1は?

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『ドラえもん』と言えば毎年公開されている映画版も忘れがたい。ただし、本来の本作があくまで日常に根差しているのに対し、劇場版は異世界での体験が主軸。そんなわけで同列に語りがたく、ここで簡単に触れさせていただくに留めたい。
何しろ冒険要素の強い劇場版、多くの作で何らかの恐怖が描かれている。タイムマシンすらも追跡してくる「メジューサ」の登場する『のび太の魔界大冒険』、ピンクのもやの出現が気味悪い『のび太とアニマル惑星(プラネット)』、ママたちが妖怪と化し、日常そのものが破壊されてしまう『のび太のパラレル西遊記』、天上人が人類を抹殺する「ノア計画」を企む『のび太と雲の王国』、夢の中とはいえのび太としずかの死が描かれる『のび太と夢幻三剣士』など、コワい話は枚挙に暇がないのだが、ここは『のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)』を推したい。

この話はロボットが人間を支配するチャモチャ星が舞台となっているのだが、ドラえもんが敵に破れ、チャモチャ星の海底深く沈んでしまう。地球に逃げ帰るのび太たち、そして故障し、意識も朦朧しつつのび太を案じるドラえもん……というストーリー。

この時期のドラえもんは道具が使えなくなったり故障したりと受難続きだったが、ここまで徹底的にやられる話は例がなく、その最大のピンチをもって、ここでは「怖い『ドラえもん』映画ナンバー1」としたい。

『ドラえもん』の怖い回:第6位「家がだんだん遠くなる」

もうお家へ帰れない?

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すて犬ダンゴ」という、「犬や猫を棄てる時、家に戻ってこないようにさせる」という何とも非情な道具。のび太が知らずに、そのダンゴを食べてしまい……という話。「家の外に出ると、二度と家には戻れなくなる」と聞かされ、外出しまいとするのび太だが、いくつもの偶然で結局外に出てしまい、そしてまた偶然が重なってどんどんと遠くへと……という展開がオソろしい。

『ドラえもん』には「どんな偶然が起こるのか」というストーリーテリングの巧みさで読ませる話が多く、これが「願いごと叶え機」的なお話ならば偶然で幸運が転がってくる楽しい話になるわけだが、本話はそれを「コワさ」へとシフトしたエピソードであるといえる。しかしここで一番恐ろしいのは、のび太の捜索をあっさり諦め、勝手にのび太への別れを告げるドラえもんでは……?

『ドラえもん』の怖い回:第5位「人間製造機」

ミュータントの恐怖・女の子の恐怖

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人間もまた元素の集合体であり、それらの組みあわせにより人工的に製造することができるのだ……というSF色の強い話。部屋にドラえもんが何故か無造作に置いておいた(コワい話にありがちな導入!)その装置を見て、のび太は軽率に試してしまうが、機械は欠陥品であり、生まれてきたのは超能力を持ったミュータントであった……。

未来の世界で国連軍が出動する騒ぎになったというエピソード、そしてその後に現れるミュータントベビーの描写はまさにホラー!

もう一つ、本話ではしずちゃんがのび太に「二人で赤ちゃんを作らない?」と言われ、ものすごく切れる。しずちゃん、どうしてそんなことで怒ったのか、全然判りませんよね! 本当、女の子って理不尽でコワいですね!

『ドラえもん』の怖い回:第4位「宇宙人の家?」

奇怪な宇宙人の正体は?

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近所の人気のない洋館に、「宇宙人の基地じゃないか?」との噂が立つ。ジャイアン、スネ夫たちが肯定派なのに対し、のび太は珍しく否定派。げんこつを賭けて、互いに洋館の捜索をする両者だが……。
ショッキングなのがドラえもんが「無人たんさロケット」を洋館に飛ばし、撮影した宇宙人とUFOの写真。作品世界に似つかわしくないグロテスクさで、いつもは冷静なドラえもんが度肝を抜かれて逃げ出しちゃうのも納得。

一方、その頃ジャイアン、スネ夫は蛮勇を振り絞り、決死の洋館潜入を図っていた。そこには意外な事実が……これまた謎解きメインの話なのだが、言わば「前フリ」としての「宇宙人写真」コワさが余りにもずば抜けてすごく、このランキングとなった。

番外――アニメ独自の怖い回?

それでは、アニメ『ドラえもん』で一番コワい回は? と書くとこんな声が聞こえてきそうだ。
「アニメって原作をアニメ化したものだろ? そりゃ、アニメオリジナルエピソードもあるけど、原作を超えるお話はなかなかないんじゃない?」
いや、それが恐るべきアニメオリジナルが存在しているというウワサがあるのだ。その名も「タレント」。妙なサブタイトルだが、実のところストーリーも意味不明。ドラえもんとのび太が地下世界に行き、ベレー帽の少女と出会うなどのエピソードを挟み、やがて地球のミニチュアを見つける。そのミニチュアがぱっくりと割れて、驚いた二人が抱きあったところで終了。

こうして書いていても(それなりにお話としての流れはあるものの)何が何だかさっぱりわからない。実のところこれはネット上で話題となった都市伝説であり、恐らくは実在しない話であろうと推測できる。
だが、「地底に行く」「地球のミニチュアが壊れる」など諸々のモチーフは原作にも近い描写がある。前者は「地底の国探険」、後者は「地球製造法」。奇しくも両方ともコミックス五巻に収録された結構怖いハナシであり、ひょっとするとこの都市伝説って五巻を読んだ人が見た夢が元なのでは……? という気もしてしまう。

また、大山のぶ代版アニメの第一回放送分は「ゆめの町ノビタランド」。みんなでミクロ化してミニチュアの町で遊ぶ話で、それが「地底世界」にすり替わって噂となったのでは……といった説も存在する。何しろ第一回なので今の目から見るとキャラクターの絵もこなれておらず、ちょっとヘンなのだ(本稿に掲載した画像も、実はそれです。「タレント」とは関係ありません、ごめんなさい!)。
それに……「ノビタランド」の「タランド」って「タレント」に似てるでしょ? ほら、こんなことを考えていると、コワくなってゾクゾクしてきた……!?

『ドラえもん』の怖い回:第3位「ぼく、桃太郎のなんなのさ」

過去に取り残される恐怖!

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雑誌の特別企画として描かれた、藤子Fの他の漫画の主人公、バケルくんとの共演作(これは劇場版にもなっていて、そこではバケルくんの代わりをジャイアン、スネ夫たちが務めるが、ここは原作版に準拠)。過去の世界に桃太郎が実在したのでは……との謎を解くため、ドラ&のびとバケルくんの三人でタイムトラベル。しかしどういうわけかドラえもんの元気がない。実はタイムマシンが故障していて……。

先に述べた「大長編」にもつながる日常を飛び出しての冒険譚だが、そちらでも定番となるタイムマシンの故障というシチュエーションが最初に描かれたのは、実はこれ。いつもは頼りになるドラえもんが「あまりに恐ろしいことで言い出しにくくて……」と青ざめる様は読む者の絶望感を煽る。果たして桃太郎は実在するのか、そしてドラえもん一行の運命は……?

『ドラえもん』の怖い回:第2位「大予言・地球の滅びる日」

ドラえもんの大予言?

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扉絵から何だかコワい(空に黒雲が立ち込めている)。ドラえもんが冒頭で姿を消した中、ドラえもんのものと思しき日記帳の内容についてのび太、スネ夫たちでケンケンガクガクするという、いつもとはムードの異なる超異色作。

ジョーガンネ玉落しわずかなり学刈
ターと老婆をぬく
ゴリラキツネより機械の鳥をうばう
ター扉をひらく無音バスもぐる
日記の謎めいた文面を見たスネ夫は「ノストラダムスの大予言」を連想、これはドラえもんの書いた予言書ではないかと推理。そして、
暗き天にマ女は怒り狂うこの日○終わり悲しきかな!!
の文面を「地球最後の日」であると「解読」するのだ!(○が地球を指しているという推理)果たして、この騒動の行き着く先は……?

『ドラえもん』の怖い回:第1位「どくさいスイッチ」

怖い道具ナンバー1!

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恐らく、『ドラえもん』に詳しい方なら誰もが挙げるであろうトラウマ回を、今回は一位に選ばせていただいた。ジャイアンにいじめられ、「あんなヤツ、いなくなってほしい」ともらしたのび太にドラえもんが差し出した道具がこれ。
どんな人間でもスイッチ一つで消してしまえる(抹殺というより、最初からいなかったことになってしまう)この道具で「邪魔者は消してしまえ」とけしかけるドラえもんに、さすがに躊躇するのび太だが、一人、また一人と消してしまい、ついには弾みで全人類を……。
ただ一人の生き残りとなったのび太、当初ははしゃごうとするものの、すぐに一人じゃ生きていけないと悟り、絶望するのだった。そう、「独裁者が作らせた道具」とのフレコミだったこれ、実は「独裁者を懲らしめるための道具」だったのだ。

教訓色の強いエピソードで、もちろんクライマックスの孤独さこそがオソロしいわけだが、今になって読み返すと、「ジャイアンがいなくなっても、スネ夫がボスとして威張りだし、結果的に現実は変わらない」というリアルな世界観も、結構ゾクゾク来る?

人間にとって一番怖いのは…?

色々とエピソードを紹介したが、これらからはいくつかの傾向が読み取れると思う。まずは巧みなストーリーテリングこそが『ドラえもん』の本質であり、その中で恐怖は謎解きの原動力として、或いは前フリ(奇怪な宇宙人の姿など)として描かれることが多いということ。
『ドラえもん』はSF漫画でもあり、オソロしい宇宙人、怪獣なども登場する。しかしそれ自身の「コワさ」を見せ場としてて描くことはあまりなく、あくまでストーリー上の必然としての「コワさ」であることがほとんど。第4位の奇怪な宇宙人を見れば、そのことは判っていただけるかと思う。

もう一つ、本作で恐怖がそれを描くこと自体を「目的」として描かれる時には「たった一人になる」といった「孤独」をこそ本当の怖ろしさとして描く傾向にあるのではないか、ということ。「家に帰れなくなる」「過去に取り残される」といったエピソードが目立つが、これらもまた、その変形であるといえるだろう。
人間にとって一番怖いのは、「孤独」。『ドラえもん』はそのことを描ききった作品だったのである。
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