『ドラえもん』名作映画ランキングTOP10 あの感動を再び…!

日本の誇る人気コンテンツ、『ドラえもん』が毎年、劇場版アニメとしても公開されていることはご存知かと思う。
実のところこれは80年の大山のぶ代版の頃から始まり、例外的な一年を除くと毎年間断なく続き、今年で37作目を迎えているのだ(『ぼく、桃太郎のなんなのさ』は通常、カウントされない)。
ここでは一望するだけでも大変なこの映画群、その名作についてベスト10形式で語っていこう。

映画版『ドラえもん』は「大長編」!

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では、その映画版『ドラえもん』の特徴は? それは『大長編ドラえもん』であること。いや、これはギャグで言っているのではない。原作漫画はちゃんと『ドラえもん』と『大長編ドラえもん』とで「別なタイトルの漫画」として刊行されているのだ。
それは普段の『ドラえもん』があくまで日常に根差した世界が描かれているのに対し、『大長編』では非日常的な異世界での冒険こそが描かれるため。ここで原作者の藤子・F・不二雄が目指したのはかつての絵物語(『少年ケニヤ』とか)で描かれた冒険活劇の復興だったのではないだろうか。ここではそんな作品群の中から、トップ10を取り上げてみよう。

『ドラえもん』名作映画:第10位「のび太の宇宙開拓史」

初の完全描き下ろし

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普通なら、ここで第一作目の『のび太の恐竜』を挙げるべきなのかもしれないが、ちょっとひねって二作目を挙げてみた。一作目は中編である「のび太の恐竜」に後日譚を描き足して映画原作としたという、随分と変わった経緯があるのだが、本作は最初から劇場版アニメ化を前提として原作が描かれた、初の作品なのだ。

超空間事故で偶然にも、宇宙の彼方、コーヤコーヤ星とつながったのび太とドラえもん。そこで出会った少年、ロップル、そして不思議な生物チャミーと親交を深めるふたり。そして宇宙の悪徳企業、ガルタイト鉱業との戦いが開始された!
初の異世界の少年キャラクター、ロップルとの友情、そしてゲストヒロインとも言うべきその妹、クレムの登場、敵の用心棒であるギラーミンと勇ましく戦うのび太と、劇場版『ドラえもん』のフォーマットを本当の意味で確立したのは、本作であるといえる。

『ドラえもん』名作映画:第9位「がんばれ!ジャイアン!!」

ジャイ子の恋愛の行方は?

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早くも変化球を出してしまったが、これは『のび太と翼の勇者たち』と同時上映された作品。大山のぶ代時代は「大長編」を原作とした作品以外にも一、二本、藤子不二雄原作の作品が併映されるのが常であり、本作もそれ。しかも、何と前代未聞の「ジャイアン主演映画」なのだ!

といってもどちらかといえば真の主役はジャイ子。ご存知の方も多いだろうが、彼女はジャイアンの妹。元は「のび太の未来の結婚相手」といういってみれば悪役(未来の悪妻)として登場したわけだが、すぐに登場することもなくなり、やがてのび太としずかとの結婚が確定するようになっていく。
しかしそのままフェードアウトさせるのも可哀想だということで、後に漫画家志望の少女として再登場を果たした。本作は、そんなジャイ子の恋愛模様が描かれた物語なのだ。

善意からではあるが、無神経にジャイ子と茂手モテ夫の恋愛に首を突っ込んで、気まずくさせてしまうジャイアンとのび太、ドラえもんたち。
ヤケになり、漫画への情熱すらも失ってしまうジャイ子に、献身するジャイアンの姿が泣かせる! 私のアニキがこんなカッコいいわけがない!
言わば本作は「のび太の結婚相手」としてはお役ご免となってしまったジャイ子のリベンジ話だったのである。

『ドラえもん』名作映画:第8位「のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)」

名監督の産み出した新しい『ドラえもん』

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水田わさび版の映画はかつての作品のリメイクと新作とが順番に公開されており、オリジナルストーリーは正直、評価が今一であった。本作もオリジナルだが、後述する『新・鉄人兵団』などで評価された寺本幸代監督作とあって、見事にジンクスを吹き飛ばしてくれた。

怪盗DXに「ねこあつめすず」を盗まれたドラえもん。鈴を求めて未来の「ひみつ道具博物館(ミュージアム)」を訪れ、博物館のガイド、クルトジンジャーという少年少女と出会う。しかし二人と共に博物館に隠れ住むペプラー博士には何やら秘密が……。

『ドラえもん』の魅力は次々飛び出すひみつ道具であり、本作はその大集合といった趣きの楽しい作品となっているが、中でも鍵となるのは「ねこあつめすず」。ドラえもんの首についている猫を集める機能を持つ鈴だが、現在は故障中……という設定は有名だが、連載後半では「小型カメラに機能を変えた」ことが語られていたことは、知っていたかな? ともあれ、この鈴にまつわるドラえもんとのび太の友情が語られるところが、この映画一番の見どころなのだ。

『ドラえもん』名作映画:第7位「のび太の結婚前夜」

のび太たちのバチェラーパーティー

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本作も併映の中編映画。同タイトルの原作漫画(のび太と結婚する前夜のしずかの葛藤、そしてしずかのパパの優しい言葉が語られる、あの話だ)のアニメ化だが、オリジナルエピソードが多くつけ加えられている。中盤の見せ場は引っ越しをする家族の下へ、忘れていったネコを届けてやるというもの。

その夜、しずかとの結婚を控えた青年のび太がジャイアン、スネ夫、出木杉たちとバチェラーパーティーを開く。そして、その日のささやかな大冒険を「今日は久し振りにガキの頃みたいに楽しかったよな」と語りあうシーンが実によい。ちょっとのび太が良い子に描かれすぎている気もするが、ドラえもんが去った(と思しい)後に立派な青年となったのび太が描かれた、極めて後味のいい良作だ。

『ドラえもん』名作映画:第6位「のび太の南極カチコチ大冒険」

最新作の元ネタはあの深きものども?

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今年に公開された最新作を、ここにランクインさせていただいた。お話の冒頭はのび太たちが夏の暑さから逃げ出し、太平洋の氷山で遊んでいたところ、氷漬けになっていたリングを見つけ、落とし主を求めて十万年前の南極にまで足を伸ばす……というもの。そこで一行が見たものは、氷の下の巨大遺跡、そしてヒョーガヒョーガ星人の少女カーラヒャッコイ博士の姿であった……。
近年の研究では、スノーボールアース仮説と呼ばれる考えが学説の主流となりつつある。過去の地球には表面全体が凍結するほどの激しい氷河時代が存在した、との考えで、本作もこの学説に則った、SF色の強い話だ(何しろドラえもんの口から、この学説が語られる!)。

しかしそれともう一つ。本作は元ネタがクトゥルフ神話なのではないかとの、専らのウワサがあるのだ。クトゥルフ神話とは怪奇作家ラブクラフトによって作られた架空の神話であり、クトゥルフとは太古の地球を支配していたタコのような生物なのだ。
本作もまた、南極で太古の地球を謎の宇宙生命体が支配していた痕跡が発見される、というお話で、そのプロットはクトゥルフ神話の『狂気の山脈にて』にそっくり。登場するモンスター(石像)もタコ型でクトゥルフを思わせる。またペンギンモンスター(石像)がドラえもんに化けるのだが、元ネタはニャルラトホテプだろうとの説も。ぱっと見にはいつもの明るく楽しい大冒険なのだが、そこに密かに忍ばされたクトゥルフ要素。それが本作の一番の魅力だ。

『ドラえもん』名作映画:第5位「のび太の創世日記」

のび太が『ドラえもん』のパロディを?

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のび太が夏休みの自由研究として、ミニチュアの地球を作ってしまうという超異色作。ミニチュアといっても模型などではない。「創世セット」によって新たな宇宙を作り、新たな地球を誕生させ、それの観察をするというお話なのだ。そしてそのミニ地球には野美一族という、(まるで野比家のような)代々ダメ人間の一族がいることに気づいたのび太は、陰から彼らを手助けしてやる。
ミニ地球では石器時代から近代(大正や明治のような感じ)までの歴史が瞬く間に進行し、その中、野美一族はいつしか立派な一族となり、しずかに似た女性、しず代を妻に娶るまでになっていた。

これはそう、一つには『火の鳥』のような一大叙述詩を『ドラえもん』でやってしまおうという意欲作との見方ができるが、もう一つの要素が込められている。つまり本作は、のび太がまるでドラえもんのようにダメ人間を助ける役回りを演じる、『ドラえもん』そのもののパロディ話なのだ。さすがにあまりにもスケールが大きすぎて、映画一本を費やしても時間が足りなかった感はあるものの、藤子F晩年の一大実験作であったということができる。

『ドラえもん』名作映画:第4位「新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」

新キャラ・ピッポの名演技はいかに?

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先にも述べたように、水田わさび時代の映画『ドラえもん』にはリメイク作が多い。本作もあまりにも傑作であった前作を越えられるかどうか、いささか心配であったのだが……決して前作に負けない、しかも新要素をプラスしたものを作り上げたスタッフには脱帽である。
お話のアウトラインは新・旧ともに変わらない。メカトピアと呼ばれるロボットの支配する星から、鉄人兵団と呼ばれる侵略軍がやってくる。それよりも一足早く、スパイとして美少女型アンドロイドリルル、そして伏兵として巨大ロボットジュド(ドラえもんたちはザンダクロスと呼ぶ)も送り込まれてきた。しかしふとしたきっかけから両者はのび太たちと出会い、交流を持つように。そこへ鉄人兵団がやってきて……。

とは言え、旧作ではジュドは純粋な敵キャラとして登場し、ドラえもんが電子頭脳を再フォーマットして味方とするだけであった。新作ではその電子頭脳がピッポと呼ばれる小型ロボットとなって、のび太たちとの友情を育むというストーリーが描かれ、それこそが独自性となっているのだ。

クライマックス、しずかは歴史の改変によってメカトピアを平和なロボットたちの文明に作り替えようとする。地球を攻撃していた兵団はそれにより消滅。リルルやピッポもまた同じ運命を辿るのだが――感動のクライマックスは、まさに「はばたけ天使たち」にふさわしいもので、旧作を凌駕したといえよう。

『ドラえもん』名作映画:第3位「のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)」

ドラえもん絶体絶命!

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チャモチャ星は人間が自ら生み出したロボットの反逆を受け、支配されてしまっている星。のび太たちはそこでサピオという少年と友だちになるが、彼も機械に頼りすぎ、自分では立って歩くこともできない有様。
しかし……これはひょっとして、ドラえもんとのび太の関係のネガの側面の戯画化したもの? 機械に頼りすぎて何もできない少年って、のび太のことじゃん! そんな星で敵の攻撃を受け、ドラえもんは海底に沈んでしまう。一度は命からがら地球へと逃げ出したのび太たちだが、ドラえもんを救うために再び、ロボット軍団に戦いを挑む――。

大山のぶ代版の後期では、やたらとドラえもんが故障したり、四次元ポケットを失ったりで受難が続く。が、異星の海底でポンコツ寸前となる本作はピンチの度合いが段違い。先に「のび太がドラえもんを演じる」話をご紹介したが、今回は「のび太がドラえもんを助ける」話になっているのだ。

ドラえもんの寝床を見て、本人は秘密のつもりにしていた四次元ポケットのスペアの隠し場所に思い至るのび太、海底で朦朧とした意識の中、のび太を案ずるドラえもんと、二人の絆の描かれ方は文句なく本作がナンバー1だ。

『ドラえもん』名作映画:第2位「のび太と竜の騎士」

恐竜人たちの神様は誰?

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80年代後期の映画はとにかく藤子Fも脂が乗っていて、出る作品、出る作品と傑作が続いた。中でも本作は恐竜人ディノサウロイド(古生物学者デール・ラッセルによって提唱された、恐竜が進化して知的生命体になった姿)、また彗星衝突による恐竜絶滅説を取り入れた、恐竜マニアらしい作者のこだわりが伺える。

お話は、「地球の地底には実は恐竜が生き残っており、恐竜から進化した恐竜人が高度な文明を築いていた」というもの。しかし彼らは彗星によって絶滅した恐竜たちの生き残りの末裔であり、タイムマシンで過去に遡って絶滅を阻止、自分たちが地上で栄える歴史を作り出すことを企んでいた……。

冒頭では「何故かスネ夫の屋敷の庭に、柿の実を食べに来る恐竜」といったゾクゾクする場面が描かれる。そして行方不明になったスネ夫を追っていくうちに地底の恐竜世界の秘密が明らかになって行く展開、さらにそもそも、太陽もない地底に何故光があり、恐竜たちが生き延びることができたのかといった謎解き。明確な敵とのバトルが存在せず、活劇性という意味では食い足りなさが残るが、そんな畳みかけるようなストーリーテリングの巧みさが何よりも本作の醍醐味だ。

『ドラえもん』名作映画:第1位「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)」

コビトの国の大戦争の行く末は?

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また、80年代後期の作。ちょっと偏ってしまったが、この時期に傑作が多いのは疑いない事実なので、ご容赦願いたい。お話はスネ夫がその財力で、特撮映画(『スターウォーズ』的なもの)を作るところから始まる。ミニチュア宇宙船のドッグファイトシーンの撮影中に、見知らぬ宇宙戦艦が紛れ込む。それはコビト宇宙人の星、ピリカから飛来した、正真正銘の軍艦であった……。
今回のゲストキャラクターはクーデターに追われ、地球へと亡命してきたピリカ星の少年大統領パピ。しかしピリカ星の情報機関PCIA(ピシア)の魔の手は地球にまで伸びていた。一同がスモールライトで小さくなっている間に、PCIAはスモールライトとしずかを奪ってしまう。しずかを助けるため投降するパピ。ドラえもんたちはパピを救うため、小さな姿のままでピリカに向かう。そしてそこで意外な逆転劇が――。

この時期の劇場版『ドラえもん』といえば、しずちゃんの入浴シーンがお約束として挿入されていたが、今回は入浴中に敵にさらわれるというヒロインどの非常に高いものとなった。

また、武田鉄矢の挿入歌が流れることも、この時期(大山のぶ代時代)のお約束であったが、本作では「少年期」という名曲。それもPCIAに対するレジスタンスが歌う歌として、非常に印象的な使われ方がされていた。それら要素の魅力も相まって、本作はまさに黄金期に作られたナンバー1作品と言っていい傑作となったのである。

映画『ドラえもん』は「さようならドラえもん」だ!

藤子Fが原作を描いた最後期の大長編、『のび太の銀河超特急(エクスプレス)』で、自分たちが悪の組織に狙われていると知ったジャイアンが怖じ気づくのに、のび太が悪と戦おうと一喝するシーンがある。それを聞いたスネ夫が思わず突っ込む。
のび太は映画になるとカッコいいことを言うんだから
それはもちろん、(『ドラえもん』には意外に多い)メタ的なギャグなのだが、では何故、のび太は「映画になるとカッコいいことを言う」のだろうか?
『ドラえもん』ブームが絶頂であった80年代、「この漫画はのび太がドラえもんに頼るばかりで教育に悪い」などという言いがかりが盛んに主張されたことがある。いや、驚くなかれ、いまだにアニメ評論家のような顔をして、そんなことを大マジメに言い出す御仁もいるのだ。

もちろんみなさんならすぐに反論ができるだろう。「調子に乗ったのび太が道具を暴走させ、自滅する」という本作のお約束は、決して道具に頼ることをよしとしていない。また、上の言いがかりへの反証には「さようならドラえもん」を挙げてみることもできる。これはのび太の独立がテーマになっているし、他にも例えば「のび太の結婚前夜」を見るに、ドラえもんはいつかのび太の下を去る存在であると想像できると。
しかし、ここまで当記事をお読みいただいた方は、また別な反論をも思いつくのではないか。劇場版『ドラえもん』は、ことに藤子F最晩年の90年代作品は、常に「のび太の独立」が意識されていると。だからのび太は「ドラえもんのパロディ」をやったのだし、まるで「のび太のパロディ」であるかのようなチャモチャ星で、のび太はドラえもんを助け出したのだ。

更に言えば藤子Fの遺作は『ドラえもん』ではなく『大長編ドラえもん』であった。晩年のFは健康上の理由から、執筆を『大長編』に絞っていた。まさに晩年のFは「のび太の独立」を毎年描き続けていたのだ。それはまるで、遺していく不肖の息子であるのび太を案じるかのように。上の評論家たちが、そんなことすらも知らないままに本作を語っているのは明白だ。
藤子Fが没して、早くも二十年の月日が流れた。しかし毎年毎年、のび太が「映画になるとカッコいいことを言う」ことには変わりがない。そう、それはまさにスタッフたちがFの遺志を継ぎ続けているからに、間違いがないのだ。
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