火の鳥未来編はマンガの神様手塚治虫の最高傑作!あらすじを紹介

漫画の神様・手塚治虫のライフワークというべき未完の超大作『火の鳥』。様々な時代の人間達の濃厚なドラマを描いてきた本作において、特に人気の高いエピソードと言えば「未来編」ではないでしょうか?火の鳥世界の最も未来、そして過去?を描いた本作。そのスケールは地球を遥かに飛び越え、億年単位にまで及ぶ!!そんな「未来編」について、魅力とあらすじをご紹介!この記事こそ、きっとどこかで本作の魅力を伝えて・・・新しいファンを開拓してくれるようになるだろう(?)

漫画の神様のライフワーク!火の鳥とは

『火の鳥』は漫画の神様・手塚治虫が漫画家として活動していた初期から晩年まで手がけ続けたライフワークともいえる超大作漫画。火の鳥(不死鳥)を物語の中心とし、様々な時代で火の鳥と、それに関わる人間達の数奇な運命を描いています。
残念ながら物語は真の完結を見る前に手塚氏が亡くなってしまったため、未完の超大作となりましたが、本来の構想は超過去→超未来→近い過去→近い未来→・・・と徐々に現代(連載当時の20世紀後半)に近づいていき、最後は手塚氏が亡くなる瞬間=現代として物語は完結する予定だったそうです。
しかしながら、『火の鳥』を過去から延々と続く一つの物語とした場合の最終的な結末となる一編があります。それが今回ご紹介する「未来編」です。

「未来編」は、物語の時系列的に一番最後であり、そして一番最初に位置する?作品です。(変な説明ですが、この意味は後々分かりますのでお楽しみに・・・)
かつて「鉄腕アトム」で、夢いっぱいの21世紀世界を描き出した手塚氏が描く、はるか遠い未来の物語。それはいかなるものであるのか?未来編の多くの描写は、現代社会においても決して廃れることなく、我々の心を鋭くえぐるのです。
そして物語は、未来世界という枠を飛び越え、想像を絶する超特大スケールへ・・・!?次項からは、『火の鳥』最高傑作?「未来編」のあらすじを紹介していきます!!

スケールの大きさは最高級!未来編あらすじ

静かに始まる滅び・退廃的未来世界

時ははるか未来、西暦3404年。25世紀に絶頂期を迎えた人類でしたが、その頃を境に静かな衰退がはじまりました。文明や芸術の発展が止まり、人々は昔の生活や服装にばかり憧れを抱くようになり、文明の水準は21世紀レベルにまで逆戻りしていました。
また、過去幾度となく繰り返された戦争によって地球は荒廃し、人類は地下に築いた”永遠の都”こと5か所のメガロポリスに移り住み、巨大な人工知能によって支配され細々と生き続けていました。
これがかつて、「鉄腕アトム」で我々にバラ色の未来世界を見せてくれた作者と同一人物が描いたものなのでしょうか?比較的細やかに人類の繁栄→衰退を描いている本作、これだけでもなかなか衝撃的な出だしと言えますが、真の衝撃はまだまだこれから・・・

人工知能のケンカで人類滅亡!?

メガロポリスの一つ、ヤマトに暮らす主人公・山之辺マサトは、当時保有を禁止されていた宇宙生物・ムーピーのタマミが見せてくれる幻覚・ムーピーゲームをしながら日々の暮らしを送っていました。
しかしある日、マサトがムーピーを保有していることがバレてしまい、ヤマトを統括する人工知能ハレルヤよりムーピーを抹殺するよう命令を受けます。しかし、ムーピー=タマミを殺すことが出来ないマサトは、タマミを連れてヤマトを脱出、亡命を試みます。
亡命の為、汚染が激しい地表へと出たマサトたちは、ドーム型研究所で静かに研究を続ける猿田博士と出会います。猿田博士は、滅びゆく地球を、自らが作り出した人工生命たちで何とか「命溢れる姿」にしたいと強く願っていました。

一方、マサトの処遇を巡り、ヤマトの人工知能ハレルヤと、マサトの亡命予定先であるレングードの人工知能ダニューバが対立、二大人工知能は暴走の末戦争という選択肢を決定、二大メガロポリス、更には他の三大都市もまた、超水爆によって滅亡し、マサト猿田博士、そしてマサトを追っていたロックを残して人類は滅亡します。
この「人工知能に支配される世界」もまた、未来編の大きな要素の一つ。朝食に白飯を食べたくても「合成パン」を食べなければならない。彼女と別れろと言われれば別れなければならない。そして、相互に戦って滅べと言われれば、その通りに滅びる・・・
「人として生きる」とは何なのか?ひたすら機械の指示に従って「生活する」人生が、「生きている」と言えるのでしょうか?機械の部分を他人社会に置き換えれば、現代でもそっくりそのまま通じるテーマ。
全てを他に依存して生きることの危うさ。間もなく人工知能の登場も秒読み段階と言える現代、本作を見て今一度「人として生きる」ことについて考えてみるのも一興です。

主人公は神様に?地球の歴史をもう一度

数少ない人類の生き残りとなってしまったマサトの前に、火の鳥が現れて彼に使命を与えます。それは「荒廃した地球の再生」「間違った進化を正し、新しく進化をやり直す」というもの。それを見届ける為、マサトは火の鳥によって死にたくても永遠に死ねない不死の身体にされてしまいます。
長い歳月の末、ロックが、猿田博士が、そして自分を愛してくれたタマミが、次々と死んでいく。当初は猿田博士の研究を引き継ぎ、人工生命の培養やロボットの開発を進めるマサトでしたが、いずれの研究も頓挫してしまいます。
そうして彼は、なんと「生物の進化のプロセスを一から見守る」という選択肢を選びます。それは30億年にもおよぶ生命の進化の歴史を一から辿るという、あまりにも遠大な使命だったのです・・・

ナメクジ文化の台頭と滅び

新たな生命を自然に任せて一から誕生させることに決めたマサト。単純な元素が混ざっただけの無機物で出来たコップいっぱいのスープを崖の上から海に垂らし、後はひたすら待ち続ける。いつしかマサトの肉体は風化し、意識だけの存在となる・・・
やがて地球に新しい生命が誕生します。単細胞生物両生類、そして恐竜。順調に地球の生命の歴史をたどっていきます。・・・とここで異変が生じました。何と恐竜は、無数の小さなナメクジによって滅ぼされてしまったのです!
やがてナメクジは目まぐるしく進化を遂げ、知能を持つにつれ脳が肥大化していく。ついに、直立した2体のナメクジ、アダムイブ(マサトにより命名)が生まれます。

新しい地球の支配者は、まさかナメクジなのか!?・・・しかし、ナメクジの繁栄は長くは続きませんでした。知性を獲得し、文明を築いたナメクジでしたが、北方種と南方種の2種が対立し戦争が勃発、その末に両者は壊滅状態に。
最後に生き残り、瀕死の状態となったナメクジは、既に神に等しい存在となったマサトに語り掛けます。
「なぜ私たちの先祖はかしこくなろうと思ったのでしょうな・・・もとのままの下等動物でいれば、きっともっとらくに生きられ・・・死ねた・・・ろう・・・に・・・進化したおかげ・・・で」
知性を持った結果辿り着く結末は、滅びしかないというのでしょうか。これはあくまでフィクションの世界ですが、果たして我々人類はこのナメクジを笑うことができるのでしょうか?未来編が我々に訴えかけてくる、強烈なメッセージの一つです。

そして「未来」は次なる「過去」へ・・・

ナメクジの滅亡後、更に長い年月を経て、哺乳類が繁栄し、やがて遂に人類が生まれます。かつてと同じように、進化を続け、文明を持つに至った人類。しかし新たな人類を見て、マサトは嘆きます。
「愚かな人間よ。浮気者で、はでずきで、けばけばしく飾りたて、嫉妬深く、他人を信用せず、うそつきで、残忍で・・・・なんとみにくい動物じゃ。わしはそんなおまえたちなど望まなかった・・・わしがほしかったのは 新しい人間なんだ。」
もはやマサトという名も忘れてしまった造物主の前に、再び火の鳥が姿を現します。火の鳥こそ、宇宙に存在する全ての要素からなる「宇宙生命(コスモゾーン)」そのものだったのです。やがてマサト=造物主は、火の鳥と一つに。巨大な宇宙生命の一つとなったのです・・・

間違った進化をやり直したはずの新しい人類もまた、「かつての人類」と同じく他人を傷つけ、欲望に目がくらみ、お互いを攻撃しあう存在となってしまいました。しかし、それでも火の鳥はこう思います。
『「でも 今度こそ」と火の鳥は思う。今度こそ信じたい。「今度の人類こそ きっとどこかで間違いに気がついて・・・・生命(いのち)を正しく使ってくれるようになるだろう」と・・・・・』
そうして物語は、火の鳥黎明編へと続く・・・そう、未来編とは超未来の物語であると同時に、新たな歴史に対する遥か遠い過去の物語でもあったのです。ここに、壮大な火の鳥の世界は一つに繋がるのです。

未来編登場人物紹介

山之辺マサト

西暦3404年のメガロポリス・ヤマトで生活する二級人類戦士=宇宙飛行士にして、物語の主人公。規律に反し、保有していたムーピー=タマミを殺せず亡命を図った事から人類滅亡を免れるも、彼に課せられたのは「地球の再生」「間違った進化を正し、新しく進化をやり直す」という、余りにも途方もない壮大な使命だった・・・
余談だが、本編ではタマミを連れて亡命したりと中々大胆な行動が目立つマサトだが、タマミと出会う前は教条主義者(特定の原理・原則に固執する人、つまりはカタブツ)であったとの事。

タマミ

マサトの恋人である美女だが、その正体はムーピーと呼ばれる変身能力を有する不定形宇宙生物である。作中世界ではテレパシー能力の一種で人間の脳に干渉し、幻覚を見せるムーピー・ゲームが人間を堕落させるとし、保有を禁止されている。
人間よりもはるかに寿命が長く、500年程度は生きられるため、当初は不死となったマサトに寄り添っていたが、最後は寿命が尽き、彼と最後のムーピー・ゲームを行った後死亡する。
そして幾億年の時を超え、火の鳥の一部となったマサトは、同じく火の鳥の一部となっていたタマミと再会するのであった・・・

ロック

メガロポリスヤマトの中央本部に勤務する一級人類戦士。マサトとは同期にあたるが、コンピューターの決定により自分の部下となっており、マサトに辛く当たる。
自分の母親にも等しい存在であるハレルヤを妄信しており、本作における人間の愚かさの象徴ともいえる存在。ハレルヤを始めとする人工知能の暴走に振り回される事となってしまい、最後は放射能に汚染され、荒廃した地表で一人笑い泣きしながら死んでいった。

猿田博士

世捨て人となりながら、荒廃した地表にドーム型の研究所を持ち、新しい人工生命の創造に尽力している科学者。
特徴的な大きな鼻は「生まれつき」だそうだが、実は猿田の一族は火の鳥世界において、極めて大きな罪を背負った存在である。それは猿田の始祖に当たる猿田彦が犯した数々の悪行を清算するためらしいのだが・・・詳しくは火の鳥の他編を参照のこと。
余談だが、鉄腕アトム御茶ノ水博士もまた、猿田の家系である。彼が幾度となく酷い目に合うのは、やはり猿田の業によるもの。(それでも命を落とすほどの深刻な事態にならないのは、大分罪が清算されつつあるかららしい)

ロビタ

猿田博士の助手をつとめるロボット。非常に単純な構造をしており「旧式ロボット」とされるが、一方で猿田博士を諫めるなどの非常に人間臭い行動を取ることも多い。
実はロビタが旧式ロボット然としていながら極めて人間らしい感情を持つのには理由があり、火の鳥「復活編」にてその素性が明かされる。興味のある方は是非こちらも一読をおすすめする。

ハレルヤ、ダニューバ

それぞれメガロポリスヤマトレングードを統括する人工知能。(他三つのメガロポリスを統括する存在については不明)高度に発達したことで人類の生活の全ての行動を定め、支配している。
しかし、マサトの処遇を巡ってハレルヤ、ダニューバの両者は対立の末暴走し、遂には人類滅亡の原因となってしまう。
安直に機械に頼り過ぎる事、機械の支配に何の疑問も抱かなくなる事への警鐘を鳴らす存在であり、人工知能が高度に発達しつつある現在だからこそ、改めて顧みる必要のある存在であると言える。

未来編は「未来」?それとも「過去」?

以上、『火の鳥』屈指のスケールを誇る大長編、未来編について紹介いたしました!
原作が描かれたのは1968年と、かれこれ半世紀前であるにも関わらず、これ程現代にも通じうるメッセージ性を持った作品である事には驚きです!この物語は決して古臭いものなどではなく、むしろどんどん情報化が進みつつある現代だからこそ改めて顧みるべき作品であると断言できましょう!!
果たして今の人類は、地球の歴史は、何度目なんだろう?愚かと断じられ、見捨てられる存在になってはいやしないだろうか?火の鳥が信じたいと願った世界へと変わっているのだろうか?
変わっていないのなら、我々の手で変えていこう!! ・・・未来編で最も作者が伝えたかったメッセージはそれではないかと、筆者は思うのです。
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