【あしたのジョー】矢吹丈(ジョー)の魅力と戦いの全てを振り返る!

喧嘩屋・矢吹と恐れられていたクロスカウンターの使い手・矢吹 丈(以下、ジョー)。1968年の連載開始から50年を数える来年、再燃するであろう『あしたのジョー』を知る上で欠かせない、ジョーの生き様と凄絶な戦いを追ってみました!

『あしたのジョー』の矢吹 丈とは?

どこからとも知れずに、現れたジョー

1968年1/1号(発売は67年12月)に「少年マガジン」で連載が開始された『あしたのジョー』(原作:高森朝雄(梶原一騎の本名)、画:ちば てつや)の主人公が矢吹 丈(ジョー)です。言わずと知れたボクシング漫画の金字塔を打ちたてた作品です。また、それだけではなく70年安保闘争等の混沌とした時代背景をも取り込んだ一大巨編とも言えるでしょう。

その作品から産まれた主人公が、のちにボクシング界において「喧嘩屋」「野生児」と冠されるようになったジョーなのです。ジョーは、当時ブームだったボクシング界のヒーローだけにとどまらずに、、時代の寵児でもありました。高度成長という日本の流れとともに、自身も登りつめて行ったのです。

矢吹 丈とは風来坊からボクシングに出会い、そしてのめり込んでいった永遠のヒーローたる存在だったと言えるのではないでしょうか。

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『あしたのジョー』のあらすじ

宿敵・力石との死闘を経て“king of kings”ホセとの世界戦へ!



東京の下町にフラリと現れたジョーは、元ボクサーの丹下段平に見込まれますが、小遣いだけを貰ってパチンコに興じています。挙句のはてには、ドヤ街の少年達を手なずけて詐欺まがいの行為をしてしまう始末です。ついにジョーは逮捕されて鑑別書⇒少年院へと送られてしまいました。

それでも、ジョーの素質を諦めきれない段平は、ハガキによる通信教育でジョーにボクシングの基本である左ジャブを教えました。そして、東光特等少年院で宿敵となる力石 徹と出会い、ボコボコにされた事が彼のボクシング人生のスタートとなったのです。

その後は院内での対抗戦を前に、フィニッシュ・ブローとなる“クロスカウンター”を段平から「生身で」伝授されて、力石との対決はWノックダウンという凄絶な結果に終わっています(画像・上)。

出院後のジョーは、プロボクサーとして6回戦からデビューします。まず、目指すのは「打倒・力石」です。新人王を獲得したウルフ金串戦を実現するや、勝利を収めて着々と実績を積み上げていきました。

そして、力石との8回戦。ここでジョーは力石必殺のアッパーを喰らいKO負けを喫しました。対戦後に力石は死亡します。その精神的ダメージで、姿を消したジョーは来日したカーロス・リベラを見てカムバックの決意をします。

その後も東洋戦とその防衛戦で死闘を続けて、ついに最強のチャンピオンのホセ・メンドーサとの試合が決まります…

ジョーのプロとしての戦績は、25戦19勝19KO5敗1ノーコンテスト(カーロスとの後楽園でのエルボー合戦)。去り際の美学を追求するでもなく「まっ白な灰に」というジョーのイデオロギーが読み取れる戦績といえます。

ピタリとはまった声優陣

あおい輝彦、藤岡重慶…などなど、違和感のないキャスティング



『あしたのジョー』のアニメ版の声優には、全体的な制作を司った出崎 統氏の斬新なアイデアや演出が随所に生かされています。声優のキャスティングに至っては、当初は異例とさえ言われていました。ジョー役には、アイドル「元祖ジャニーズ」のあおい輝彦を抜擢し、団平役には役者の藤岡重慶を起用しました。

どちらも、専門の声優ではない人選でしたが、それがピタリとハマって、この二人に関しては不動だった事が思い出されます。加えて、サチに白石冬美や力石に仲村秀生、広川太一郎、増岡 弘といった声達者なメンバーも揃えていました。

劇場版『2』では、マンモス西・岸部シロー、白木葉子・檀 ふみ、力石・細川俊之など、多彩な顔ぶれを集めていました。筆者はだいたい“声”にガッカリする事が多いのですが、この作品郡は別格です。さすがは、出崎監督です。

エンディング・ソング「ジョーの子守唄」の悲哀と希望

名優・小池朝雄が切々と歌うララバイ

この曲は、アニメ『あしたのジョー』の虫プロ制作版の第1話~第40話のエンディングに流れた曲です。この曲の作詞は高森朝雄(梶原一騎の本名です)で、作・編曲が八木正生です。段平視線のジョーの姿を、原作者の梶原一騎がまとめ上げて、作品全体の音楽を担当している八木正生が作った隠れた名曲と言えるでしょう。

イントロ部と、曲中に時折流れる尺八の音色が“昭和”を感じさせてくれて、耳に心地イイんですよ。それを、『刑事コロンボ』吹き替え以前の小池朝雄(悪役俳優としては名を馳せていた)が、切々と歌い上げています。

子守唄(ララバイ)というよりも、哀歌(エレジー)に近いのでは?と思っていました。この曲は1970年発売のシングル盤「あしたのジョー」(歌:尾藤イサオ)のB面にカップリングされています。

『あしたのジョー』ジョーの階級は?

バンタム級に殉じた力石の意思を継承!



ジョーはプロテスト受験時(17歳)には身長164.5cm、体重52.5kgでした。ジョーは、リミットが53.52kgのバンタム級でデビューして自身の最終戦となるホセ・メンドーサ戦までこの階級を維持しています。それが、東洋タイトルマッチの金 竜飛戦(推定20歳)の頃になると、成長期のために身長が170cmに伸びています。体重も増加していた事でしょう。

食事はあろか、水分まで断って臨んだ1回目の軽量でしたが、パスはできませんでした。そこでジョーは、200ccの血を抜いて辛くも軽量をパスします。そこまでバンタム級にこだわったのは、力石が勝負のために自分から階級を合わせてくれた尊敬の念があったからでしょう。

“血を抜く”という行為に、驚愕したのを、筆者は今でも戦慄とともに覚えています。

『あしたのジョー』で描かれる戦いは熱い死闘だった

分岐となった幾つかの戦い

この項では、ジョーの戦いを観ていく上で分岐となった対戦を、筆者が独断で選んでみました。まずは、ウルフ金串戦です。この対戦は、もともとライセンス問題から端を発しましたが、ジョーが名を売ってきたのを目にした大高会長(ウルフ所属のアジア拳)が試合を組むように運びました。ウルフを売り出すネタと見たのでしょう。

新人王戦の控え室でクロスカウンターを喰らい、ウルフが倒された遺恨として記者に書き立てられての宣伝効果も“大”でした。そのパンチの威力を身をもって知ったウルフは、試合前に綿密な“クロスカウンター崩し”の対策を練ります。それが、クロスカウンターに、さらにカウンターを打ち込む“ダブルクロス”だったのです。

クロスカウンターでさえ、相手の力を利用して威力を引き上げる必殺ブローです。そのパンチを、さらにカウンターで返すのですから威力は計り知れません。

カウンター合戦に敗れて、ウルフは引退



そのダブルクロスを繰り出せるだけの正確さとスピードを、ウルフは持ち合わせていた事にもなります。「未来の世界チャンピオン」という異名は、伊達ではなかったというわけですね。

その“ダブル”を何発もらったジョーはフラフラになった体で、さらにカウンターをかぶせる“トリプルクロス”で応酬、見事に勝利を勝ち取りました。そして、この試合を最後にウルフのプロボクサー生活は終わりを迎えました。あまりの威力に、アゴの骨が粉砕骨折して再起不能となったからです。

客席で観戦していた力石が、この戦いを目の当たりにして、えらく感動していたのも印象的でしたね。この破滅への道程は、種類こそ違うものの、やがて力石、カーロス、そしてジョーにも降りかかって行く事になります。

そのシーンを読んだ時に筆者は改めて、力石の“目のつけ所”に凄味を感じていました。

宿敵・力石との決着

ウルフを破ったジョーは、いよいよ宿命のライバル・力石との対戦に燃えます。しかし、そのためには“階級制”という大きな壁がありました。プロでの先輩格の力石が、ジョーのバンタム級に合わせる事で、試合は決まりましたが、もともと力石は66.8kgがリミットのウェルター級です。

それを出院後にフェザー級(リミット57.15kg)に一階級落としてカムバックしましたが、バンタム級はさらに、その下の階級。その過酷な減量に耐えて晴れてリングに立つ二人の姿は、ジョーは対力石用の特訓のために体はボロボロ、力石は水分さえ絞り出してカサカサの状態です。それでも両者の目だけは、やけにギラギラしていた事が印象深かったです。

そして、運命のゴングがなります。テクニックでは一日の長がある力石が優勢かにも見えますが、膠着状態でした。

そこで突然、Rから力石が、「両手ブラリのノー・ガード戦法」に出ました。意表を突かれたジョー陣営でしたが、すぐさま段平とジョーはクロスカウンターを狙っている事に気づきました。こうなるとうかつに手が出せません。

そのまま、両者がノー・ガード戦法でにらみ合い、Rばかりが進んでいきました。そして最終の8R、我慢しきれずにジョーはストレートを放ちます。「クロスできたら、このダブルクロスで勝負!」とばかりに、ダブルを狙いましたが、トリプルでくると予想していた力石の姿はありません。

真下に潜り込んで、渾身の左アッパーを突き上げてきたのです。ジョーはフッ飛び、そのまま力石の勝利で決着はつきました。その負けっぷりも派手でジョーらしいと、筆者は少年ながら思いましたね。二人ともカッコよかったです。

最強王者、ホセ・メンドーサの待つリングへ



試合後の力石死亡のショックから、ジョーはテンプルへの打撃ができなくなってしましました。その間に日本チャンピオンのタイガー尾崎をはじめ他二人のランカーにも敗北を喫してしまいます。力石、後に戦うホセと合わせると、これで通算5敗です。

そのショックから立ち上がり、カーロス、金との東洋タイトル戦、ハリマオとの防衛戦とギリギリの戦いを経て、いよいよ「king of kings」ホセ・メンドーサとの世界タイトルマッチです。ジョーは自分がパンチドランカー症状に冒されていると知りつつ、白木葉子の静止を振り切って決戦に臨みました。

結果は15Rフルに戦っての判定負けです。その表情は満足気で、そして静かに眠っているようでした。まさに「燃え尽きた」という感ですね。このラストを読むたびに筆者はいつも、そう思います。

ジョーの名言は、いつでも心に突き刺さる

「このグローブを あんたにもらってほしいんだ」は生涯一度の愛の告白か!



最終回に近づくほどに、ジョーには“自分の人生を悟った”ような発言が目立ってきます。名言を挙げる上のクライマックスは、世界戦直前の武道館控え室ではないでしょうか。葉子が、スポーツ医学の権威・キニンスキー博士のジョーの症状についての見解を記した書を持参して説得します。

しかし、ジョーは「それが どうした」と言い「すでに半分ポンコツで勝ち目がないとしたって そういうことじゃないのさ」と続けました。ジョーは自分がパンチドランカーであると自覚していたのです。そして「世界一の男がリングで待ってる」と、控え室を出ていくのでした。

そして試合後、葉子に「このグローブを あんたにもらってほしいんだ」と差し出します。ジョーの素直で、そして精一杯の愛の告白なんでしょう。実に、美しすぎる告白シーンと言っても過言ではないと思いました。

『あしたのジョー』ラスト・シーンから見えるモノ

ジョーは「まっ白に燃えつきた」

ジョーはホセ戦を終えて、呟きました。「燃えたよ まっ白に まっ白に燃えつきた」。満足気な表情で、静かに眠るようにしてコーナーで座っています。この発言には作中に伏線があったと、後に作画のちば てつやは述べています。

それは、ホセ戦を前に紀子(食料品屋「林家商店」の娘)と歩いている時にジョーが発した「そこいらのれんじゅうみたいにブスブスとくすぶりながら不完全燃焼しているんじゃない。ほんのいっしゅんだぜ まぶしいほどまっかに燃えあがるんだ そしてあとはまっ白な灰だけが残る…燃えかすなんか残りゃしない まっ白な灰だけだ」という言葉でした。

このジョーのセリフこそが、全てを言い表しているのではないでしょうか。ジョーについては、生死は問題ではなく「燃えつきた」のです。筆者は“あした”を夢見ながら、少し休んでいるだけだと、今も思っています。

ジョーが残した「あしたのために…」とは?

未来の生き方を示してくれた「あした」

[あしたのジョー] 少年院送りになる矢吹丈に声をかける、元ボクサーの丹下段平。 あしたという存在を熱弁するも、荒れるジョーにはそのあしたが何であるかも見えず。 護送車に入れられた矢吹少年が《あしたのジョー》というタイトルを回収するのはもう少し先なのである。 #あしたのジョー #高森朝雄 #ちばてつや #きしめんマンガネタ #マンガ #漫画 #manga #Comics #anime #otaku #animeboy #ボクシング #Boxing #拳闘 #矢吹丈 #丹下段平 #少年院 #ドヤ街 #鑑別所 #あしたのために #不良 #雨 #少年マガジン #あした #Tomorrow #joe #Fighter #明日 #15歳 #中学生

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この『あしたのジョー』の連載が終了したのが、1973年です。“荒れる”時代から、“豊さ”の時代(オイルショックは目前でしたが)へと、変換して行った頃とシンクロしています。凄絶な青春を送ってきたジョーにとって、「ブスブスと燃えかすだけが…」と見えて、たまらぬ想いがあったのでしょう。

ジョーの場合は段平と出会い、打倒・力石に燃えたりと「あしたのため」の目的・目標がありました。パンチドランカーになっても、その達成感は何にも換え難いモノだったでしょう。その目標を持つ事の重要さを「シラケ世代」へ向けて発信したのが、この作品の後半部分の裏テーマだったのではないかと思えてなりません。

自分なりの「あした」を見つけて行く事の大切さを、この作品は教えてくれたように思います。

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