【ソラニン】種田の事故は「自殺」だったのか?一人の男の人生を切り取る

漫画家・浅野いにお先生の名作「ソラニン」。主人公・井上芽衣子の彼氏・種田成男のバイク事故が衝撃的でしたよね。そこで種田の事故は「自殺」だったのか?それとも「不幸な事故」だったのか考えながら、一人の男の人生をご紹介します。

『ソラニン』種田成男とは?


「ソラニン」の主人公・井上芽衣子と6年間付き合っている種田成男は、デザイン事務所のアルバイトで、スポーツ新聞などのイラストを手掛けている24歳の男性です。福岡に住む両親は共働きで、仲は良くなかったと芽衣子に言っていました。
眼鏡をかけている眼鏡男子で、移動にはスクーターを使用し、大学時代から友達とバンド活動をしていました。高校の頃、QOONELDASの曲を聞いたことをきっかけにギターを始め、音楽の世界へ駆り立てられています。

映画版では俳優・高良健吾さんが演じた

出典:https://www.amazon.co.jp

2010年には劇場版「ソラニン」が、女優の宮崎あおいさん主演で公開されました。種田役は、俳優の高良健吾さんが演じています。高良健吾さんは、2005年にドラマ「ごくせん」でデビュー、2010年には「ソラニン」を含む映画7本に出演し、2010年末に行われた「第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」の新人賞を受賞しました。
2016年NHK浅野連続テレビ小説「べっぴんさん」野上潔役、大河ファンタジー「精霊の守り人」シリーズ・ラウル役、CM「創味シャンタン」など大活躍の俳優さんの1人です。「ソラニン」では、高良健吾さんはギターにも初挑戦し、クランクイン前後2ヶ月間を使って練習に励んでいたと語っていました。
歌いながらギターを弾くのが難しいと話していましたが、再びソラニンのメンバーと演奏したいとも語っています。

恋人・井上芽衣子との関係

出典:https://www.amazon.co.jp

1年前から芽衣子のアパートに転がり込む形で同棲を始めていました。芽衣子は「種田」と大学時代からのよび名で呼び種田は「芽衣子さん」「芽衣子」と呼んでいます。決めた就職先が芽衣子には合わないのではないか?と言う種田の言葉が発端で、ケンカになってしまいました。
ケンカしたまま大学の軽音部の追い出しライブで、歌詞が飛んで思っている心情を曲に乗せて歌った種田。ライブ後に「僕は君が好きなんだ。」と種田が改めて告白し「うん。知ってた。……あのね、わたし、この街に引っ越すから。がんばって広めの部屋に決めちゃった。」と芽衣子も答えて同棲生活がスタートしました。


同棲してしばらくすると、就職先で限界を感じていた芽衣子フリーターで煮え切らない種田とお互い気持ちの変化が描かれていましたよね。何とか状況を打破したい芽衣子と、結論が出ないから、現状のまましばらく居続けたいと思っている種田という立ち位置もはっきりしていました。
大学卒業からフリーターになった種田と、会社を辞めたとはいえ、社会の荒波にもまれて過ごし、生活という現実問題も抱えている芽衣子という立場の違いも浮き彫りになっています。

種田成男の夢はバンドでメジャーになること

武道館で握りこぶし高々と掲げたい


大学時代からずっと一緒にバンド活動をしているのは、ベース担当の加藤賢一(通称・加藤、デブ)、ドラム担当の山田二郎(ビリー)の2人です。種田はギター&ボーカル担当。使用ギターはフェンダー社の「ムスタング」。
メジャーデビューをして、武道館でラストの曲が終了してもムスタングを掻き鳴らして、握りこぶしを高々と掲げたい!という夢はありました。大学の軽音部の追い出しライブでは、歌詞が飛んでしまって「歌詞なんていらねぇ!!直接全部言ってやる!!」と、種田が感じている心情を曲に乗せています。

出典:https://www.amazon.co.jp

大学を卒業してからは、スタジオを借りて練習をしてはいましたが、ライブ活動はしばらくしていません。芽衣子にハッパをかけられた後に、デザイン事務所のアルバイトは辞めています。
解散覚悟の意気込みで種田はデモCDを作成して、ライブハウスやレコード会社に送っていました。一発録りでデモCDに入れられた曲は、種田の歌う「ソラニン」です。

名言は意味深なセリフが多かった……

「……その時どうしてくれるの?一緒に死んでくれるの?」

出典:https://www.amazon.co.jp

芽衣子は「……種田、バンドやってよ!!」と過去に強く話したことがありました。突然言われて、いつも通りやり過ごそうとしていた種田に、その日の芽衣子は引き下がりません。自分の才能は平凡だと言う種田に、芽衣子はいつも逃げてばかりだと責め立てます。
「種田は誰かに批判されるのが怖いんだ!!大好きな大好きな音楽でさ!!でも、褒められてもけなされても、評価されてはじめて価値が出るんじゃん!?」「……それで……ホントダメだと思ったら……その時は、その時だけど……」と、種田に本気になって欲しくて声を荒げながらもトーンダウンする芽衣子。
「……その時、どうしてくれるの?一緒に死んでくれるの?」と、種田は真剣な顔で言っていました。すぐに冗談だとは言っていましたが、芽衣子の本気にいつも煮え切らない種田が本心で呟いた瞬間でしたよね。

「あたり前のことだけど、奇跡的に幸せな瞬間なのかもな。」

出典:https://www.amazon.co.jp

メジャーデビューの夢を叶えるために、デモCDを作成してライブハウスやレコード会社に送った日に、芽衣子やバンド仲間と花火大会を楽しもうと海岸へ向かっています。予想以上に花火大会の花火は小さく、自分たちで持参してきた花火を楽しみました。
種田は、みんなが花火を楽しんでいる様子を見て「あたり前のことだけど、奇跡的に幸せな瞬間なのかもな。」と言っています。種田本人が自分の行く末を感じていたのは分かりませんが、芽衣子のこと自分の将来がどうなっていくのか?など色々な感情が込められているセリフですよね。

種田成男はどうして死んだのか?【ネタバレ】

出典:https://www.amazon.co.jp

憧れていたQOONELDASの冴木隆太郎が、有名なレコード会社のビジネスマンとして種田の前に現れます。デモCDを聞いた冴木は、種田たちにアイドルのバックバンドとしてCDデビューしないか?と話を持ちかけましたが、芽衣子が断り決裂……。
種田と芽衣子の気持ちにも、それぞれ限界が見えて来たのもこの頃からでした。ある日種田はボートに乗った時に芽衣子に別れを切り出し、芽衣子が取り乱してボートから落ちてしまったことで、別れ話はうやむやになります。
家に帰った種田は「……ちょっと散歩してくる」と言って家を出ていきました。それから5日間は音沙汰が無かった種田……。実は辞めたデザイン事務所に頭を下げ、契約社員として再雇用してもらっていたのでした。


種田は生活基盤を整え、考えがまとまった上で電話してきたのです。「芽衣子さん、これからは2人で幸せになろう」と芽衣子に伝えてアパートに帰ろうとしていました。
乗っていたバイクで幸せについて考えながら走っていると、これが求めていた幸せなのか?と自問自答をして涙を流しています。走らせていたバイクを赤信号に突っ込ませて交通事故を起こしてしまいました。ヘルメットが頭から取れてしまい、地面に頭をぶつけて出血して急死……。

種田の死後は、芽衣子が「ソラニン」を歌った

出典:https://www.amazon.co.jp

あっという間にこの世を去ってしまった種田は、芽衣子や仲間たちに大きな心の傷を残しています。それでも残された人間は前を向いて歩いていかなくてはいけない……。芽衣子は、種田のギター・ムスタングを使ってバンド活動を開始します。
これまでは見ていた側だった芽衣子は、種田を亡くした気持ちを埋めるようにギターに没頭していきました。加藤とビリーは、種田のムスタングとエフェクターを使っている芽衣子を見て、生前の種田がそこにいると感じて驚いている表情を見せています。
芽衣子がバンド演奏で選んだ曲は、種田が残した「ソラニン」でした。全力で歌った芽衣子。このシーンは、種田を亡くした現状から、前を向いて歩いて行こうと思えた瞬間となりましたよね。

種田成男の「死」を考察

出典:https://www.amazon.co.jp

種田が赤信号で突っ込んだことによる交通事故は、ファンの間でも「自殺」「いや、違うんじゃないか」など様々意見が出ていました。事故直前のシーンの精神状態としては、涙を流していたので、とても平常心でバイクを運転しているとは感じられませんでしたよね。
本当に幸せなのか?自問自答しながら涙を流していましたが、事故の後の回想シーンから最後のシーンまで、同棲するきっかけになった追い出しライブの後に作っていたラブソングを思い出し芽衣子に帰ったら聴かせてみようと考えていました。「帰ろう。早く家に帰ろう」と、芽衣子との未来を思い描きながら亡くなっています。


原作者の浅野いにお先生は、2017年に発売された「ソラニン新装版」(新装版では10年後の芽衣子たちのその後も収録)のあとがきで、種田が好きではなかったと記していました。そして、種田の交通事故に関しても、未来への願掛けの意味があったのでは?と語っています。
赤信号を無事に渡り切れたら、芽衣子と明るく未来を一緒に歩んで行く……と考えていた種田。生きている間に何度か「死」を意識していたセリフを残している種田には、当たり前の願掛けだったのかもしれません。

【ソラニン】種田の事故は自殺ではなく未来への賭けだった

出典:https://www.amazon.co.jp

漫画家・浅野いにお先生の「ソラニン」は、大学を卒業して社会人になった井上芽衣子と、大学を卒業してもバンド活動とフリーターを変わらずに続けている種田成男の恋人同士の葛藤を描いた作品でした。
現実社会なら、別れたり、夢を諦めて恋人を選んだりと、社会人になった大人たちが歩んでいる結末になるのが多くのパターンですよね。ところが「ソラニン」は、もがき苦しんでもう一歩で答えが出そうなところで種田が交通事故で死去します。
交通事故は「自殺」に近い「願掛け」をした結果の事故で、登場人物たちだけではなくファンも考えさせられる出来事となりました。社会人になろうとした種田の最後の賭けは悲しいものでしたが、亡くなる直前まで未来を考えて自問自答を繰り返していた種田は、一生懸命に生き抜いた人物だと思います!

こちらの記事もチェック!