土壇場でのみ力を発揮するけれど普段はダメ男…伊藤カイジの人間性を掘り下げてみる

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1996年より25年以上連載を続けるカイジシリーズ。その主人公・伊藤カイジはギャンブル依存症で生活能力のないダメ人間と評価されていますが…実際のところ、どうなんでしょう。カイジという人間の本質と魅力を深堀りしていこうとと思います。

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導入

熱い人間模様と詳細なギャンブル描写で有名な福本伸行先生の代表作の1つであるカイジシリーズ。
1996年の賭博黙示録(とばくもくしろく)カイジに始まり、賭博破戒録(とばくはかいろく)カイジ、賭博堕天録(とばくはかいろく)カイジと続き、2021年現在、連載は25年に及びます。
時にはギャンブルで大金を得ても、またすぐに失って次のギャンブルへ飛び込む主人公の伊藤(いとう)カイジ、端から見たらただのギャンブル中毒の屑人間ですが、実際の所、彼はどういった人物なのでしょうか…?

伊藤カイジとは…?

伊藤カイジ21歳、高校卒業後、千葉県より上京してきたものの、特に定職に就くでもなくぶらぶらとしており、酒と煙草、そして高級外車に疵を付けたりエンブレムをパクったりといった憂さ晴らしで日々を過ごしていた典型的なだめ人間でした。
自堕落な上にコミュニケーション能力も低く、愛想も悪いと日常生活で褒めるべきところが皆無の人間です。
知人(後述の古畑)の連帯保証人になった為に背負った事でギャンブル客船・エスポワールに連れて行かれる事となりました。

ギリギリのタイミングで力を発揮するカイジ

さて、そんな屑のカイジ君ですが、日常生活でこそ登場人物の多くから「人間のくず」「だめ人間」と言われているものの、極限状態に追い込まれると普段からは考えられない度胸と知恵、そして悪魔的な発想で圧倒的な強者を地獄にたたき落とす天才ギャンブラーに様変わりします。
時にはいかさまや有り得ない行為にも手を染めつつも、それを納得される理論を、文字通り命がけで積み上げていきます。
時には自ら耳をそぎ落とし
またある時はギャンブルに負けた罪を償う為に左手の指4本を切断されると言う
時には敗北することもあり、結果、身体の様々な部分に大けがを負っています。

善人と言えば善人、お人好しと言えばお人好し

一方でカイジ君、自分に甘い分、他人にも甘い部分が多くあります。
バイト先の知人である古畑の借金の連帯保証人になったり(これは事の重大さを知らなかっただけかも知れませんが)、大金を支払って友人の息子を救ったり、同志を助ける為に命を賭けたりと、彼が人を助けた例は枚挙がありません。
その結果、慌てて作られた借用書でギャンブルの勝ちを殆ど奪われたり、助けた仲間に裏切られたり、時にはその命すら危険にさらされる事もあります。

カイジを裏切った仲間たち

以下は25年間の歴史の中でカイジ君を裏切っていった仲間たちです。
時には保身の為に、時には利益の為に、また時には逆恨みで…と裏切った理由は様々です。

古畑 武志(ふるはた たけし)

まず最初はカイジをギャンブル地獄に連れ込んだ張本人とも言うべき人物・古畑です。
彼がカイジ君を裏切る理由は「保身」です。
最初の借金の押しつけも、カイジ君が憎い等ではなく、純粋に自分が借金を返したくないの一心でした。
さらにその後も借金を重ねてエスポワールで再開した後、恥ずかしげもなくカイジ君に頭を下げ、共闘を頼み込みます。
しかしその謝罪も、その後の涙すらも全て自己保身の為でした。
最後には、後述する安藤の甘言に流され、2度も自身を救ったカイジ君を
「カイジさん、すいません」
の一言で切り捨てていきました。
この「保身」と「同調」の為に恩人すら平気で裏切るメンタリティは、後述の三好同様、悪事は決して悪意から生まれるのではないという事を考えさせてくれます。

安藤 守(あんどう まもる)

前述の古畑、そしてカイジ君と3人で組んでエスポワールを生き抜こうとしたメンバーの1人です。
自分より強い奴にこびへつらい、弱い人間を徹底的に叩くという気質で、最初に組んだ直後、すぐに古畑を裏切ろうと試みたり、最後の最後、カイジ君が命を賭けた挑戦をして、絶対に助けると約束した安藤は土壇場で古畑を説得してカイジ君を裏切ります。
そこに至るまでの道中の言動もとにかく薄汚く
「人間として救いようのないクズ」
「クズの中のクズ」
「キング・オブ・クズ」
と最低の評価を下されています。

大槻 太郎(おおつき たろう)

最近では「一日外出録ハンチョウ」というスピンオフ作品で主役に抜擢され、グルメで多趣味の好漢として描かれていますが、原作の彼を知っているとすさまじい違和感ではないでしょうか。
朗らかな笑顔で心をつかみ、いかさまサイコロを用いたチンチロリンや暴利をむさぼる物販販売で僅かな金銭すら奪い去る彼はとんでもなく邪悪な存在です。
エスポワールでこしらえた借金を返させる為に地下の建設現場に連れてこられたカイジ君は当初、地下からの脱出の為に節制して貯金を試みていました。
そんな彼に大槻が差し出したのはキンキンに冷えたビールでしたが、これこそが彼の策略でした。
このビールはカイジ君の脱出という熱を奪い去り、散財へと導いたのです。

三好 智広(みよし ともひろ)

前述の地下建設現場で借金返済の為に閉じ込められていた1人で、調子に乗りやすく、気弱なギャンブル中毒者だった彼は大槻のチンチロリンに嵌まって地下でも借金漬けになっていました。
そんな中、彼に救いの手を差し伸べたのがカイジ君です。
カイジ君はじめその他の借金漬けの仲間と協力しあって大槻から大金をせしめた後、彼らは自分達の取り分をカイジ君に託しました。
結果カイジ君は地上で大成功し、彼らを無事解放してめでたしめでたし…だったのですが…
その後にカイジ君が取り分の殆どを自分のものにした(と、吹き込まれた)三好は、事もあろうにカイジ君を嵌めようとします。
自分を立ち直らせて、地下からすくい上げてくれた恩人を嵌めようとする彼の気持ちは理解し難いですが、前述の古畑同様、彼もまた、流されて人を裏切る事ができるタイプなんでしょう。
人が人を傷つけたり裏切ったりするのは「悪意」ではなく「保身」や「同調」なんだと、福本先生が語られているかの様ですね。

それ以外

本作に詳しい方だと10分3割という暴利で金を貸した遠藤や心拍数などを盗み見てEカードで勝利しようとした利根川、そしてサディストで様々な事件の黒幕である兵藤和尊といったキャラクターが登場しないことに首をかしげるかもしれません。
しかし彼らは厳密には「裏切っては」いないのです。
あくまで各々の立場や嗜好の為にカイジ君と対立しているだけであり、裏切り者ではないので注意が必要です。

それでも人間を信じるカイジ

エスポワールにはじまり、鉄骨渡り、地下帝国でのチンチロリン、麻雀「17歩」そして宿敵・兵藤(ひょうどう)の息子である和也とのギャンブルと様々な地獄を経験してきたカイジ君。
その中で前述の「クズども」や、それ以外の人々に何度も裏切られ続けました。
そんな中でやはり仲間だと思っていた同級生に裏切られ、人を信じられなくなった兵藤和也と出会います。
同じ様に裏切られきたカイジ君と和也。
和也が準備した独自のギャンブル(和也プロデュース)である友情確認ゲーム、そしてワンポーカーを経て、カイジ君は人間を信じる事を和也に伝えるのでした。
そんな中でカイジ君は2人の信頼できる仲間(チャンとマリオ)、そして24億円もの大金を得る事になりましたが…先行きはまだまだ不安そうですね。

まとめ

結論からいうとカイジ君は「クズ」ではありません。
後先を考えられない、努力ができないといった決して褒められない部分こそあるものの、出会ったばかりの人の為に大金や命を賭ける事ができ、そして裏切られても自分の生き方を変えない、むしろ好漢にすら見えます。
一方で、彼の周りはと言うと、残念ながらクズが多く見られます。
これは彼の生活圏がそういったクズの多いギャンブルの世界や裏社会だというのが理由でしょう。
日常シーンに登場するキャラクターについてはいわゆる普通の人ばかりです。
しかし、彼がそういった表社会では居心地の悪さを感じてしまうのが最大の問題ではないでしょうか。

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