最強の捕食者でありながら人としての生き方に焦がれた妖魔「北のイースレイ」を考える

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2001年から実に13年間という長期連載となったクレイモア。本作中でも最強クラスの実力を持ち、敵側でありながらも気品あふれる態度とどこか悲し気な雰囲気のあったイースレイ。彼の哀愁と行動について考察します!

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CLAYMORE(クレイモア)とは?

クレイモアは2001年に月間少年ジャンプで連載を開始されたファンタジー漫画です。
人間を捕食する妖魔と言う怪物が存在する大陸で、その妖魔を狩る半妖半人のハンター・クレイモア達を時に華麗に、時に残酷に描いた作品で、同誌でも人気の作品となりました。
月間少年ジャンプが休刊になってからは創刊されたジャンプスクエアに移籍して順調物語が進み、2014年、実に13年という長期連載に終止符を打ちました。
ファンタジーといっても、全体的に陰鬱な雰囲気がつきまとい、いわゆる魔法の様な超能力が一般的ではない、ハイファンタジーやダークファンタジーと呼ばれる類である本作。
今回はその魅力、特に敵方でありながら主人公の相方でもある少年ラキを育て、作中最強の敵であるプリシラを葬る為の大きな布石となった重要キャラクターである北のイースレイにスポットライトを当てていきましょう。

作者・八木教広について

さて、そんな本作の作者である八木教広先生ですが、古い漫画読者の方ならご存知、月刊少年ジャンプで連載されていたエンジェル伝説の作者さんです。
エンジェル伝説は、心は天使、見た目は悪魔の高校生・北野君がその外見で巻き起こす騒動を描いたコメディ作品で、クレイモアとは世界観も作風も真逆といって良い様な作品です。
クレイモアの連載が始まった当初、過去の作品をご存知の方は大変驚かれた事でしょう。
現在は活躍の場を少年サンデーに移し、子供向けファンタジー漫画『蒼穹のアリアドネ』を連載中です。

クレイモアの世界観

クレイモアの世界は、中世ヨーロッパをモデルにした世界観です。
板金技術や鉄の槍や剣はありますが、火薬を用いた銃火器などはありません。
しかも、ファンタジー世界では一般的な魔法や超能力も無く、超常的な力は妖魔に関わるものがほとんどとなっています。
そのため、クレイモアの世界の人々は、圧倒的な身体能力や擬態能力を持つ妖魔相手に、原始的な武器のみで立ち向かわなければならず、結果クレイモア達に頼る必要があるのです。

クレイモア

妖魔を討伐するために後述する組織が造り出した半人半妖の戦士達です。
普通の人間が妖魔の血肉を体に移植する事で、人間よりも高い身体能力と、妖魔をかぎ分ける能力を有しています。
作中当時、クレイモアは全員が女性であり、クレイモアになった際に眼や髪の毛を含め銀色に変色している為、「銀眼の魔女」や「銀眼の斬殺者」といった通称で呼ばれています。
高い身体能力以外にも病気や毒への耐性、不老、ほとんど食事を必要としないといった人間を超える能力を持つ彼女たちですが、徐々に妖魔に近づていき、最後は妖魔となって殺害される運命が待っています。
ちなみに彼女たちや組織が「クレイモア」という名称を使う事はなく、これは大剣(クレイモア)を振るって妖魔を斬殺する彼女たちに部外者がつけた通称で、彼女たちに正式な名前はありません。

妖魔

作中世界において大昔から存在するといわれている、人間を捕食する存在です。
捕食した人間に擬態することが可能で、脳を食べる事で記憶まで奪うことができるため、家族や友人であっても彼らを妖魔だと見抜く事はほとんど不可能で、妖魔の仕業とみられる殺人事件が発生した町は高いお金を払ってクレイモアを雇うという選択をとる事になります。
正体を現すと無毛巨大な口と牙、金色の眼を持つ姿になります。
基本的には人間を凌駕する身体能力と、腕を伸ばす、空を飛ぶといった様々な能力を有する存在です。

覚醒者

作中序盤では「異常食欲者」という名称で妖魔の特殊個体とされていた覚醒者ですが、真実の覚醒者はクレイモアが妖魔になった姿です。
妖魔を凌駕する高い身体能力と戦士としての技量を持つ覚醒者は非常に危険であり、組織では覚醒者狩りは複数名で行うことを義務付けるほどです。
理論上、すべてのクレイモアは最終的に覚醒者になる事になりますが、クレイモア達は自分がもう妖魔になるしかない状態に陥った際に、親しい仲間に自分を殺してもらう様にお願いするのが通例となっています。
覚醒者の中でもその時代最強のクレイモアが覚醒した存在を「深淵の者」と呼び、作中では3名の深淵の者が登場します。
元々は優秀な女戦士だった「西のリフル」
他のクレイモアと精神を共有するという試験体が覚醒してしまった「南のルシエラ」
そして本稿で紹介する男戦士が存在した時代のナンバー1だった「北のイースレイ」です。
ちなみに覚醒者、深淵の者ともに、人間・クレイモア時代の記憶はすべて有しています。
覚醒者の中にはクレイモア時代の序列に拘ったり、思い出を語る者もいますが、総じて性格は妖魔の様なものとなっており、人間性や優しさは無くなっている様です。

組織

組織はクレイモアを作り出す結社です。
クレイモアを作り出し、統括し、妖魔が発生した村に派遣するといったことを行っています。
なぜこの組織だけがクレイモアを作り出せるのか、何が目的かなど、様々な謎を有しています。

地理

本作の舞台は十字の形をした大陸で、

登場人物達

本作は長い連載の中で魅力的なキャラクターが非常に多く登場しますが、今回は考察に必要な4名だけを紹介します。

北のイースレイ

組織が「男の戦士」を作っていた時代に、実力ナンバー1だった人物で、最初に「深淵の者」になった人物でもあります。
北の地アルフォンスを支配していることから「北のイースレイ」と呼ばれていて、人間としての姿では長髪の男性です。
後述する新たなる覚醒者・プリシラと出会い、彼女に勝てないことを悟って仕えることになりました。
後にラキを拾い、彼を利用してプリシラを殺すことを考えるのですが…。

ラキ

本作の主人公であるクレアがある町で助けた少年です。
家族が妖魔に成り代わり、他の家族を惨殺してしまった為、天涯孤独となってしまった彼は、恩人であるクレアを慕って共に旅をすることになりました。
しかしクレアと別れている間に奴隷商人につかまって北に送られ、後にイースレイに保護されることになりました。
その後、己の無力さを感じたラキはイースレイから剣術を学び、プリシラに慕われて3人で家族の様に過ごす事になりました。

プリシラ

クレアがクレイモアになる少し前、当時最強と言われた『微笑のテレサ』に継ぐナンバー2の実力者だったクレイモアです。
クレイモアになりたての頃からずば抜けて強く、圧倒的な素質を持ってたがために経験が足らず、最強の能力と不安定なメンタルを持ったアンバランスな存在だった彼女は、テレサを討伐する際に覚醒し、覚醒者となってしまいました。
後に北の地に渡り殺害と飽食の限りを尽くしているところをイースレイに発見され、ともに生活することになりました。
覚醒した後も実力こそずば抜けているものの、精神的に極めて不安定で、幼児退行している状態です。
イースレイは実力的には彼女にかなわないとして、味方につけていますが、本心では彼女を殺害する方法を探していました。

主人公クレア

最後に紹介するのは本作の主人公であるクレアです。
前述の『微笑のテレサ』によって助けられた彼女は、テレサがプリシラに殺害された後に史上初めて自らの意思で組織に行き、クレイモアになる事を願い出た人物となりました。
彼女は妖魔の血肉を埋め込んだ他のクレイモアと異なり、テレサの血肉によってクレイモアになった特殊タイプで、その能力は妖魔のハーフならぬクォーターで、戦闘力も最下位です。
それでもある特別な技術を磨き、テレサをプリシラの殺害を第一目標としています。

考察・イースレイの欲しかったもの

複雑な人間関係の絡み合う本作ですが、当初のイースレイは覚醒者らしく欲求に忠実で、あるがままに自身が最強としてふるまう事が目標だったといえるでしょう。
その為には自分よりも圧倒的に格上のプリシラの存在は非常に厄介だったといえます。
そんなプリシラを殺害する為、妖気を発さず、プリシラから見たら論外の存在である人間のラキに対妖魔の技術を教え込んでいました。
しかし、幼児退行したプリシラと無垢なラキとの3人の穏やかな生活が、覚醒してから彼が感じた事のない温かみのある生活だったのでしょう。
少しづつそんな生活を居心地よく感じていったのではないでしょうか。

最期

しかし、そんな生活が決して長く続かない事、そしてプリシラが深層で死にたがっている事に彼は気づいていたのかもしれません。
最期、彼はラキにプリシラを託し、自ら囮となって彼らの下から消え、今わの際にラキ、プリシラと3人で家族として暮らすことを夢見て消えていきました。
イースレイの人間的な態度に対して、同様に覚醒者であるクロノスは、覚醒者は人間の様に思考しないと否定しますが、暴虐の限りを尽くし、欲望を全てかなえた後に到達する最後の欲求とは、案外平凡で、素朴はものなのかもしれません。
勿論イースレイが覚醒してからそこに至るまで、無数の命を弄んできた事でしょう。
しかし最期の最期、彼は自分ではない人の為に戦い、そして最強最悪の存在を消し去る『銀の弾丸』としてラキを鍛えたのは紛れもない事実だったのではないでしょうか。

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