物語は次の時代へ…無限の住人の最終回を語る

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1993年から2013年まで、実に20年と言う超長期連載となった、不死身の侍・万次の活躍を描いた無限の住人。ネオ時代劇と言われる本作衝撃のエンディングを考察します!

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無限の住人とは

無限の住人は、寄生獣等青年向けの漫画作品で有名な月刊アフタヌーンにて連載されていた江戸時代を舞台にしたチャンバラアクション漫画です。
まるで鉛筆で書かれた様な繊細な画風と外連味溢れるキャラクター、そしてただの時代劇に留まらない、後述の不老不死を与える『血仙蟲』というギミックとそれを中心としたストーリーで大人気を博し、1993年の連載開始から実に19年間に及ぶ超長期連載となりました。
作品世界は漫画に留まらず、舞台や映画などにも及びました。
特に映画については主人公の万次をあの元SMAPの木村拓哉さんが演じた事や、登場人物の中に歌舞伎の市川海老蔵が参加する等、決してメジャーとは言えない漫画雑誌での連載作品とは思えない豪華な顔ぶれで大きな話題となりました。
また、漫画、アニメ、映画すべてにおいて日本国内に留まらず、海外でも高い評価を得ていました。

そんな無限の住人ですが、その長いストーリーの為か、ラストがややマイナーなのが非常に残念な点として挙げられます。

万次の最期は?ライバルとなる天津影久(あのつ かげひさ)はどうなったのか?ヒロインの浅野凜(あさの りん)は?そして血仙蟲の謎は…?

今回はそんな無限の住人の最終回とカーテンコールの後を追っていきましょう。

作者・沙村広明先生

まずは作者である沙村広明先生についてご紹介しておきます。
沙村先生は子供時代からひたすらに漫画家を目指し続けて、漫画に留まらず様々なジャンルで多くのクリエイターを輩出した名門・多摩美術大学を卒業されています。
多摩美術大学は当たり前と言えば当たり前ですが漫画研究会が非常に活発で山田玲司先生をはじめ、ウエダハジメ先生、冬目景先生、きらたかし先生など、様々な漫画家が所属されていました。
油絵やデッサンを授業で学びつつ、漫研で同志と切磋琢磨しながら沙村先生は漫画家としての基礎を学ばれたのでしょう。
ちなみに『無限の住人』で有名な上に、手塚治虫先生の時代劇モノである『どろろ』のゲーム化に当たってのキャラクターデザインを担当されたこともあって、時代劇作家の様に観られがちな沙村先生ですが、意外とそれ以外の作品についてはチャンバラものが少ないのも特徴です。

作品紹介

おひっこし

竹易てあし名義で描かれた短編作品集の中でも代表的な作品です。
繊細な絵柄と大胆なパロディ、メタネタ等で大学生の青春を描いたコメディ漫画です。
まるで本当にどこかにいそうな魅力的なキャラクター達とその揺れ動く心情をリアルに、そして滑稽に描いた名作と言えます。
特に最後、振られた女の子のせりふである
「さっさと終われ、私の青春(あ、今終わったか)」
は、失恋経験のある方ならだれもが共感できる、力強いセリフではないでしょうか。

ハルシオンランチ

『おひっこし』とはまた違う方向性の現代を舞台にしたコメディ漫画です。
会社が倒産し、部下にお金を持ち逃げされ、挙句の果てに家族にも逃げられたホームレスの40歳男・化野元が釣りをして糊口をしのごうとしているところに現れたのはヒヨスと名乗る謎の美少女。
なんでも食べてしまうヒヨスは宇宙からやってきて、ある特別な使命を帯びていた…。
というところから始まるSF作品です。
やはり様々なパロディ、メタネタ満載の作品で、全二巻と短いながらも強い印象を与えてくれる作品でしょう。

ベアゲルター

中国の売春宿で発生した殺人事件に端を発する怪事件が、世界中で騒動を巻き起こし、やがて日本の売春島と言われる島につながっていきます。

上記の作品たちと異なり、エロスとバイオレンスの融合がテーマだけに、沙村先生の描く魅力的な女性たちのあられのない姿を拝むことができる作品でもあります。

ブラッドハーレーの馬車

沙村先生の得意な作風の中でも「エロス」に力を入れた作品です。

無期懲役の囚人の性的欲求・破壊欲求を解消させるために全国の孤児院より女子を買い取って囚人に与えるという非常に残酷な所業が行われているとある国の実情を描いた本作は、暴力、エロス共に極めてグロテスクなものとなっています。

波よ聞いてくれ

現在連載中で、しかも2020年にはアニメ化もされた、沙村先生の作品の中でも現在最もホットな作品ではないでしょうか。

北海道は札幌市内のスープカレー屋で働く主人公・鼓田ミナレ(こだみなれ)はたまたま知り合ったラジオディレクターの麻藤兼嗣(まとう かねつぐ)に聞かせた失恋の愚痴を録音され、それをラジオで流されてしまいます。

それを聞いたミナレは怒り心頭でラジオ局に怒鳴り込み…。

という流れで始まる現代のラジオを舞台にしたコメディ漫画です。

沙村先生お得意の暴力もエロスも封印し、もう1つの特徴である切れ味の良いキャラクターのセリフにフォーカスした作品で、沙村先生曰く「誰が読んでも大丈夫な漫画」と一般受けを狙った事が伺え、結果無限の住人に続く代表作となりました。

主人公・万次について

さて、無限の住人に話を戻しますが、主人公の万次は前述の通り、不死身の存在です。

実在の伝説(?)に登場する不老不死の尼僧・八尾比丘尼によって『血仙蟲』を移植されて不老不死になった万次は不死身の肉体になる前から圧倒的な力を誇る剣豪でした。

不老不死になった事で戦闘の緊張感が薄れ、徐々に腕が鈍っていくことを悩んではいますが、不死身の肉体と相まって最強と言える力を持っています。

本作のヒロインである浅野凜(あさの りん)の復讐への助太刀が本作のメインストーリーになっていますが、同時に万次の不死身の秘密を付け狙う連中との闘いも本作の大きな軸となっています。

キーワード・血仙蟲

チベット仏教のラマ僧が作り出したといわれる究極の延命術である血仙蟲は、その名の線虫を体に寄生させ、不老不死を得る技術です。
血仙蟲が体内に入り込むと、どんなダメージを負ってもすぐ様体内の蟲が体を再生してくれます。
このダメージには老化現象も含まれており、血仙蟲を移植された瞬間から、一切歳も取らなくなります。
実際、物語スタートの時点で、万次は血仙蟲を移植されてから50年が経過していると言っており、やはり不死者である閑馬永空は200年を、そして万次に血仙蟲を移植した八尾比丘尼に至っては800年が経過したと語っていました。
しかし、あくまで血仙蟲を移植された瞬間が起点になる為、移植前に負った怪我等については癒えることがありません。
一方で、登場人物の1人である閑馬永空(しずま えいくう)が所有する体内の血仙蟲を殺してしまう毒薬『血仙殺』を使用されると、それまで血仙蟲が癒してくれた傷も全て開き、死んでしまう事になります。
この点について万次は
「蟲のつなぎで生きている」
なんて表現をしています。
閑馬永空はチベットでこの毒薬を見つけた、と言っている事から、やはり血仙蟲はチベットが起源の様です。

エンディングシーンの考察

そして最終回。
見事復讐を果たし、そして万次を兄として、父として慕う凜の吐露で終わった前回から舞台は飛んで、1882年(明治15年)です。
相変わらず万次は変わらず生き残っており、ある少女に出会います。
その少女が「この絵の男に会ったら渡す様に母様に持たされた」と言う小刀。母は婆様に、婆様はその婆様に渡されたという小刀、そこには作中、アイヌの娘・瞳阿にもらった「ウヌカラカンナスイ(離れても再び会う)」と書かれた言葉が。
その驚きから、きっと万次は復讐を遂げた凜とその後別れ、そして90年後にその子孫と巡り会えたのでしょう。
このシーン、不老不死のさみしさと、そして永遠に生きていれば別れてしまう、けれどまたいつか出会える…そんな『不老不死の素敵な所』を教えてくれた様な気がします。

そして続くストーリー

2019年、『無限の住人 ~幕末ノ章~』の連載が始まりました。
協力は沙村弘明先生、原作は滝川廉治(たきがわれんじ)先生、作画は陶延リュウ(すえのぶりゅう)先生。
舞台はその名の通り幕末。
キャッチフレーズはずばり『公式続編』(こうしきすぴんおふ)
そう、時代が変わっても姿も生き方も変わらぬ万次の活躍をまた楽しむことができるのです。
1993年の連載開始から、現実世界で四半世紀、作中で80年以上が経過しました後日談を、今後も楽しみにしていきましょう。

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