【SS】2016年冬アニメヒロインがもし運動会をしたら?

もし2016年冬アニメヒロインがもし運動会をしたら?ということを考えながら書いたSSです。今回はキャラ立ちのいいヒロインが集まっておりますので、ぜひご覧ください。

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 ゲームを作るために誕生した六波羅はさっそく行き詰まっていた。

 室内には赤く染まった夕日が差し込んでいるが、十月のこの頃はやけに寒く感じられる。廊下では帰宅部の生徒が他愛もない話をし、グラウンドからは野球部とサッカー部の声が響いている。

 どの部活も、生徒も順風満帆な時を過ごしているようだが、この部室だけは違った。

「まだできないのかしら?」

 パソコンとにらみ合っている北条の横から、黒田が声を低くして尋ねる。

「煮詰まった感じがしてさ、キャラが濃い人いないの? できれば学生で」

「学生はいつも普通なのよ。とくにこの学校の生徒を見る限りではね」

 黒田は腕を組むと窓の外を眺めた。

 ふと目に入ったのは、校門付近にいる見知らぬ制服を着ている学生だ、おそらくは隣町にある学校。

「ねえ、北条君」

「なんだ? いいキャラでも思いついたのか?」

 パソコンから顔を話して、北条は助けを求めるような視線を黒田に向ける。その手は一時間前からまったく動いていない。

 黒田はわずかに口の端を釣り上げて。

「他の学校……いえ、人たちにも協力してもらうのはどうかしら?」

「?」

「つまり、いま人気の人たちを集めて誰がヒロインの参考として相応しいか決めるのよ」

 かみ砕いで説明した黒田に北条は首をかしげる。

「いいとは思うけど、候補者がそんなにいるのか?」

 黒田はふふっと笑みさらに深くした。

 何のことはない、美少女ゲームを作っている兄からはいろんな情報を得られるのだ。今までのゲームのヒロインとして参考にされた人を何人か黒田は知っている。

 とくにその中でも数名はキャラが濃く、記憶にこびりついているのだ。

「大丈夫よ。それに競わせ方もすごく公平にしているわ」

「じゃあアポイントメントと、その方法について……まあ全部だけど、任せていいんだな?」

「もちろんよ。最高のゲームを作るにはこれくらいしないと」

 黒田はスキップでもしそうなほど軽快な足取りで部室を出て行った。

 数日後。

 六波羅の部室には五通の手紙が届いていた。

「今回運動会に参加してくれるのは、五人よ」

 それぞれの手紙に目を通した黒田が高らかに告げる。

 そして、一枚の紙を北条の前に突き出した。

「ヒロイン選定と運動会?」

 眉根を寄せた北条はまじまじと書かれている内容を追っていく。

 しばらくして北条が視線を黒谷向けると、呆れた様子でため息をついてきた。

「まじかよ、こんなの本当に出来るのか?」

「大丈夫よ。参加承諾は見てのとおり、それに学校や企業のアピールにもなるからって援助金まで出してくれるのよ。だから、県の小さなスタジアムを借りることができたわ」

 ここまでしてくれるのは予想外だった。本来ならば学校のグラウンドでやりたかったのだが、申し出を断るわけにもいかない。お金を出してくれるというのであれば甘えておこう。

 驚きを隠せない北条の目がさらに見開かれる。

「ここまでやるからには、絶対魅力的なヒロインを完成させるわよ」

 そう意気込んで黒田はさっそく日程と競技内容を考え始める。

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 外から聞こえてきたあの煩い声よりも、彼女の鼓動は高くなっていた。

 当日は雲一つない快晴だ。この肌寒い時期にはありがたく、風もそれを見越しているのか、まったく吹いていない。

 これならば厚着をすることなく、自然体で競技ができるだろう。

 小さなスタジアムには、既に競技選手とその関係者が集まっており、テントと競技本部も設置されている。和気藹藹とした雰囲気が漂う中でも、どことなくピリッとした緊張感が混じっている。

 事前に連絡しておいた、この運動会の主旨『ゲームの参考ヒロイン選定』が彼ら彼女らの頭のなかにあるのだろう。

 そして。

「ではこれより、今日の目的と競技内容の説明を行います」

 マイクから流れてきた透き通った声に、スタジアムの人々は本部のほうへと視線を移した。

 そこには白を基調としたジャージを着ている女子生徒がパイプ椅子に座って、マイクを持っている。背中には『方南学園』とでかでかと書いてあった。

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 マイク放送につられて、選手たちは横一列になって本部店と前に集まった。

 壇上に立つのは黒田と、先ほど放送をしてくれていた女子生徒だ。

「今日はこの運動会に参加してくれたことに感謝するわ。この運動会は六波羅で作るゲームの参考ヒロインを選ぶことを目的としているの。だから、皆には頑張ってもらいたいわ」

 ここで一呼吸おいて黒田は競技者の顔を一人ずつ眺めた。

「手紙を送ったのは私だから、皆は知っているかも知らないけど、参加者同士はまだ面識がないようね。丁度いいわ、ここからは解説と実況をお任せする桜井奈々さんにバトンタッチするわ」

 黒田は隣に立っている女生徒に幕を手渡すと、自身は壇上の上から降りた。

 桜井は戸惑ったように、黒田へ視線を送るが、どうしようもないと思ったのか、深呼吸一つすると、参加者の前に堂々と立った。

「方南学園ストライド部の桜井奈々といいます。今日は実況と解説を担当します。では、五人の参加者の皆さんから自己紹介をお願いします。では向かって右の方から、意気込みも含めて」

 桜井が目を向けると、視線の先にある選手は一歩前に出る。

「リーズシャルテ・アスティマータだ。リーシャでいい。それよりもヒロインの座をとるのは私だからな!覚悟しておけよ!」

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 いきなり宣戦布告したリーシャに触発されて、他の面子の瞳は炎が灯る。

 その証拠に。

「私は久奈浜学院FC部の倉科明日香です。頑張ります!ヒロインは私がなるんです!」

 手を挙げた倉科が元気よく自己紹介をすると、左隣にいる女騎士が進み出た。

「私はダクネス、クルセイダ―を生業としているものだ!今日はパーティーの資金稼ぎに来た。ヒロインになれば少しは稼ぎも多くなるからな」

 腰に手を当てるダクネスはちらっと、他の参加者を一瞥した。

「私は川上舞よ! 来月の生活費のために何としても勝つんだから!」

 大きな胸を揺らして宣言する川神にはかなりの自信があるようだ。

「では、最後に……あれ?」

 促した奈々が首をかしげるのも無理はない。

 そこには、黄色のヘルメットをかぶった黒いライダースーツを着ている女性おり、しかも携帯をかけてにもって何やら文字を打っている。

 奈々が目を細めて、その字を読み上げた。

「セルティ・ストゥルルソン。運び屋をやっている、声が出せなくて申し訳……ないな」

 がっくりと首を垂れたセルティは、どうやら自分だけ堂々とできなくて落ち込んでいるようだった。

 その悲しみを隠すかのように、奈々が慌てて次の行動に移った。

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「そそ。それでは皆さん、さっそく第一の競技『玉入れ』を始めたいと思います。部員が既に準備をしているので、玉入れ籠の周りに集まってください」

 奈々が指示すると、全員が後ろを振り返った。

 玉入れ籠と、その周りには六色のボールが転がっている。

 奈々は全員にそれぞれの色を伝えると、首にかけた笛を唇に当てた。

 そして、ピー!

 合図と共に全員が自分の色の玉を拾っていく。

「ふふふ、まずは私が手本を見せてやるよ。そのヘルメットでは籠が見えないだろう?」

 リーシャは近くにいるセルティを見てニヤッとした。

 投げた球は籠を通り越して、明後日のほうへ飛んで行く。

 リーシャは、むー、っとうなっているが結果は変わらない。

「ご心配なく。ちゃんと見えている!」

 セルティも玉を拾うと、籠を目指して勢いよく振りかぶった。

「そんなおお振りで大丈夫なのか? それでは外れるぞ」

 ニヤニヤとしているリーシャがセルティを見つめていると。

 黄色いヘルメットが地面に落下する。

「んな! おおお、お前首、首がないぞ! 一体どういうこ……と……なん、だ」

 リーシャは一通り、セルティを凝視してあわあわと慌てた後、ばったりとその場で気絶した。

 そしてセルティの投げた球は見事に籠の中に入った。

「よし! どうだ見たか」

 とセルティがリーシャに目を向けたときには、彼女は完全に白目をむいていた。

 勝者セルティ。

 玉を数えるのは、黒田たちの役目であり、その間にも着々と次の競技の準備が進められている。

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「二回目は大玉ころがしです! まずは真っすぐ進んで、コーンのところで折り返してください」

「すまない、これはスピード重視となるわけだな?」

 そう聞いてきたのはダクネスだ。なぜか顔を紅潮させて息遣いも少し荒い。

 奈々はその態度に、若干引きながらも無言でうなずいた。

「で、では当たると痛いのだな!」

 さらに奈々のほうへ詰め寄ってきたダクネスに、奈々は恐怖を感じ始めたのか足ががくがくと震えだしている。

「それはそうですよ。痛いですよ」

「むっはーー! 了解した、全力で参加させていただく!」

 やけに元気なダクネスは後ろで怖がっている奈々のことなど気にも留めないで、スタートラインに着いた。

「よーいスタート!」

 ダクネスが離れたことで、気を取りなおした奈々が笛を吹く。

「えりゃああ!」

 勢いよくダクネスが大玉を転がり始める。

「よかった、普通じゃない」

 奈々は実況席からダクネスの様子を見ていたが、順調にコースを進んでいるしかもすごい勢いだ。

 そんなことを知らないダクネスは、さらに速度を上げると、ちらっと後ろを見た。

「ふふふ」

 そして笑みを浮かべると、いきなり足をもつれさせたかのようにして、隣のレーンに倒れこむ。

「え、え? ちょっと危ない!」

 叫んだのは川神だった。彼女は一気にダクネスを追い抜こうと、渾身の一撃を大玉に入れたと

ころだったのだ。

 加速した大玉はそのままダクネスに直撃する。

「んはあああああ~~」

 ダクネスは顔を笑みを浮かばせると、さらに隣のレーンに移動して再度直撃した。

 結局、大玉転がしは、ダクネス以外の全員にポイントが入ったのだった。

 太陽の光が直撃し、それでも食欲をそそるのは、人間としてしょうがないことだろう。

 つまり、前にぶら下がっているパンは選手たちにとっては何としてもくわえたい

 その一心でスタートの笛が鳴る。

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 三回目の種目はパン食い競争だ。

 脱兎のごとく走り出した選手たちは、紐にぶら下がっているパンをとるために勢いよく飛び上がる。

「やっふぁー!」

 初めにゲットしたのは川神だった。

 その次には、試合前はにはしたないと言っていたリーシャが続く。

 隣のレーンの倉科は苦戦しているらしくあと一歩及ばない。

 セルティに関しては、口がないのでパンの前でがっくりと膝をついていた。

 ダクネスは、取れるものをわざと取らずにその場で飛び跳ねている。おそらく、焦らしていることで快感を得ているのだろう。

 そんな皆を後目に疾走している川神が勝利の確証を持ったその時。

 なんと応援席のほうから、口にくわえたパンが勢いよく吸い込まれたのだ。原因は一つしたの和泉が、その能力を使ったからだった。

「えええ、そんなあ……」

 と座り込む川神の横をリーシャが抜けていく。

「やったああああ!」

 ゴールテープを切ったリーシャが今日一番の笑みを見せたのだった。

 目の前に置かれている札をめくって、書かれているものを取ってくる競技、借り物競争。

 これは参加している人だけでなく、応援に来ている人たちも楽しめる競技だ。

 しかし。

「ごめんなさい。こちらのミスよ」

 黒田が声を潜めて、桜井にいう。

「どうしたんですか?」

「全部同じものを書いてしまったの」

 申し訳なさそうにして、黒田の目に映るのは固まったままの選手たちだった。

 地面に置かれている札をめくるところまでは良かったものの、借り物の内容に一同が戸惑いを隠せないでいる。

 しかしそんな中でセルティだけは走り出していた。

「えー、恋人いるなんて羨ましいです」

 きらきらとした視線を送っている倉科に、リーシャがあきれるように言う。

「そんなのくだらないぞ」

 手に持っている札には『恋人または彼氏』と書かれていた。

 結果はセルティの一人勝ちだった。

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 最終競技は定番のリレーだ。

 だが、ルールは少し違う。各々の能力や応援席の人たちも協力することができる、所謂、総力戦なのである。

 緊張が最高潮に高まる中で、桜井の笛が鳴り響いた。

「お先に失礼します!」

 飛び出したのはフライングシューズを履いた倉科だ。

次いで轟音をとどろかせながら、黒バイクに乗ったセルティ―が追随していく。

「ハンデと知らないのか?」

 そういいつつも、ティアマトを装備したりーシャも加速した。

「私たちも負けてられないわよ! 応援席からファントム出して!」

 川神が手で合図をすると、それを受け取った一人がスケッチブックから巨大なファントムを数匹作り出した。

 前列にいる参加者に襲い掛かり、足止めさせている。

 そのすきに川神は走り出した。

「あれだったら、私にも耐えられるぞ!」

 なぜか興奮気味に駆け出したダクネスは、剣も持たずに混戦している中へと飛び込んでいった。

 それを見ていたダクネスの応援席では、帽子をかぶった魔法使いが何やらつぶやいている。

 次の瞬間。

 ファントムに足止めを食らっていた競技者全員の足元に魔法陣が出現し、逃げる隙を与える間もなく爆発した。

 あたり一帯に爆風が吹き荒れ、スタジアムの壁が吹き飛ぶ。

 参加者、見物人、その他スタッフが大怪我をしたことは考えるまでもなかった。

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後日。

 黒田はだれがヒロインの参考として相応しいのか結果を封筒に入れて競技者へ送付した。

「んで、誰に決めたんだ?」

 北条の問いに黒田はむすっとした顔で一言。

「全員没よ」