大友克洋が描いたマンガ「童夢」の見どころを徹底分析!

それを目にした者はみな衝撃という言葉を実感した!当時のマンガ界を根底から揺るがしたと言われる伝説の名作「童夢」あなたは『ズン』を知っているか!?

童夢とは

出典:http://matome.naver.jp

タイトル 童夢(どうむ)
著者   大友克洋(おおともかつひろ)
巻数   全1巻
連載   1980年ー1981年
発行   双葉社

マンモス団地を舞台にしたSFマンガ。第4回日本SF大賞受賞。小説以外の同賞受賞はこの作品が初である。第15回星雲賞コミック部門受賞。

AKIRA』と並ぶ大友克洋の代表作であり、当時のマンガ界に衝撃を与えたエポックメーキング的作品。

あらすじ

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1980年代のとあるマンモス団地で連続変死事件が発生。警察の調査も甲斐なく手がかりひとつ掴めぬ中、担当の刑事部長も団地の屋上から謎の墜落死を遂げる。

一方、新しく団地に越して来た小学生悦子(エッちゃん)は、赤ん坊に悪さをしようとした人物に気づきそれを諫める。

なんていたずらっ子なのかしら

いたずらっ子とは、団地に住む独居老人のチョウさん

強力な超能力の持ち主である彼こそが連続変死事件の犯人であり、一連の事件は、子供返りをして善悪の判断のつかぬチョウさんの、無邪気ないたずらにすぎなかった。

エッちゃんに気づかれたことに脅威を感じたチョウさんは、団地の住人を操作して彼女の殺害を企む。

攻撃を僅差で交わすエッちゃんだが、友人の吉川君ヨッちゃんが銃撃されたことにより感情が爆発。チョウさんとの直接対決に突入する。

子供と老人の戦いは団地全体を巻き込み、更なる惨劇を生んでいく。

大友克洋とは

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誕生日 1954年4月14日
出身  宮城県
血液型 A型
職業  漫画家、映画監督

高校卒業後映画監督を目指すも、早くにひとりで独立できるからと幼少の頃より親しんでいたマンガを描き始める。

初期の作品は1970年代の時代背景が色濃く出た、日常風景を淡々とドライに描く作品が多い。

また緻密な線で描きながらも、余白を多用する、説明的な描写を省く、などリアルでありながら劇画調にならないクールな作風であった。

大友のリアリズムは当時のマンガ界では異例の画風であり、一般に『売れる』画風でもなかったが、「ニューウェーブ」作家のひとりとして知られた存在となる。

大友の影響は余りにも大きく模倣する作家が後を絶たず、日本のマンガを変えたと言われている。

そこから、日本マンガ史の改変期を表す言葉として

大友以前・大友以後

と言われるようになった。

人物像

リアルからの変化

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大友克洋氏の人物の特徴は、日本人がいかにも日本人らしいところです。眉と目が離れ目は小さく、鼻は低く、手足は短く寸胴。

要するに、身も蓋もない日本人

男性はカッコ良く女性は美しく子供は可愛らしく描くことを大前提とした当時のマンガ界の中、恐らく初めて、これでもかとリアルな日本人を描いていました。

大友氏から見た日本人だったのでしょう。嘘をつくことを良しとしないが、思い切った作画です。大友氏の自信が伺えます。

童夢」のヒロインであるエッちゃんもこれに従い、まあ、可愛くはありません。ストーリーの狂言回し役である刑事も、長髪細目でなんだかパッとしません。

しかし中盤以降、上記2名の顔が明らかに変わります。眉と目の間が狭まり目は大きく鼻筋も(少し)高くなっています。

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マンガ家の絵が上達に従い変化していくのはよく見られることですが、「童夢」のように中編作品の中で成長による変化をしたというのは考えにくいと思います。
ましてや大友氏は絵が上手いのです。描こうと思えば、最初からカッコ良くも可愛くも描けたでしょう。
恐らく、ストーリーが超能力者同士の直接対決を迎え、終盤へと動きが激しくなるため、表情を強く打ち出せるよう意図的に変化させたのではないでしょうか。

ここで一貫してリアルな造形をしていた作風が変わり、以降の「AKIRA」でのヒーロー・ヒロイン像へと、カッコ良い人物像へと系譜されることになるのです。

風景

人物との同一化

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童夢」の最大のみどころは、マンモス団地そのものです。

冒頭シーン、画面の中に人物の姿はなく団地のみ。そこにフキダシで

『どさッ』

まるで団地が言葉を発したような、印象的なシーンです。読み手側は、感情のあるはずのない団地に不気味さを覚えます。

大友氏の絵は、風景も人物も均一な線で描くのも特徴のひとつです。

太い細い弱い強いなどのペンタッチによらず、全てを均質にすることで建物と人間との差異がなくなり、団地の存在が大きく感じられます。

なおかつその性質上、建物も部屋もひとつひとつの個性が全くない物体を、これでもかと緻密に均一に描くことで圧倒的な威圧感が生み出されています。

これにより、読み手側は団地に無機質な個性を感じるよう誘導されていくのです。

自在なアングル

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ストーリーの展開に合わせ、団地は様々な角度から描き出せれます。文字通り、360度自由自在です。俯瞰から見た図など、圧巻過ぎて打つ手がありません。

日常見慣れた団地であるはずなのに

見たことないものを見ている

という気持ちにさせられます。

雑誌のインタビューで記者に『なぜ見たこともないものが描けるのですか』と訊かれた大友氏が

『描けないものはないでしょう』

と言ったという話には、絵描きの大多数が悔し涙にくれたが反論できないといった想いであったのではないかと。

ズン

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有名なシーン「ズン

制御の効かなくなったエッちゃんの能力により、チョウさんが壁に叩き付けられ、ズンという音と共に円形にめり込むシーンです。

2012年に開催された『大友克洋GENGA展』では会場にこのズンな壁が設置され、来場者がズンな状態で写真撮影できるという特典がありました。

このズンの衝撃は、集中線や流線など効果線を排し、ただ「ズン」とだけ音を入れたことにより起こった事象のみが際立ったことによります。

童夢」の中では一貫して効果線を極力使わず、建物の静止画の中にフキダシや音を入れることにより、起こったことをリアルに表現する技法が採られています。

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アップ

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大友氏はバストアップが少ないことでも有名だったのですが、「童夢」のラスト近くにこのアップです。

2人の能力者による団地破壊と死傷者の原因は、アルコール中毒者による暴走とガス爆発が要因との警察の公式発表が出され、エッちゃんもその後団地より転居。

安心しきってまどろむチョウさんの前に、突然エッちゃんが現れての見開き2ページに及ぶ

ドアップ

じいさんのドアップ。誰が見たいんだという感じですが、このマンガを読んだ人は、ここで見たかったドアップです。でも度肝を抜かれたドアップです。

これまでアップを描かなかったのは、このためだったの!?と思うほどです。おまけに細かいです。シミもしわも歯茎まで、老醜と言われるもの全て描いています。

よほど老人を描くのが好きでなければ、ここまで描かないと思います。

Twitterの反応

最後に

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日本マンガ史に燦然と輝く「童夢」。この作品で衝撃を受けた者は、その衝撃を忘れることが出来ません。

当時の既存作家と以後に続く作家へ大きな影響と、既成概念からの脱出という大きな希望を与えました。

今読むと当たり前の表現方法も、この作品から派生していったものが多くあります。

ゆえに今読むとその衝撃が理解できないという人もいますが、今読んでもなお、圧倒的な画力と徹底的に無駄と抽象性を排除した作風には感銘を受けます。

説明過多にせず、省略して最小限を描くに留める。大友氏が描いたのは、マンガの成長より先に、それまでのマンガに飽き足らなくなっていた

読者の成長から望まれた作品であったのではないでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=qR_cZqvRXXY
欧米翻訳vrなので左右逆の箇所がありますがそれでもデッサンと立ち位置の狂いがない大友画が恐ろしいです。