【寄生獣】岩明均の漫画の魅力を徹底解説!

マンガ家「岩明均」というと、近年に実写映画化された「寄生獣」が思い浮かびます。しかし、「寄生獣」は「岩明均」が今まで描いていたジャンルからは少し外れた作品です。

今回は「寄生獣」を含みながら、マンガ家「岩明均」の描くマンガの魅力についてご紹介します。

作品

「寄生獣」

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「岩明均」の名前を世間に広めた代表作です。本作品は1993年の第17回講談社漫画賞一般部門入賞。 更には1996年の第27回星雲賞コミック部門で入賞しています。

2015年に公開されたTVアニメと実写版映画も話題になりました。突然出現した人間の頭を切り取って寄生する知的生命体とそれに関わる人々の生きざまを描く本作品。

主人公は普通の高校生「泉新一」と彼の身体を乗っ取る事に失敗し、右手に寄生した「ミギー」。寄生獣達からは乗っ取りに失敗した者として命を狙われ、人間社会で生活する為にも人間を食べる寄生獣の存在を隠して生活しなくてはならない事を強いられます。

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「寄生獣」(本編では種族を表す名前は登場せず、分かりやすく本記事ではタイトルの「寄生獣」としました。)の描写は、子供が描いた絵の様に、稚拙で不定形なデザインとなっています。

その粘土の様に形を変えるデザインの生命体が人間の頭部とすり替わり、人間社会に溶け込んで生活し始めている…。そんな社会の中で「はみ出し者」となってしまった主人公「泉新一」と彼に寄生している「ミギー」の苦悩や体験を読者は追体験します。

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寄生獣は冷徹で非情であり、人間達を食糧としてしか認識しない彼らは、その稚拙でグニャグニャとした不定形なデザインと相まって悪夢の様に人々を惨殺して行きます。

そんな非日常の中で懸命に生きようとする主人公とミギー、そして彼らに関わる人達によってドラマは展開して行きます。人間に対する「天敵」を設定し、その捕食から逃れる事、そして寄生獣達に抵抗する事、そうした事柄から「生きる事の意味」を問う作品です。

「七夕の国」

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「寄生獣」の次に連載したSF的な作品。 遥かな過去に地球に到来した異星人の末裔が、「空間をえぐり取る」不思議な超能力を使って社会に対して騒動を巻き起こす話。

実は異星人の末裔であり、人間達からの追及と迫害を恐れて「丸神の里」にひっそりと住んでいた一族が、その事を本人達も忘れかけていた現代。 主人公である大学生の「南丸洋二」は、「対象物に小さな穴をあける」という超能力を持っている。

同じ大学の教授で失踪している「丸神正美」も同じ能力を持っていると知った南丸は、自分が持つ不可解な超能力のルーツを知る為に自分と「丸神正美」の祖先が住んでいた「丸神の里」へ向かう。

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SF色の強い本作品。ですが雰囲気的には、諸星大二郎の「闇の客人」に似た雰囲気を持ち、SF小説「星を継ぐ者」にも似た作品です。とは言っても超常的な存在はほぼ登場しません。

超能力を悪用し破壊と殺人を行う「丸神頼之」と、その彼の凶行を抑える為に主人公・南丸と仲間たちが「丸神の里」に隠された考古学遺物や事象から古代の記録を読み解くサイエンスフィクション的なストーリーと、超能力を悪用する「丸神頼之」との駆け引きによるサスペンスが合致した作品です。

連載当時は人気が得られなかったのか、物語終盤では駆け足で話が展開した印象があります。しかし、物語は殆どの伏線や回収されてスッキリとした結末へ到達しています。
「SF=サイエンスフィクション」というジャンルがぴったりの作品に仕上がっています。

「雪の峠・剣の舞」

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より初期に近い作品です。「雪の峠」と「剣の舞」という、独立した2編からなる時代劇作品です。 「雪の峠」のあらすじは、家康が着々と天下取りに邁進していた戦国時代。大名であった「佐竹家」は、関ヶ原の合戦で石田三成の西軍へ所属した為に外様大名として出羽国に追いやられてしまっていた。

心機一転し、新たなる城の築城を計画した当主の佐竹義宣は、高齢の重臣たちの意見を聞かずに若手の渋江内膳の意見を重視していた。それに反発した重臣達は渋江内膳の案に対抗して、別の築城案を提示する。

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「剣の舞」は、武田家と長野家とが争う中で家族を野武士に殺された農家の娘ハルナが主人公。彼女は復讐の為、天下一といわれた上泉伊勢守の道場へ弟子入りしようと押しかける。

しかし、渋々ながらも成り行きで、上泉伊勢守の弟子である疋田文五郎がハルナの稽古をつける様になる。そして再び武田家と長野家の武力衝突が避けられぬ事態に発展する中、ハルナは仇の野武士達を見つける。

どちらも戦国時代のエピソードを切りぬいた様な物語です。戦国時代でありながらアクションシーンはほぼ無く、物語で読ませる作品に仕上がっています。特に「雪の峠」は、時代考証もしっかり施されており、大きな「どんでん返し」などが仕込まれた「読み物」として素晴らしい作品です。「剣の舞」は、「あずみ」に似ていますかねぇ…。

しかし、こちらもアクションシーンは控えめに現実的なストーリーが展開していきます。あくまでもリアルを追求し、その中からエピソードを拾い上げる…そうしたマンガ家「岩明均」の物語の紡ぎ方について原点が垣間見える作品です。

「ヘウレーカ」

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おそらく後述する「ヒストリエ」のプロトタイプ的な作品。古代ローマ時代で流浪の旅をしているスパルタ人のダミッポスが主人公。シチリア島の都市国家シラクサへ辿り着いたダミッポスは、ローマ対カルタゴの第二次ポエニ戦争に巻き込まれる。

そして学者アルキメデスと出会い、彼の庇護を受けながらも争いの中で様々な事柄を目撃する。 何でしょう?時代物であり、リアルにその時代の出来事を踏襲しながらも現代的(?)な兵器が多く出現します。

そうした兵器によるダイナミックな古代戦争物語であり、同時にリアルなギリシャ・ローマ時代を活写したマンガでもあります。ここの物語のエッセンスや描き方が最新作「ヒストリエ」に確かに受け継がれています。

「ヒストリエ」

出典:https://www.rankingshare.jp

マンガ家「岩明均」の最新作であり、古代ギリシャを舞台にした一大叙事詩です。アレキサンダー大王に仕えた書記官「エウメネス」の人生を描く物語。ギリシャにある都市国家カルディアで名家の息子として育てられた「エウメネス」。

実は自分の出自はスパルタ人であり、幼児の頃に家族を殺されその事を隠して育てられていた事を知る。最大の理解者であった養父を殺され、奴隷へと格下げさせられたエウメネスであったが、様々な困難を乗り越えて行く。

2003年から連載開始され、一時休載をしていましたが現在も連載中の本作品。詳細にまで確立された歴史観、実際に見てきたかの様な描写は読者を古代ギリシャへ誘います。

出典:http://55096962.at.webry.info

筆者も過去に博物館のギリシャ文明展の様な展示会へ見学に行ったことがありますが、あの時代は「電気」が「人力」になっていただけで、富豪層はかなり現代社会に近い生活が出来ていた事がうかがえます。

そうした考古学的な時代考証を盛り込みながら、才能溢れる主人公「エウメネス」が飄々と古代世界で立ち振る舞う姿を見られます。現在は端役でしかない「アレキサンダー」との出会い、さらにその先の展開が大変楽しみな作品です。

本作品は評価も高く、2010年に第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞し、更には2012年に第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。

出典:http://pbs.twimg.com

出典:http://pbs.twimg.com

と言う訳で「動画」

https://youtu.be/5hHXtiIm6ug実写版はかなりTVなどで繰り返し予告が流れていたりしていたので、深夜アニメ版「寄生獣」

まとめ

1985年に「ちばてつや賞」に入選してから、現在(2016年)まで31年間もマンガを描き続けている、マンガ家「岩明均」。その作品は時代考証やその時の世界情勢など細やかな部分にまで配慮し、そこに生きる人々の生き様や生活を描き切るそのテクニック

その独特の描写手法はマンガ家「岩明均」だけであり、ぜひ一読される事をおすすめします。