奥深いダンジョン探究、そしてリアルな架空のグルメ、「ダンジョン飯」

「ダンジョン飯」は、イメージとしては不意に世の中に現れ、一気に人気マンガとなった印象があります。ちゃんとした「剣と魔法のファンタジー世界」にあるセオリーを踏まえた環境設定と、食べたいと思わせる「架空の料理」が魅力的な作品です。そんな読者を虜にする「ダンジョン飯」に隠された二つの魅力について解説してゆきます。

あらすじ

出典:http://korekarasusumu.sakura.ne.jp

地下深くに埋もれた「王国」を発見され、その地下深くに埋もれた王城は魔物達が跋扈するダンジョンと化し、その深層に隠された宝を求めて冒険者達が挑む世界。

そんな中、中堅の剣士であるライオス一行は、レッドドラゴンに挑むが壊滅し、妹のファリンはレッドドラゴンに食べられてしまう。妹が最後に施した脱出魔法で難を逃れたライオス達は、ダンジョンから脱出したものの所持金やアイテムの多くを失ってしまう。

レッドドラゴンが食べた物を完全に消化するのは、ある程度の時間がかかると知ったライオスは、妹を助けに迷宮へ向かう。しかし、その探索へ同行する事にしたのは、魔法使いでエルフのマルシルと鍵師でのハーフフットのチルチャックだけであった。

更には、食料品や無一文でダンジョンの深層へ向かうのは無謀な行動であり、途中で遭難するのは必至。そこでライオスはダンジョンに棲む魔物たちを食糧とする事を2人へ提案する。

魔物の調理に四苦八苦していると、ドワーフのセンシと出会い、正しい調理法を教えてもらう。そして新たに仲間に加わった彼と4人で妹の救出行を開始した。

登場人物

ライオス

出典:http://www.yukkun20.com

種族は人間、性別は男性。年齢はおそらく一番若いと思われる。金属鎧を身に着けた、ダンジョンでの経験豊富な剣士。性格はリーダー格らしく冷静沈着で温厚。

戦いの場での監督だけでなく、つい敵対しやすい他種族同士であるマルシルやセンシ達の緩衝役として必要な人物。しかし、「魔物おたく」で生態や食材としての有用性に関しては饒舌になる。魔物を食料としてダンジョンを進むという案も彼の発案。

マルシル

出典:http://ohtanouen.blog96.fc2.com

種族はエルフ、性別は女性。長命で不老の種族なので実年齢は不明。魔法使いで攻撃から防御、更には回復・復活系もこなす。性格は普通の女の子、他のメンバーに比べたら常識的であるが、女性らしく感情的な一面もある。

ただし、やはりダンジョンの踏破を生業としているからか、環境適応能力は高い。当初は魔物を食料にするという案を拒否していたが、物語が進むごとに慣れてきている。

チルチャック

出典:http://livelognet.com

種族はハーフフット、性別は男性。作品ではハーフフットと呼ばれているが、小人族の一種であり指輪物語に登場する「ホビット」と同種族と思われる。見た目は子供であるが、それは種族的特徴らしく、実年齢は29歳。

罠の解除や隠し扉などのギミック解析や宝箱の開錠を担当している。性格は職人気質で自分の仕事に対して、その領域に他人に立ち入られるのを嫌う。その為、ダンジョンのギミックや自分の道具を調理器具に流用するセンシと度々衝突する事がある。

センシ

出典:http://www.yukkun20.com

種族はドワーフ、性別は男性。小柄であるが屈強な体格とヒゲを蓄えている。ファンタジー世界でドワーフ族は地中に住み、優秀な鍛冶師であり、斧を扱う強力な戦士。
本作品でもセンシはダンジョンに住み、オークなどの敵対種族とも親交がある。当然、魔物を料理する技術は一級であり、彼の登場が無くてはライオス達が妹救出に向かう事は出来なかった。

性格はマイペースで魔法を嫌う、その為に魔術師であるマルシルやチルチャックと意見が衝突する事もある。

ファリン

出典:http://ameblo.jp

ライオスの妹でレッドドラゴンに捕食されてしまった。しかし、ドラゴンを倒して復活魔法をかければ生き返る事も可能らしい。彼女によってライナス達は全滅を免れたが、彼女を助けにダンジョンへ再び向かう事になった。

作者・九井諒子

出典:https://www.enterbrain.co.jp

元々は同人活動で作品を発表していたようです。2011年から商業誌でデビューすると、2013年には短編集「ひきだしにテラリウム」で第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。それまで短編マンガを発表していましたが、2014年に「ダンジョン飯」を連載開始。

すると翌年、2015年度コミックナタリー大賞・第1位を獲得すると、2016年には「このマンガがすごい!・オトコ編1位」、「THEBESTMANGA2016このマンガを読め!・第1位」、「全国書店員が選んだマンガランキング2016・第1位」と数多くの賞を受賞しました。

作品評論

出典:http://buzz-manga.blog.jp

まずその世界設定に関して、一読するとテレビゲーム的ではあります。人間以外の種族とチーム(パーティー)を組み、ダンジョンを攻略する。テレビゲームによくあるシチュエーションですが、実はこの設定はちゃんとしたファンタジーの定石に沿った設定なのです。

ファンタジー世界には「指輪物語」を基本とした共通の世界設定があり、数多くの物語はその設定を踏襲しています。これは多くの過去作品から抽出されたルールと言えるものであり、伝統と歴史がある世界設定ルールなのです。

海外のテレビゲームでも、「ウィザードリー」や「ソーサリアン」などこの世界設定の約束に沿って作られている作品は多々あります。しかし、日本のファンタジー作品の多くは、この「約束」を理解せずに作られた作品が多く、それが悪いとは言いませんが、ファンタジー作品としては独自性が強くなった作品が主流でした。

出典:http://korekarasusumu.sakura.ne.jp

本作品はそうしたファンタジーでの「約束事」をちゃんと理解し、マンガの基本設定とする事で荒唐無稽なダンジョンと言う世界をリアルに表現しています。もうひとつの魅力は主題の魔物を調理した料理でしょう。

調理手順を細かく説明し、魔物自体の事細かな設定とそれを説明する事で架空の料理があたかも存在するかの様な描写は、読者に料理への興味を沸かせます。そしてその料理を食べたキャラクター達の行き過ぎない控えめな反応が、更なるリアリティを与えます。

「指輪物語」から連なる先人達によって作られた重厚な世界背景と、作者独自の細やかな料理や魔物達の設定が、ライオス達と共に読者をダンジョンの奥深くへと誘います。

まとめ

出典:http://ebook-j.info

「ダンジョン飯」は現在2巻まで刊行されています。やはり単行本で一気に読むのが面白いです。巷にあふれている料理マンガと一緒に考えるのは止めた方が良いでしょう。

どの料理も架空の魔物を材料としているので、美味いマズイは我々、読者には理解出来ません。定石に沿った世界に、作者本人の詳細な設定を織り込んだオーソドックスでありながら今までにないファンタジーです。

海外ファンタジー小説や映画を良く見ている人ならば、より深く作品の魅力を理解する事が出来ると思います。